【やさしいケダモノ】-大好きな親友の告白を断れなくてOKしたら、溺愛されてほんとの恋になっていくお話-

星井 悠里

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第2章

「早く帰りたい」

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「どんな流れで、要に言うことになったん?」

 啓介に聞かれて、なんだっけ、と考えてから、あ、と思い出した。

「合コンしようとかそういう話になって、オレがしばらくパスしようかなって言ったら、要が、そんなような気がしてたって言うから、どういう意味で言ってるんだろうって考えてたんだけど……」
「ん」
「要がね、啓介とオレが仲がいいと、旅行とか集まろうとかいつも率先してくれて皆も仲良しでいられるから……ずっとふたり、仲良しで居てよ、とか言ってくれて」
「へえ……」
「そういうの聞いてたら。なんか、ほんと突然さ……言っても良いのかなあというか、言っておこうかな、て思って……要に、オレ達って親友だよな、て聞いて……」

 そう言うと啓介が、ふ、と瞳を細めた。

「要、なんて?」
「恥ず、とか言われたかも」

 はは、と笑って、「でもすぐ、そうだよって言ってくれたから」とすごくほっこりした気分で、その時の要を思い出す。


「だから……啓介が好きなんだ、て伝えた」

 少し声を小さくして、そう言うと、そか、と微笑んだ。
 なんかとっても嬉しそうに見えて。オレも嬉しい気持ちになりながら。

「そしたら……雅己がそうなら啓介もだよね、って要、なんかすごいニコニコしているから、オレ、頷いて……そしたら、分かってたような気がするからびっくりはしてないって言われて……良かったな、て言われた」
「――良かったな、て?」
「うん。一緒に暮らしたのもそれが理由? て聞かれたからそうって言ったら、その後、良かったなって」
「――――そか」

 ふ、と啓介が微笑んだ時、ラーメンが運ばれてきて、目の前に置かれた。箸を取って、啓介に渡して、自分も持った。

「いただきまーす」

 手を合わせて、食べ始める。

「うま」
 ふふ、と笑いながら、オレは啓介を見つめた。

「要なら……言っても変わらないって、思って言ったんだ」

 そう言うと、啓介は、ん、と頷いた。

「分かってたんだけど、でも実際、良かったなって言われたらさ……なんか、泣きそうになっちゃった」
「……まあ。分かる。雅己、要のこと大好きやもんな」

 そう言って、啓介は、目を細める。

「オレも、好きやから――嬉しいのは、分かる」 
「うん。だよね」

 ほっこりした気持ちで、ラーメンを食べる。

「なんか、啓介と二人でラーメン食べてると、帰ってきた感、あるね」
「そぉか?」

 クスクス笑う啓介は、「もっと皆と居たかったんやないん?」と聞いてくる。ラーメン、食べながら、ちょっと考えるけど。

「すっごい楽しかったけど……今は、早く帰りたい、かな」
「――それって」
「とりあえず、早く食べようよ」

 絶対恥ずかしいこと言われそうなので、そう言って、啓介から目を逸らす。

 ……それって。の後、啓介が何て言うつもりだったのかは分かんないけど。
 オレが早く帰りたいのは。
 啓介と二人になって。……啓介に触りたいなーって、思うから。


 なんかキス、とか。
 中途半端だし。なんか、とっても、啓介不足というか。
 ……まあ、近くにはいたんだけどさ。

 モグモグ食べ続けてると、啓介はなんだかちょっと笑ってる。


「良かったなって言われて、雅己は嬉しかったと思うけどな」
「うん? あ、要?」
「ああ。嬉しいのは、それもめっちゃ分かるけどな」
「ん」

 けど、なに? 
 食べ終わって、ごちそうさま、と手を合わせながら、啓介の言葉を待っていると。


「オレは、雅己が要に話したってことが、めっちゃ嬉しい」

 ふ、と目を細める啓介。
 めっちゃ嬉しいといった通り。
 ……ほんとに嬉しそうに笑うから。

 なんだか、きゅ、と胸が苦しくなるというか。そんなに嬉しそうに笑われちゃうと、なんか……ずるいというか。


「……そ、んな大したことじゃ……」

 照れ隠しにそう言うと、啓介は、「めっちゃ大したことやろ」とまっすぐに見つめながら言ってくる。


「…………っもー、後で言って、そういうの」

 抱き合ってたら、照れてるのも、見えないのに。
 顔、すっげー熱いし。

 

  
 
 



(2025/7/12)
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