【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「良い関係」



 仁のバイトが始まって、一週間が経った。
 仁の動きが驚くほどスムーズで、やりやすい。

  勉強は教えていたから飲み込みが良いのは知ってたけど、自ら考えて動けるかどうかは知らなかったし、知る機会もなかった。

 忙しい時とか、何人かサポートのバイトが入った事もあったけど、むしろ余計に手間がかかったりして、慣れるまでは時間がかかったのに。
 仁は、初日から楽だったっけ。

 やるなぁ、仁……。 
 というのが、率直な感想。

 オレが大学に入ってすぐの頃、大学のバイト募集の掲示板に、家から歩いて行ける塾の講師の案件があって、軽い気持ちで電話で問い合わせた。真鍋先生の柔らかいけれど強い押しに負けて、その日の内に面接になって、雇われることに決まった。

 もうすぐ丸二年。社員以外の入れ替わりはかなりあるので、バイトの中では長い方になっている。
 もう、社員に助けを求めなくても、自分の業務は滞りなくこなせる。

 仁なら、すぐできるようになりそう。
 向いてるかもなぁ……。 生徒にも人気ありそうだし。

 十分間の休憩時間。トイレ休憩と息抜きなのだけれど、仁は教室の途中で、女子生徒ばかりか、男子生徒にまで囲まれていた。

 笑うと優しいし、人懐こそうな顔になるから、好かれるし。
 昔から、仁は人気あったよなー……。

「彰先生、聞いてる?」
「……あ、ごめんね。もう一回言ってくれる?」

 いけない、すっごいぼーっとしてた。
 オレも今、質問されてたんだった。


 気を取り直して、生徒たちと向き直る。


 ――――涙腺がおかしくなったあの日から、一週間が経った。

 とにかく、意味も分からないけれど、かなり不安定になるから、そういう行為をするのはやめようと決めた。
 改めてちゃんと考えたら、したい時にするだけの関係を、全然良いとも思えてなかったし。

 なんでそんな事してたんだっけ、と、改めて考えたりした。
 結果、何でしていたか、はっきりとは自分でも分からなかったけれど……。

 ただ、何となく――――一人に決めて、自分だけ幸せになる訳にはいかないと思っていたから、な気がした。

 それはやっぱり、仁の事があったから、だったのかもしれない。
 だとしたら、もう、そんな風に考えなくて、良くなった訳で。

 それに、仁が家に居て誰も呼べなくなるし、泊まりに行く理由づけも面倒だし。
 いろんな理由で、セフレの関係を、自分の中で無くした。

 多分、こちらから声を掛けなくなって、向こうからの誘いを断っていれば、自然と解消する。
 女の子は飲み会で知り合った、普段あまり関わらない他大学か、他学部の子がほとんどで、関係がどうなってもあまり問題がなかった。

 亮也だけちょっと特別で。同じ学部で一緒の授業も多いし、一番会う回数が多くて関係が密だったから、自然消滅みたいなやり方での解消は無理だから。
 ……ちゃんと、話、しないとな……。

 そう思いながら、亮也の誘いも、他の誘いも、全部断って、一週間。


 春休みなので、特別用事もないし、敢えて作る事もしてないので、塾のバイト以外は、ほとんど、仁と居る。


 ――――仁と居る時間が、すごく長い。
 おかげでやっと少し、慣れてきた。

 あの日、仁と、笑って過ごそうと決めて。
 余計な事を考えないように、心に決めて。

 バイト帰りに買い物して帰って、一緒に料理をしたり。
 三食ほぼ一緒で。

 二年間何の連絡も取ってなかったことが嘘みたいな、急激な接近。


 オレが意味不明に泣いてたからなのか、仁は何だかやたら優しくて。

 ……気を遣ってるのが分かって。
 オレは、気を遣わせないように、元気に振舞う。

 少し、無理はしてるような気はするけれど、
 でも、そのおかげで、仁との関係は、良い。


 今、すごく仲の良い、兄弟、な気がする。
 兄弟というか……男友達みたい、な気もする。

 表面から見れば、文句なしに、とても仲の良い関係だと、思う。


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