【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

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◆Stay with me◆「高校生編」

「鼓動」*彰

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「……彰って、いつも、あの人と居んの?」
「え?」

 和己が風呂に入りにいった瞬間。
 寝てたと思ってた仁に、急に言われた。

「起きてたの?」
「ちょっと前に起きた……」

 道場に行ってきて、シャワーを浴びてきた仁が、疲れた、と言ってベッドに転がって一時間。和己がオレにまとわりついてしゃべってる時も、ずっと静かだったから、寝てるんだと思っていた。

「……今なんて?」
「――――元、生徒会長。いつもあいつと居んの?」
「……居る事は多いけど……別にいつも二人で居る訳じゃないけど」
「……ふーん……」

 何の質問なんだ……。

 思いながらも、今の今まで勉強してた教科書に再び視線を落とすと。
 急に、後ろから回ってきた腕に、ぎゅ、と抱き締められてしまった。


「……彰」

 腕が、オレを全部包み込むみたいに、ぎゅ、と抱き締められて。
 はあ、と、息をついた。

 仁、でっかい、な……。
 いつのまにこんなに……でかくなったんだろ。
 なのに中身は、にいに大好きって、言ってた時のまんまって……。

「……仁を好きな女の子ってさ」
「――――?」

「いっぱい居るだろ」
「――――さあ。知らない」

「……お前いつも女子に囲まれてるじゃん」
「何それ。ヤキモチ?」
「違うし。事実だし」

「ヤキモチなら、もう女子とはしゃべんないけど」
「――――そうじゃなくて……」
「なくて、何?」

「……何でオレに、こーいうこと、すんの?」
「――――」

 ムッとした、仁が、視線をきつくする。

「……彰、手、貸して」
「? 手?」

 抱き締めてた腕を解くと、オレの手を持って。椅子をくる、と回転させて、真正面から向き合うと。

 手のひらを、仁の左胸に押し付けられた。

「……すっげえ、ドキドキしてんの、分かる?」
「――――っ」

 ―――― 鼓動、早い。認識した瞬間。
 なんでだか分からない。

 カッと頬が熱くなった。
 手を退こうとしたけど、そのまま抱き締められた。

「――――聞こえるだろ、音」
「――――っ」

 胸に頭を押し付けられて、動けない。

「勝手にこうなる。……女子と付き合っても、こうならない。なんで彰かとか聞かれてもわかんない」
「……仁、離して」

「……嫌だ」


 聞くんじゃなかった。
 ――――聞かなきゃよかった。

 もうほんと―――― 無理。


「……彰……」
「――――っ」

 キスされる。


「彰……好きだ」


 すりこまれるみたいに、囁かれて。
 ――――抱きしめられて。キスされて。


 もう、ほんとに、頭、おかしくなりそうで。
 

 瞬間。とんとん、と小走りで階段を上ってくる足音。

「っ……仁っ」

 どん、と、その胸を、押した。
 少し離れた瞬間、ドアが、開いた。


「あれ。仁兄、起きたの?」
「ああ――――夕飯、食ってくる」

 仁は、和己の横をすっと通り過ぎて、下に降りていった。


「……機嫌悪いなー……あき兄、もしかして、喧嘩した?」
「してないよ。大丈夫」

 和己の頭を撫でて、そう言いながら。
 動揺で、指が、震える。


 なんで、弟と、するキスで、こんな風に、なんなきゃいけないんだ。

 もう、無理。
 もう、ほんとに――――……無理。


 仁が、ほんとに、オレへの執着が切れないなら。
 ――――オレが、無理にでも、切るしかない、のか。


 でもそれだと―――― 兄弟としても、切れてしまう気がする。


 ……どうすべき、なんだろう。

 何で、こんな風に、なっちゃったんだろ。


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