824 / 864
◇ライブ準備
「アイドル?」*優月
しおりを挟む◇ ◇ ◇ ◇
皆で教習所の話であれこれ盛り上がった後は、明日も学校だしってことで、早めに解散した。
皆と別れて、駐車場にむかって歩き始める。
「楽しかったね」
言いながら、玲央を見上げる。
「じいちゃんちから出て、ホテル行って、ライブ行って、皆と店行って……ほんと、なんかじいちゃんちが遠く感じるよな」
「うん。遠いー。……けど、希生さんのおうちも、すごく楽しかったし……」
「ん」
「ボールも貰っちゃったし、玲央とずーっと一緒だったし。なんか今日は、幸せなことありすぎて大変だった」
そう言うと、玲央はちょっと黙って、んー、と考えてる。
途中でじっと見つめられて。何か言いたげな。
「――幸せって、優月がよく言うのさ」
「うん?」
「やっぱり好きだと思う。オレ、そんな風に言ったこと無かったから、なんかやたら照れるって思ってたけど……」
「ん」
そういえば、なんか、そういうの言うのって恥ずかしいとか、玲央言ってたなあ。……玲央が言うことの色々なことの方が、いっぱい恥ずかしいことある気がしてたけど。ふふ、と笑いながら玲央を見上げていると。
「……だからオレも、今度思ったら、言うから」
まっすぐ、見つめられて、そんな風に言われると。
なんかオレも今既に、ちょっと照れるけど。
「――今は? 言わないの?」
そう聞いたら。
「今、言うのは、優月の言ったのに乗っかった感じがするから……今度、オレが思った時、自分から言う」
「宣言、してるの?」
クスクス笑ってしまうと。玲央は「してる」と、ニヤッと笑う。
「……じゃあ、楽しみにしてるね」
「――ん」
クスクス笑う玲央が、通りかかったコンビニを見つけて、「コーヒー買いたい。行こ」とオレの手を引いた。
「優月はカフェオレでいい?」
「うん」
自動ドアから入ると、コーヒーのカップを取ろうとした玲央が、「――あ、トイレ行ってくる。待ってて」とオレを振り返った。頷いて手を振って、なんとなく雑誌のところに止まった時。
後から入ってきた、小学生の男の子がオレのところで止まった。一年生とか、そんな感じ。まだ、ちっちゃい。
「……?」
「お兄ちゃんて……」
「うん??」
なんだか一生懸命な顔をしているので、にっこりして言葉を待っていると。
「お兄ちゃんて、アイドル??」
「――……ん???」
アイドル……とは??
……アイドル…… あ、分かった。
「あ、この髪、かな?」
その子の前に、しゃがんで、髪に触れて聞いてみる。
「うん。これも」
チョーカーとか、アクセサリーとか、色々見ながら訴えてくる。
うーん。勇紀や玲央のチョイスで着飾ると、オレでもアイドルに見えるのか。アイドル……。なんかちょっとおもしろくて、ぷふ、と笑ってしまいそうになった時。
「あっ、すみません、何してるの?」
多分、男の子のお母さんがやってきて、その肩を抱いた。
と、そこに、後ろから、「優月?」と玲央がやってきた。
「やっぱりアイドルだー」
男の子がめちゃくちゃ喜んでいる。
多分お母さんも、突然現れた玲央に、見惚れちゃってるというか。
四人、変な空気が流れたけど。
多分、この変な空気の意味を、全部、分かってるのはオレだけ、と思うと。
ふふ、と笑ってしまった。
(2024/11/19)
1,154
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた
木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。
自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。
しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。
ユエ×フォラン
(ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)
いい加減観念して結婚してください
彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話
元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。
2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。
作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。
僕たちの世界は、こんなにも眩しかったんだね
舞々
BL
「お前以外にも番がいるんだ」
Ωである花村蒼汰(はなむらそうた)は、よりにもよって二十歳の誕生日に恋人からそう告げられる。一人になることに強い不安を感じたものの、「αのたった一人の番」になりたいと願う蒼汰は、恋人との別れを決意した。
恋人を失った悲しみから、蒼汰はカーテンを閉め切り、自分の殻へと引き籠ってしまう。そんな彼の前に、ある日突然イケメンのαが押しかけてきた。彼の名前は神木怜音(かみきれお)。
蒼汰と怜音は幼い頃に「お互いが二十歳の誕生日を迎えたら番になろう」と約束をしていたのだった。
そんな怜音に溺愛され、少しずつ失恋から立ち直っていく蒼汰。いつからか、優しくて頼りになる怜音に惹かれていくが、引きこもり生活からはなかなか抜け出せないでいて…。
田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる