【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇希生さんちへ

「弟みたいな」*side野矢蒼 6 終

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 希生さんが反対することはないだろうな。
 父さんも、最近優月が、前より幸せそうに見えるよねって言ってたし。絶対賛成なんだろうし。

 なんなら少しはフォローを入れる気できたけど、全く必要なかったな。

 でも、来て良かった。

 優月への希生さんの態度とか。
 玲央と優月の雰囲気とか、見れて、安心したというか。

 もともとそこまで心配してないから、安心っつーのもなんか違うけど。


 優月が恋か。
 ……恋人ができる気配がまったく無かったからなぁ。

 可愛い可愛い、小柄な彼女とか、似合いそうだと思ってたけど。
 意外とあんな感じの、彼氏も。

 優月には合ってしまう気がするのは。
 ……優月なら、なんでも、普通に受け止めそうな気がするから、かな。


 高校生のオレが、最初はものすごく面倒くさいと思ってた、お絵描き教室に来るガキんちょ達。
 ……優月に構いだしてから、他の子たちにも構うようになったような。

 変な影響、あの頃から受けてンな。
 
 そんな事を考えながら風呂から上がって、さっきの部屋に戻ると。
 何やら優月が一生懸命、玲央に向かって話してる。

「あっ蒼くん、おかえり」
「ああ」

 座ってた優月が立ち上がって、水を飲みに行くオレの元に近づいてくる。
 で、その後ろに、玲央もついてきた。

「蒼くん、玲央がひどいんだよ、聞いてー」

 そんな優月に、後ろから来る玲央が、楽しそうに「冗談だって」と笑ってる。

「ん?」
「蒼くんがビリヤード、すごくうまかったって言うから、オレが蒼くんに勝つにはどれくらい練習したらできるかなあって、聞いたら、玲央ってば、毎日練習して、十年くらいかなー? それでも勝てないかなー? とか言うんだよー」
「へえ?」

 水を飲みながら、むー、としてる優月に苦笑してしまう。

「確かにね、オレも、どんだけしても勝てなそうとは思いながら聞いたんだけどさ。玲央の十年間毎日、とか、なんかリアルでさー」

 むむむ、と膨らんでいる優月。

「蒼さん、経験値すごそうだったから」
 くっくっと笑いながら、ふくらんでる優月を愛おしそうに見つめてる玲央。

 可愛いなあ、とか。
 思ってるんだろうな。

 ふ、と笑ってしまう。


「じゃあ、優月」
「ん?」

 優月の肩に手を乗せて、くい、と引く。

「毎日、教えてやろうか? 優しく」
「む」

 優月は、蒼くんまでからかって―!とまたぷんぷんしているけれど。
 玲央の方は、オレのちょっとした悪戯心からの嫌がらせが通じたみたいで。

 肩に乗せた手に、多分相当ムッとしている。と思われる。

 優月はまったく気づかず、オレを見上げてくる。


「もう。いいんだけどさ。ビリヤードで勝てなくても」
「いいのかよ?」
「ていうか、蒼くんには勝てる気しないよ。もう。ずーっと小さい頃から」

 むー、としてる優月に、ちびっこの頃の優月が重なって見える。
 ……変わんねえなー、表情も、中身も。

 ぽんぽんと、その肩を叩いて、手を離した。
 

 オレがお前に勝ててない気がするのは、言わないから。
 優月はそう思ってんだろうけど。

 多分、説明しても分かんない部分だから、もうそれはそれで、いいかな。

 そんな風に思ってると、玲央が優月の腕を軽く引いた。
 
「優月、何か飲むか?」
「ん? あ、うん」
「紅茶入れよっか」
「うん。一緒に用意するー。希生さんと先生も飲むか聞いてくるー」

 すたたた。という効果音が似合う気がする走り方で、希生さんたちの方に優月が走っていき、玲央とオレが取り残される。


「……やっぱ、妬く?」
「――――」

 ちら、とオレを見て、玲央は、「いいえ」と苦笑いしながら優月に視線を移す。強がってる風の玲央に、ふ、と笑ってしまうと、む、とオレを見て。
 少し時間を置いてから。


「もうオレ、絶対何か勝てるもの探します」
「――――」


 ……まあ。
 オレは、歌なんか作れないし、コンサートなんか出来ねーし。
 すでにそういうとこでは、別次元で、いいとこに居ると、思うんだけど。

 
「期待してる」

 そう言うと。
 玲央は、またオレに視線を向けて。

 ふ、と楽しそうに笑って、はい、と頷いた。
 そこに、まっすぐ玲央に向かってくる優月。

「二人とも飲むって。いれよ?」
「ん」

 そのまま玲央の腕の中に、すっぽりおさまりそうな雰囲気で、近くにいる優月を見て、玲央が、さっきとは違う雰囲気で微笑む。


「オレ、ミルクティーがいい。砂糖なしで」

 そう言うと、二人が一緒に頷いてる。
 離れて、ソファの方に向かいながら。



 ――――弟みたいな存在が。 二人に増えたって感じ。



 そう思って。 
 勝手に顔が綻んだ。






(蒼くんside 終)


◇ ◇ ◇ ◇
(2024/4/26)


蒼くんside
楽しんで頂けてたらいいな。
とりあえず私は楽しかったです。またいつか♡


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