【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「もう意識しない」




 遠くで何か音楽が流れてる。
 あれ――……電話……?

 気付いたら、ダイニングテーブルに伏せていて、目の前のスマホが、鳴っていた。
 とっさに通話ボタンを押して、耳にあてる。

「はい――――……もしもし……」

 声が、ちゃんと出てない。

『……彰? 寝てたか?』
「あ、寛人?」

 あれ――――……仁は……?
 シャワー浴びに行って……まだ出てきてない……?

 目を擦りつつ、見回したら、仁がソファに座って水を飲んでた。

「あ……寛人、ごめん――――……十分位したら、掛け直してもいい?」
『あぁ。オレもう家帰ったから。いつでもいいから』
「うん」

 そこで電話をいったん切った。

「仁、ごめん。オレ寝てたね。 いつ出てきた?」
「ついさっき。水飲んでから起こそうと思ってた」

「じゃあ少しか、寝てたの……」

 背筋を伸ばしながら立ち上がって、仁を振り返る。

「仁、ドライヤーあるとこ、教えるから、来て」
「ん」

 ……なんかすごくだるいなー……。

 仁が後からついてきたのを確認して、洗面台の引き出しに入ってるドライヤーを渡した。

「ここに入ってるから」
「ん。ありがと」

 狭い洗面所で。
 ドアのとこに立ってドライヤーを受け取った仁。
 間近で立つと、余計に身長差、体格差があることに気付く。

「なんか――――……仁、すっごいでかくなった?」
「うん。まあ。背も伸びたし、結構鍛えてたし」
「そっか」

 なんだか、あんまり近いと――――……。 
 少し、圧迫感を感じる。
 
 二年前の仁とは違うと分かってても。 
 なかなか、そんな簡単に、この感覚は、忘れ去れない、というのを、実感。

 少し焦ったのを隠したくて、「乾かしておいで」と言いながら、仁の横をすり抜けた。

 ――――…意識、しない。する意味は、ない。

 ついさっき、仁の話を聞くまでは、仁が、もしかしたらまだ僅かでもオレの事を引きずってるかもしれない、と思ってた。もし、気持ちを引きずってなくても、あんな状態で兄貴が逃げるように出ていったって事に、傷ついたままかもしれない、とも、思ってた。

 だから。
 色んな意味で、罪悪感を感じてたし。
 置いてきた事も、ずっと、つらかった。

 何も言わない、何も言葉が聞こえない、仁の夢も、
 そういう自分の気持ちが、夢に出てきていたんだと思ってる。

 仁がもう、オレのことを吹っ切ってるんだから、オレはもう、何も気にする必要はない。もう違うと分かったなら、きっともうこれから先、徐々に忘れられるはず。

 仁と普通に暮らし続けられれば。
 兄と弟として、仲良く、居られるようになるはず。

 自分の中の気持ちを、そんな風に整理しながらリビングに戻ると、テーブルの上のスマホを手に取った。



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