私を 癒してくれたのは 泥棒模様の 柴犬ちゃんでした

星井 悠里

文字の大きさ
22 / 23

「癒し」

しおりを挟む

 夕食を軽く食べてから、今日はちょっと遅くなる、とお母さんに連絡。
 駿とホテルに来て、久しぶりに、腕の中。久しぶりすぎて。……幸せすぎた。


 ベッドの中で布団に包まれたまま、スマホを持って、うつ伏せの体勢になる。

「ね、ちょっと見て?」
「ん?」

 駿も私の隣にうつ伏せになってくれて、スマホを覗き込む。

 やっと見せられる。
 恵ちゃんちに通うようになってから撮りためた写真と動画。

「うわ、何これ。すげー可愛い……」
「そうなの。可愛いの……幼馴染の、恵ちゃん、分かる?」
「よく話に出てくる子だよな」
「うん。恵ちゃんちの柴犬に、赤ちゃんが三匹、生まれてね、それで……すごく可愛いから通ってたんだけど……特にこの子が……」

 遠慮しておっぱい飲めないとことか、お腹丸見えで寝ちゃうとことか、そういう話をたくさんしてると。可愛い、と駿が笑ってくれる。

「この子、背中のとこ。毛の白いとこが、ハートみたいだな」
「え??」
「ここ。写真だからそう見えるのかな? 実際は違う?」
「あ、ほんとだ。ハートに見えるかも……泥棒ちゃんばかり目が行っちゃって」
「泥棒って? ああ。口の周り?」

 はは、と駿が笑う。

「私ね、この子、飼いたいなと思って、今考えてるとこ、なんだけど」
「え? 花音、犬……」
「うん。怖かったんだけど……なんだか平気になってきてて。でも仕事とかもあるし、どうしようか悩んでたんだけど、お父さんとお母さんがね……」

 お父さんお母さんの話を、駿にすると、駿は、ふうん、とクスクス笑った。

「良いよな。花音のご両親って」
「……ありがと」

「んー……でも、ちゃんと飼い主は決めた方がいいよな。留守番できるようにしとけば、花音が家を出ても、待ってられると思うし」
「やっぱり、そうだよねぇ……そこらへんもやっぱり考えてから決めないと……でもとにかく、初めて会った時から、すっごく癒されてて」

「んー。いつ会ったの?」
「んと……二週間位かな?」
「……オレが癒せてない時かぁ……」
「え」

 意外なセリフに、駿を見つめると。

「オレは花音が癒しだから。犬も良いけど、オレでも、癒されて欲しいんだけど」

 そんな風に言われて、むぎゅ、と肩を抱き寄せられる。

「……駿、そんなこと、言ってくれるの、なんかすごく、うれしい」

 そう言うと、「超恥ずいけど……」と、駿は苦笑い。

「でも、言葉足りないとこ、改善しないとって思ったから」
「私もだね」

 見つめ合って頷く。駿が、私のスマホをもう一度覗き込んだ。


「……なあ、このわんこ、会わせて?」
「会いたい?」
「ん、会いたい。……オレ、犬、好きだし。でも花音が犬怖いの知ってたから、飼えないなーと思ってたんだけど」

 お母さんたちと同じようなことを言うなあ、と笑ってしまいそうになった次の瞬間。

 ……ん??
 今のって……?

「もしかしたら、その子、オレと家族になるかもしれないじゃん? 会いたいな」
「かぞく……?」

 ……え。家族て。
 瞬きを繰り返しながら、駿を見ていると。
 駿は苦笑しながら、私の頬を、ぷに、とつまんだ。

「もう少しだけ仕事が落ち着いたら。ちゃんと言うから。それまで詳しく聞かないで」


 恥ずかしそうに視線を逸らした駿。
 胸が。きゅ、と締め付けられる。……愛しくて。


「――――」

 裸の駿に、すり、と抱きつくと、駿が苦笑した。

「……ごめん、くっつかないで」
「え」

「帰れなくなるよ?」
「……明日お休みだから」

「――帰んなくていいか」
「……うん、いい」

 そう頷くと。二人、クスクス笑いながら。どちらからともなく、唇が触れた。



しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

ベテラン精霊王、虐げられ皇子の子育てに励みます

はんね
ファンタジー
 大陸で最も広大な領土と栄華を誇るアストラニア帝国。 その歴史は、初代皇帝ニコラスと精霊王バーティミアスが“疫病王ヴォラク”を討ち倒したことから始まった。ニコラスとバーティミアスは深い友情を結び、その魂を受け継ぐ皇子たちを永遠に見守り、守護する盟約を交わした。  バーティミアスは幾代もの皇帝を支え、帝国は長き繁栄を享受してきた。しかし、150年の眠りから目覚めた彼の前に現れた“次の皇帝候補”は、生まれたばかりの赤ん坊。しかもよりにもよって、十三番目の“虐げられ皇子”だった! 皮肉屋で老獪なベテラン精霊王と、世話焼きで過保護な月の精霊による、皇帝育成(?)奮闘記が、いま始まる——! 人物紹介 ◼︎バーティミアス 疫病王ヴォラクを倒し初代皇帝ニコラスと建国初期からアストラニア帝国に使える精霊。牡鹿の角をもつ。初代皇帝ニコラスの魂を受け継ぐ皇子を守護する契約をしている。 ◼︎ユミル 月の精霊。苦労人。バーティミアスとの勝負に負け、1000年間従属する契約を結びこき使われている。普段は使用人の姿に化けている。 ◼︎アルテミス アストラニア帝国の第13皇子。北方の辺境男爵家の娘と皇帝の息子。離宮に幽閉されている。 ◼︎ウィリアム・グレイ 第3皇子直属の白鷲騎士団で問題をおこし左遷されてきた騎士。堅物で真面目な性格。代々騎士を輩出するグレイ家の次男。 ◼︎アリス 平民出身の侍女。控えめで心優しいが、アルテミスのためなら大胆な行動に出る一面も持つ。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

処理中です...