22 / 130
◆Stay with me◆本編「大学生編」
「普通の兄弟」
目覚ましの音で目が覚めて、すぐに止める。
「――朝……」
そうだ。……今日から、仁が居るんだ。
なんだか一気に目が覚めて、起き上がった。
落ち着かず、とりあえず、着替えてしまう事にした。
塾講師のバイトの服装は、ネクタイやジャケットは無し、私服でもok。
ただ、毎回、「らしい服装」に悩むのも面倒なので、白か水色系のシャツに、黒か紺かグレーのズボンにしている。
白のシャツに袖を通して、紺のズボンと靴下。
そのまま洗面台で顔を洗って、歯を磨く。
歯ブラシをくわえたまま、お湯を火にかけると、口をすすぎに洗面所にもどろうとしたら、仁が起きてきた。
「おはよ、彰」
「ん……」
待って、と手を振って、洗面所で口を漱ぐ。
「仁、おはよ。 早いね」
口元をタオルで拭きつつ、洗面所の出入り口に立ってる仁を振り返ると。
「うん。――――彰、その服ってバイト用?」
「塾の講師だから。いつも大体こんな感じ」
「なんか、すげー似合うね」
「え。……そう?」
一瞬ドキッとして。
ありがと、だけ返すと。
「……彰、朝コーヒーって淹れる?」
「うん。仁も飲む?」
「淹れるなら、飲みたいなと思って」
「コーヒー飲みたくて起きてきたの?」
「そうじゃないよ、いつも早起きしてるんだけど。でも、昨日のコーヒー美味しかったから」
仁のそんな言葉に、ちょっと嬉しくなってしまう。
「あれ好き?」
「うん」
「オレもあのコーヒー豆、やっとすごく好きなの見つけて……ってそんなゆっくりしてる時間は無かった。仁、朝ごはんは食べる?」
「うん。食べる」
「分かった」
急いでキッチンに戻って、コーヒーの準備をしつつ、ハムエッグと、チーズトーストをそれぞれ焼く。
部屋に戻って、ハンカチとスマホを入れて、教材を確認。リビングに全部運んで、焼き具合を見ながら、腕時計をはめていると、仁が入ってきた。
「腕時計なんてするの?」
仁がパンをトースターから皿に移してながら、聞いてきた。
「うん。授業中スマホ見る訳にいかないし。教室にも時計はあるんだけど、念のためね。壊れてたら困るし」
「ああ。なるほど……」
コーヒーを淹れ終わり、ハムエッグを皿にうつす。
テーブルに全部並べて、椅子に腰かける。
「いただきます。 ……仁って、朝いつも早いの?」
「うん。早起きしてる。いただきます」
「何で?」
「別に。早く起きた方が色々できるから」
「へえ……偉いなー、仁」
……なんて言ったら、ちっちゃい子褒めるみたいでおかしいかなと思って、一瞬黙る。
仁は特に何も答えず、食べてる。
どんな風に接すればいいんだろ。
あの件は全部忘れて、弟としてなんだから、
――――オレは、兄として、弟、可愛がればいいのかな。
……だけど、可愛い、とかいう感じでは、全然ないからなあ……。
……対等に、接するべき??
普通の兄弟の、二才差って……。
どんな感じで話してるんだろ??
なんだか、もはや基準すら、よく分からない。
久しぶりの、仁との――――しかも、二人きりでの、食事。
意識したら、なんだか緊張してきて、何を話そうか迷っているオレに、仁が普通に話しかけてきた。
「な、彰、ここら辺、剣道の道場ある?」
「んー……どうだろ。 大学に剣道部あるけど……」
「それは運動部の部活だよね? そこまでがっつりやりたくないんだよね……道場で、行きたい時に行ける位のが良いな」
「そっか。塾の先生達、地元詳しいから、良いとこあるか聞いてみるよ」
時間を見て、少し早めに食事を終えた。
コーヒーを飲んで、ほ、と息をついてると。
同じようにコーヒーを飲んでた仁が、微笑んだ。
「やっぱりコーヒー美味しい」
「今度、違う豆で淹れるね。そっちも美味しいから飲んでみて」
「うん。楽しみ」
仁が、ふ、と笑う。
あー……なんか。
……ほんと雰囲気、違うな。
反応が――――大人っぽい、ていうのかな……。
「ごちそうさま。ごめん、先終わるね」
食器を重ねながら立ち上がろうとしたら。
「片付けとくから、そのままでいいよ」
言われて。
「……ん、ありがと」
と、食器から手を離した。
歯を磨いて、髪を整えて。カバンを手に取って、玄関に向かう。
仁も一緒に玄関まで見送りに来てくれた。
「仁、今日どうすればいい?」
「昼どっかで食べない?食べてからベッド見にいきたい」
「そしたら……どこかで待ち合せる?」
「んー、どうせオレ暇だし、彰のバイト先の塾のとこで待ってる。場所、入れといて」
「ん、分かった」
靴を履いてから、下駄箱の中に引っ掛けていた合鍵を手に取る。
仁を振り返って、鍵を渡した。
「これ、あげる。仁が使っていいよ」
「――――ありがと」
「じゃ、行ってくるね。あとで」
「ん。頑張って。いってらっしゃい」
仁に見送られて、家を出る。
ドアが閉まって、思わず、ほっとする。
――――なんだか。
昨日まで、考えもしなかった事態で。
この微妙に浮ついてる、落ち着かない気持ちを、どうしたらいいのか、よく分からない。
話していると、ほんとに普通で。
むしろ、すごく居心地が、良い。
そうだった。
あんな事になってなければ、仁はすごく可愛くて、仁と居るとすごく楽しくて、穏やかで。居心地が良かった。年が近いから、仲の良い友達同士みたいで。
そうだ、すごく、楽しかったっけ。
そんな遠い記憶が、よみがえってきた。
戻れるのかな。前、みたいに。
たまに近すぎたりすると緊張したり、何かあると、ドキ、と心臓が動くのは……まだあの時の記憶がオレの方に、残ってるだけなのかも。
……だとしたら――――。
もう少し経って、慣れたら、大丈夫になるかな。
そんな風に思ったら、少し、楽になって。
仁に、塾の場所の連絡を、入れて。
塾までの二十分弱の道を、早歩きで進んだ。
あなたにおすすめの小説
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
クズ彼氏にサヨナラして一途な攻めに告白される話
雨宮里玖
BL
密かに好きだった一条と成り行きで恋人同士になった真下。恋人になったはいいが、一条の態度は冷ややかで、真下は耐えきれずにこのことを塔矢に相談する。真下の事を一途に想っていた塔矢は一条に腹を立て、復讐を開始する——。
塔矢(21)攻。大学生&俳優業。一途に真下が好き。
真下(21)受。大学生。一条と恋人同士になるが早くも後悔。
一条廉(21)大学生。モテる。イケメン。真下のクズ彼氏。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。