【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「謎のランチタイム1」


 周りは家族連れで、楽しそう。
 なのに、どーして、オレ達三人でご飯……。
 ……寛人のせいだ。あとで絶対文句言ってやる……。

 オレの隣に仁が座って、向かいに寛人が座る。
 先に寛人が一人でど真ん中に座ったから、もう、こっち側に仁と二人並ぶしかなかった。
 寛人に、二人並べて観察されているみたいな気がして、何だか落ち着かない。

 注文してしまうと、メニューを見て時間を潰す事もできないので、思わず、ふぅと小さくため息。

「ドリンク取りにいこ」
 仁が言うので、一緒に立ち上がる。

「いいよ。荷物見てるから先行って来いよ」

 寛人が言うので、仁と二人で歩き出す。
 なんか後ろから見られてる気がして振り返ると、寛人と目が合って、ふ、と笑われる。

 ……ほんと、何なんだ、寛人。 


「――――仁て、寛人とちゃんと喋ったことある?」
「……無い。でも、仁て呼ばれてるけど」
「オレが呼ぶからじゃないかな。小学生ん時から、確かに呼んでた」
「そうなんだ……彰の友達と結構遊んでもらってたけど、片桐さんは記憶ないなー……」

「寛人あんまり公園には居なかったから。仁が遊びに来てたオレの教室とかで、会ってたと思うけど……」
「ふーん……それは覚えてないなー…… ん、ストロー」

 ストローを渡されて、受け取りながら、仁を見上げる。

「……寛人と一緒で大丈夫だった?」
「別に。片桐さん自体はすごい人だと思うし」
「……そうなの?」
「二つ前の会長だからさ。いっこ上の会長からも話聞いたし。やってたことも色々すごかった」
「あ、そうなんだ」

 あ、そうなんだ。別に、寛人の事、嫌いだったわけじゃないんだ。
 良かった。ならいっか。

「――――まあ、色々思うとこはあったけど」

 ……ん? 今のなに?
 仁をぱっと見ると、苦笑して、まーいいや、と歩き始めてしまう。

 テーブルに戻ると寛人が立ち上がって飲み物を取りに行く。その隙に、隣に居る仁を見つめた。

「さっきの思うとこって……」
「いや。大丈夫だよ、大したことじゃないから」
「――――」

「あと、彰、ちょっと近い」
「え」

 ちょっと詰め寄ってたせいで、確かに距離が近い。

「あ、ごめん……」
 少し離れて座り直す。

「謝んなくてもいいんだけど。 あんまり近いと、何か言われそうだし」
「――――」

 確かに言われそうだと思うのは、オレは今までの寛人とのやりとりがあるから。

 ……そこいくと、仁は、何か言われそうなんて、どこから思うんだろ?
 やっぱり寛人のこと、警戒してるっぽいのは、昔と変わらない気がする。

「……まだ片桐さんとよく会ってんの?」
「んー……たまに、会うかな」

「ふうん……ほんと仲いいんだね」

 まあ。うん。
 ……仲は、いいかな。

 でも、ほんと、こんな意味不明なランチタイムを寄こしてくる、ほんとに、いまだによく分からない奴でもあるのだけど……。
 意図が読めなくて、深いため息をついてしまいそうになる。
 絶対何かを考えていることは、確かだし……。

 寛人が飲み物を持って戻ってきて、目の前に座る。
 しばし沈黙。――――それがきつくて、何とか話題を絞り出す。

 「寛人、何の研修だったの?」
「ああ――――居酒屋の、接客の研修」
「そんなのもあるんだ」

「うちの居酒屋、接客に超厳しいから」
「うん、それは知ってる。すごい居心地良いもんね、寛人のお店」

 何回か行ったけど、接客完璧。店員が皆、酔った人のあしらいもうまくて、すごく感じが良い。

「そのための研修をすげえやってるからな」
「寛人はあれだもんな……酔っぱらいの観察とかで居酒屋バイトなんだもんなー。ほんと、変な理由……」
「酔っ払いっつーか、大人の、観察、な。接客厳しいのも知ってたから、それも良かったし」
「もうそれ以上、人の観察しなくて良いと思う……」

 ますます敵わなくなりそうだから。
 黙って聞きながら、コーヒーを飲んでる仁に、ふと視線を向ける。

「仁も接客すんだよね。カフェでバイトするんだって。明後日からだっけ?」
「うん」

「へえ。接客のイメージないな、できんの?」
「……愛想笑い、得意だから」

 寛人の言葉に、仁はそう返す。

「お前の愛想笑いなんて見た事ねえな」
「必要な時しかしないし」

 何か、どうしてこんな感じの、会話しかできないのかなあ。
 これから喧嘩でもするのかと、思ってしまう。またまた、オレは、小さくため息……。

 寛人は普段から結構口調きついとこもある。偉そうで初めは誤解されるけど、でもすっごく優しくて、面倒見がいい。特に、下には慕われる事のが断然多い。

 仁だって、人当たりは良いし、先生とか先輩とかに横柄な態度とったりしないし。むしろ、愛想笑いすらそんなに見た事ない。自然な、笑顔の方が断然、多い。
 ……のに、何でか、寛人に対しては、なんか、常にこんな感じだった。

「仁、塾ですごい評判いいんだよ」
「……ああ、一緒に働いてんだよな」

「うん。真鍋先生もほめてたよ。飲みこみ早いし、完璧って」
「……そうなの?」

 仁が初耳、とばかりにオレに視線を向けてくる。

「うん。今日言ってた」
「……ふーん」

 ふーん、とか適当に返しながら、少し、嬉しそう、かな。
 表情が緩んでホッとしてたら、寛人が。

「何で、彰と同じとこ行ったわけ?」

 と、仁に聞いてきた。

 だから……聞き方……。

「真鍋先生が、初めて会った時、誘ったんだって、話したよね?」

 咄嗟に、オレが言うと、寛人はちら、とオレを見て、つまらなそうにため息。

「……ああ、そっか。それで彰のサポートから始めたんだっけ」
「うん」

 分かってるくせに、そんな風な聞き方しないでほしい。


「なあ……彰の先生姿って、どうだった?」

 寛人が、また、仁に視線を向けてそんな風に聞いた。

「……彰の先生――――分かりやすいし、優しいし。良いと思うけど」
「けど?」

「別に。……何が聞きたいのかなーと思って」

 ほんとだよ、何が聞きたいんだ、寛人。

 仁の言葉に、心の中で激しく同意するオレ。
 なんとなく、聞いたらずばりで返ってきて、ろくなことにならない気がするので、言わないけど。

 聞いてもないのに、寛人が更に何かを言おうとした時。


「おまたせしましたー」

 店員の明るい声が、場を裂いた。
 ありがとう、と思うような。
 この話はさっさと片づけてしまいたかったような……複雑な気持ちに襲われる。


「とりあえず食おうぜ」

 寛人がそんな風に言って、食べ始めてる。


「いただきます」

 一応言ったけど、なんだか楽しい食事ではなくて。
 大きなため息をつきたいけれど、それは我慢して、オレも食べ始めた。



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