【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「帰りたい」

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 塾のバイトを終えて、仁と二人でエレベーターで一階に下りる。

「彰、昼、何食べたい?」
「んー……仁食べたいものある? オレは何でもいいや」

「外で食べてく?」
「それもどっちでもいいよ」

「じゃあ、どっか外で――――」

 仁が何か言いかけたその時。


「――――?」

 仁の方向に、何だかまっすぐこっちを見てる気配の人が見えて。
 気になってふと、焦点を合わせたら。

 あれ。寛人……?
 思った瞬間。

「彰」

 呼ばれて、こちらに近付いてくる。

「寛人――――」

 オレがそう言うと、「え?」と声を出して仁はオレを見て。。
 それから、隣に立った寛人に視線を向けた。


「――――あ。……生徒会長?」

 仁のその言葉に、寛人は苦笑い。

「結構昔の話だけど……仁も、二個下の生徒会長だろ?」
「仁って……オレの名前知ってるんですね」

「お前は覚えてないかもだけど、ガキの頃、彰のクラスに遊びに来てたろ。仁、て呼んだ事も結構あるぞ、オレ」

「あー……っと…… すみません、覚えてないかも……。 片桐さん、ですよね。こっちに居たんですね」
「そうだよ。 ……って、別に彰と合わせた訳じゃねーぞ。たまたまだ」

「……分かってますけど……」

 仁が、ふ、と寛人に視線を流して。
 寛人と仁が微妙に見つめあってるのを、思わず眉をひそめて眺めてしまう。

「何それ、どんな会話……?」

 聞くと、寛人は苦笑いでオレを見る。
 
「いや。別に…… なんか仁は、そう思ってるのかなーと思って」

「別に。思ってないですよ。たまたま、ですよね」
「ああ。たまたま」
「――――」

 またそこで、二人して、無言。

 ……かみ合ってんだか、かみ合ってないんだか。
 ほんと、なんなの、その会話。

「寛人、どーしてここにいんの?」
「ああ。バイト先の研修がこの近くだったから、お前と昼飯食おうと思って、朝連絡入れたんだけど。既読つかねーし、もうなんか一人で食おうと思って店探してたとこで、お前見つけた」
「あ、そうなんだ。ごめん、今塾のバイト終わったとこで。全然スマホ見てなかった」

「お前らもこれから昼?」
「うん、そうしようと思ってて……」

 どうしようかな、仁はきっと寛人と一緒はやだよな。でも今の今まで仁と一緒に食べる話してたし。と、思った瞬間。


「彰、オレ先に帰ってるよ」

 その仁の言葉に、オレが反応するよりも先に。
 寛人が、仁をまっすぐ見つめて。

「いいじゃんか。一緒に食べようぜ、仁」

「は?」
「え?」

 怪訝そうに眉をひそめた仁の一言と。
 意味が分からず漏れたオレの一言。
 
 ものともせずに、寛人は、続けた。

「こんな機会も二度とねーかもだし。どうせ二人で食べようとしてたんだろ?」
「――――」

 何言ってんだ、寛人……。
 オレ、この三人で食事、食べる気は、全然しないんだけど。


「オレが一緒だと都合悪いことでもある?」

 寛人が、仁に視線を流して、そんな事を言う。

 ――――そんな言い方で言ったら、きっと仁は……。

「別にないし。……いいよ、じゃあ、彰、どっか入ろ」

 案の定、そう答える。……ちょっとムッとした感じで。
 ……絶対、寛人は、分かってそんな言い方で聞いたに違いない。

「よし、そうこなくちゃ―――― 彰、どこ行く?」

 二人して、オレに行先を委ねて、全任せ。
 

「……オレ、帰ろうかな」

 ぼそ、と漏れた本気の一言に。


「「は? 何言ってんの」」


 こんな瞬間だけ、ばっちり気が合って、同時に突っ込まれる。


 いや、冗談だよ。
 ……冗談だけど―――― 帰りたいのは、ほんと。


 仁は、昔から、アンチ生徒会長で。オレが寛人の名前出すと、あんまり良い顔しなかったし。
 寛人は、オレと仁の事知ってて――――今は、もう大丈夫って伝えてあるけど、絶対、この感じ、何かオレには良く分かんない事、考えてるに違いない。

 いやだいやだ、帰りたい。
 店を探しながら、歩いている時。少し、前を行く寛人の後ろで、仁を見上げて、こっそりと。

「仁、あの……気まずかったら、帰ってもいいよ??」
「は? 嫌だよ。都合悪いとか訳わかんねーし。行くから」

「……」

 だよな……。
 ――――もう。寛人は、仁のこういう性格、お見通しであのセリフを吐いたに違いない。


 ……寛人、ほんと……相変わらずだな……。


 憂鬱な食事場所、せめて静かじゃない場所にしようと思って。
 家族連れでにぎわってるだろうファミレスを提案してみた。


「ファミレス?いーけど……」
「どこの?」

「どこでもいい。決めて」


 ――――なんか。
 言った通り、ファミレスに決まってくれても、

 ……帰りたくてしょうがなかった。
 







◇ ◇ ◇ ◇
お知らせ。
少しで消します。
最初、通知が行かないように前のに上書きしますと書いたのですが
よく考えたら、通知が行かないようにということは、本棚に入れて下さっってる方以外どなたの目にも入らない?のでそれはなんだかな……と(^^;
新しいページで投稿していくので、通知がうるさいなと思ったら、ブクマは外してください(^^;💦
あと90話くらい、とびとびに転載しますので。
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