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「癒し」
しおりを挟む夕食を軽く食べてから、今日はちょっと遅くなる、とお母さんに連絡。
駿とホテルに来て、久しぶりに、腕の中。久しぶりすぎて。……幸せすぎた。
ベッドの中で布団に包まれたまま、スマホを持って、うつ伏せの体勢になる。
「ね、ちょっと見て?」
「ん?」
駿も私の隣にうつ伏せになってくれて、スマホを覗き込む。
やっと見せられる。
恵ちゃんちに通うようになってから撮りためた写真と動画。
「うわ、何これ。すげー可愛い……」
「そうなの。可愛いの……幼馴染の、恵ちゃん、分かる?」
「よく話に出てくる子だよな」
「うん。恵ちゃんちの柴犬に、赤ちゃんが三匹、生まれてね、それで……すごく可愛いから通ってたんだけど……特にこの子が……」
遠慮しておっぱい飲めないとことか、お腹丸見えで寝ちゃうとことか、そういう話をたくさんしてると。可愛い、と駿が笑ってくれる。
「この子、背中のとこ。毛の白いとこが、ハートみたいだな」
「え??」
「ここ。写真だからそう見えるのかな? 実際は違う?」
「あ、ほんとだ。ハートに見えるかも……泥棒ちゃんばかり目が行っちゃって」
「泥棒って? ああ。口の周り?」
はは、と駿が笑う。
「私ね、この子、飼いたいなと思って、今考えてるとこ、なんだけど」
「え? 花音、犬……」
「うん。怖かったんだけど……なんだか平気になってきてて。でも仕事とかもあるし、どうしようか悩んでたんだけど、お父さんとお母さんがね……」
お父さんお母さんの話を、駿にすると、駿は、ふうん、とクスクス笑った。
「良いよな。花音のご両親って」
「……ありがと」
「んー……でも、ちゃんと飼い主は決めた方がいいよな。留守番できるようにしとけば、花音が家を出ても、待ってられると思うし」
「やっぱり、そうだよねぇ……そこらへんもやっぱり考えてから決めないと……でもとにかく、初めて会った時から、すっごく癒されてて」
「んー。いつ会ったの?」
「んと……二週間位かな?」
「……オレが癒せてない時かぁ……」
「え」
意外なセリフに、駿を見つめると。
「オレは花音が癒しだから。犬も良いけど、オレでも、癒されて欲しいんだけど」
そんな風に言われて、むぎゅ、と肩を抱き寄せられる。
「……駿、そんなこと、言ってくれるの、なんかすごく、うれしい」
そう言うと、「超恥ずいけど……」と、駿は苦笑い。
「でも、言葉足りないとこ、改善しないとって思ったから」
「私もだね」
見つめ合って頷く。駿が、私のスマホをもう一度覗き込んだ。
「……なあ、このわんこ、会わせて?」
「会いたい?」
「ん、会いたい。……オレ、犬、好きだし。でも花音が犬怖いの知ってたから、飼えないなーと思ってたんだけど」
お母さんたちと同じようなことを言うなあ、と笑ってしまいそうになった次の瞬間。
……ん??
今のって……?
「もしかしたら、その子、オレと家族になるかもしれないじゃん? 会いたいな」
「かぞく……?」
……え。家族て。
瞬きを繰り返しながら、駿を見ていると。
駿は苦笑しながら、私の頬を、ぷに、とつまんだ。
「もう少しだけ仕事が落ち着いたら。ちゃんと言うから。それまで詳しく聞かないで」
恥ずかしそうに視線を逸らした駿。
胸が。きゅ、と締め付けられる。……愛しくて。
「――――」
裸の駿に、すり、と抱きつくと、駿が苦笑した。
「……ごめん、くっつかないで」
「え」
「帰れなくなるよ?」
「……明日お休みだから」
「――帰んなくていいか」
「……うん、いい」
そう頷くと。二人、クスクス笑いながら。どちらからともなく、唇が触れた。
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