【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「痕」

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 家に帰ったら、もう、仁が先に帰っていて、玄関で出迎えられた。

「遅かったね。どこ行ってた?」
「んー……人と会ってた」
「……そっか」

 少し、間があく、返事の仕方。

 仁が、いつもこういう返事をする奴なのか。
 ――――何か、言いたい事が、そこに、入ってるのか。

 仁が来てから、何回か気になるけど……。
 ――――でも少し気になっただけで、終わる。


 仁は、昔の可愛い弟に、戻ってる。
 優しいし、少し頼れるようにもなった、弟。

 おかしな事も言わない。
 灼かれるみたいな視線で、見つめられる事も、無い。


 これから―――― 少なくとも、オレが卒業するまで、二年はきっと、一緒に暮らすことになる、家族。


 ……弟。家族。

 
「あ、そうだ。さっきベッド届いたから、部屋に入れてもらった」
「そうなんだ。どこに置いた?」
「とりあえず窓際」

 仁の部屋を覗きに行くと、今まで何もなかったその部屋に、大きなベッドがひとつ。

「明るい方が目、覚めるから」
「そっか。――――あ、母さんからの段ボールも来たんだね」
「ん」

 部屋の隅に段ボールが積まれてて、いくつか開いていた。

「ベッド下の収納と、クロ―ゼットで洋服とかは片付きそうだよ」
「じゃあ衣装ケースみたいなのは買わなくて良さそう?」
「うん。あ、あとさ、シャツ買ってきた」
「シャツ? あ、塾の?」
「ん。こんなんでいいよね?」

 買ったままのビニール入りのシャツを差し出されて、仁に近づいて受け取った。薄いブルーのと、ストライプと、白。

「とりあえず三枚あれば足りるかなと思って」
「うん。いいんじゃないかな。これ一回洗濯してアイロンかけた方がいいから……洗濯機入れちゃうね」

 ビニールを開けながら、そう言うと。

「……いいよ、やる」

 手から、それが取られた。
 何だか、急に無表情な感じの仁に、不思議に思っていると。


「――――彰、あのさ」
「……?」

「首のあと、ちょっと目立つ……」
「――――?……あ。……」


 あ、さっきのか……。
 とっさに、さっき吸われたあたりを隠す。


「近づくとすぐ見えるよ」
「――――」

 言いながら、シャツを袋から出し終えて。 仁は、ふと笑った。


「中学生には、刺激強いんじゃね?」
「――――気を付ける」

 何とかそう言って、首元のシャツを少し、上げた。


「オレ、今から夕飯作る。彰、なんかやる事ある?」
「……明日の授業の準備、少しする」
「そっか。少しって?」
「十分位。終わったら手伝いに行くよ。あと、明日もバイトだから、シャツ、今洗濯機入れといて。あとで、オレのと一緒にアイロンかけるからさ」

「ん。分かった」

 返事を聞いて、仁の部屋を出る。


 自分の部屋に入って、カバンを、掛けて。
 中から塾の教材を、机に置く。


 ――――鏡をのぞき込んで、首元を確認。



 はー。最悪……。……オレほんとに、キスマーク残りやすい。 
 亮也のもなかなか消えないもんな……。






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