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第2章
「いつもの朝」
しおりを挟む「雅己、起きぃ……?」
深い眠りから、ゆっくりと現実の世界に戻ってくる、気怠い感覚。
「起きれるか?」
優しい声が、耳元で響く。
ゆっくりと瞳を開けると、そこには思った通りの、啓介の笑顔。
「はよ、雅己」
「……うん……」
――――……だるい。
ぼんやりとしていたオレは、そうっと頬に触れられたその手の暖かさに、もう一度目を閉じた。
「……起きれへんの?」
啓介はクスクス笑って、オレの頬に口付ける。
「……だるぃ……」
昨日、啓介がなかなか離してくれなかったからだ。
……昨日っていうか、いつもだけど。ちょっとテストで久しぶりだったからか、余計だったような気がする……。
オレが動かないと、また啓介が笑う気配。
「もうすぐ9時んなるし、起きろや? シャワー浴びるやろ?」
「……ん」
「その間に朝作っとくから。コーヒーは淹れたし」
開いたドアから香ってくるコーヒーの香り。
それに、だんだんと意識が覚醒する。
「――――……いー匂い……」
思ったままの事を、目を伏せたまま、ぼんやりと呟くと。
啓介がまたクスッと笑う。
「……ん……?」
啓介はオレの腕を掴んで引き寄せる。
すっぽり抱きしめられてしまった。
「――――……」
ちゅ、と頬にキスされて、「おはよ、雅己」と囁かれる。ん、と答えると、頬にもう一度キスしてくる。
「目、開かんの?」
今度は瞼に、軽いキス。
誘われるように、ゆっくりゆっくり瞳を開いた。
「シャワー浴びてきな? 朝飯作っとく」
「……うん」
啓介がクシャクシャッと髪を撫でて、部屋を出ていった。
……啓介の優しいのって……ほんと、恥ずかしくなるなあ……。
朝イチから、くすぐったい気分に襲われる。
撫でられて乱れた前髪を一度掻き上げると、思わず苦笑いを浮かべた。
◇ ◇ ◇ ◇
ざっとシャワーを浴びて、やっとちゃんと目が覚めた。
キッチンで水を飲みながら、啓介の手元のフライパンを覗き込んだら、スクランブルエッグが出来上がる所だった。
「うまそ……」
「もーすぐ焼けるから。パンにバターぬっといて?」
「うん」
トースターからパンを取り出して運び、椅子に腰掛けて、バターを塗る。
のんびりとした動作でバターを塗っていたオレの隣に、啓介が腰掛けた。
ベーコンとスクランブルエッグののった皿を置きながら、オレの手元を見て、クスッと笑う。
「まだやってたん? やったろか?」
クスクス笑って言う啓介にムッとして、オレは一言。
「いい」
なんか、確かに大部分の料理は啓介がやってくれてたりするけど。
バター位、塗れるし。
変にムキになって黙々と続けていると、啓介はまたクスクス笑った。
「……なに?」
「別に?」
啓介の返答の仕方にムッとして、また黙る。
口元を緩ませたままオレの手元を見つめている啓介が気になって、もう一度今度は声を低くした。
「……何で見てんの? もう終わるし」
「んー……」
はっきり言わない啓介にちょっとムッとしながら、オレはバターナイフを置いた。手にちょっと付いたバターを舐めてしまおうと、指を口に近づけた瞬間。手首を掴まれて、え、と啓介を見上げる。
「何?」
「――――……」
啓介は何も答えずに、そのまま、オレの手を引き寄せた。
オレの指を――――……正確には、オレの指に付いたバターを。
舐めた。
「……ッ」
突然の啓介の行為に、呆然とするあまり、声も出ない。
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