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第1章
「普通」
しおりを挟むなんか今のってオレ……。
お前がオレをどうでもいいって言ったから、拗ねて、店飛び出して泣いてた、みたいな話になっちゃうじゃんか。
……っていうか、実際、それに近いものはあるけど。
でも、それだけじゃなくて、なんか他にも、色々思う事はあって。
そんなバカみたいな、簡単な話じゃないのに。
啓介が背後でどんな顔してるんだか、何を思ってるんだか分からないけど。
恥ずかしすぎて、向けない。
もう、ほんと、何言ってんだ、オレ。
いつも、勢いで良いとか言っちゃって、仕方なく付き合ってるみたいな態度してるくせに。
こんな事だけ言ったって、啓介には、何も伝わんないし。
ほんとはもっと、ちゃんと、色々話さなきゃいけない気がするのに。
「――――……雅己……?」
腕を掴まれて、ぐい、と引かれて、啓介の方を向かされる。
力、強いんだよもう……。
「今、何思うてんの?」
「――――……っ……」
整った顔が、なんだかものすごく、真剣。
なに答えれば、いいか、よく、分かんねえのに。
目が逸らせない。
「雅己……?」
「――――……っ……お前、オレの事好きとか言うけど……やっぱりお前も、女が普通って思ってるんだと思ったし……」
「……それは、雅己にとって、て意味で言うたけど」
その答えに、少し、言葉に詰まる。
オレにとっては、女が、普通って。
「……じゃあ、お前にとっては……?」
見上げたまま、聞くと。
少し黙った啓介は、ふう、と息をついた。
「――――……オレ、こんなにお前の事好きて言うてるし、合鍵渡して、いつ越してきてもええて言うてるし、毎日でも抱いてたいけどお前が嫌やて言うから我慢もしてるし。 女に誘われても見向きもしてへんの知っとるやろ。何してたって、お前が一番で、ずっとそばに居んのに」
「――――……」
「オレにとっての普通――――…… 普通っちゅうか…… 絶対は、雅己やし」
「……っ……」
言われてる内に、恥ずかしくなってきて、顔に熱が集まってくる。
並べて言われると、確かに、何でこんなに、というほど、側で、大事にされてる気は、する。
だけど――――……。
あ、分かった。
こいつの事、好き、だと、思っても。
こいつに抱かれたいって、思っても。
……素直になれない、理由。
さっきの言葉で、やっぱり離れるんだと、簡単に思った、理由も。
なんか、今、分かった。
「オレ、何でお前が、オレの事、そんな好きなのか、全然分かんない」
「――――……は?」
「だって、啓介、オレの事気になってたけど、最初認めなかったって言ってたじゃん。……て事は、お前だって、ほんとは、女の子が普通だって、思ってたんじゃん」
「――――……」
「……どうして、オレの事、好きなんて、認めたんだよ」
「――――……」
「何で、好きなんて言ったんだよ。高校の時から気になってたとか言っても、オレに言ったの大学入ってからだしさ。長い事、認めたくなかった、て事じゃん。――――……そんな、嫌だったのに、なんで、認めたの」
言ってる内に、どんどん、そう思ってくる。
……そうだ。
……納得できないのも、オレが 完全にお前受け入れたくないのも。
……お前は、もともとは、女の子が好きなのに。
なんで、こんな風に、オレに来たのか、分かんないから。
高校時代も、大学入ってしばらくの間も。
――――……お前は、オレの隣でずっと、女の子達と居た訳じゃん。
啓介は、じっとオレを見つめて。
それから、はー、とため息をついた。
「お前、ほんまにオレの事、信じてないんやなー……どっから話せばええんやろ……」
深いため息とともにそう言って、啓介は、オレの隣に腰かけた。
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