【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「隠し事がバレていた」



「んで、何で泣いたの?」
「……さあ」
「さあって?」

「勝手に……よく覚えてない。気付いたら、泣いてて……」 

「またいっぱいになった感じか? まあオレも、今までに何回お前泣いたの見たかなーて感じだしな」
「……ごめん」

「いーけど」

 苦笑いの寛人。

「勝手に泣くとか、一番やばいやつじゃねーか……その前、なにがあった?」

「よく分かんないけど。一人の女の子とセフレ解消、して……別に特別何も思ってないのに……何か……うーん。何でだったかな。思い出せないや」

「……やばいなお前」
「……ハイ」

「仁はちゃんと考えてて、どうすべきか決まってるから、あいつはほっといてもいいかと思ったんだけど……お前は、自分の事、まずちゃんとしろ」
「――――ちゃんとって……今もしてるけど」

「……はあ? もう二十歳の男が? 何で泣いたかも分かんねえのに、ちゃんとしてるとか、言うなよ」
「――――」

 はあ……。もうその通りすぎて、反論できない。

「お前ってほんと、見た目しっかりしてんのに……中身たまに弱すぎるよな……皆見た目に騙されてて気づかない奴多いし――――」
「……つか、オレ、しっかりしてるって言われて生きてきてるからね」
「完全に騙されてるよな……」

 苦笑いの寛人に、オレは深いため息とともに、静かに言い返す。

「……よっぽどの事がないと、そんな風になんねえもん……」
「じゃあ今はよっぽどなんだって、ちゃんと自分で認めとけよ」
「――――」

 ……今って、いったい何が「よっぽど」の事なんだろう。

 仁と和解できて。仁と仲良く出来てて。
 セフレもそろそろやめて、生活、ちゃんとしようと思ってて。

 一体この状態の何が、よっぽどなんだ?



 でも確かに――――心の一番深いとこに何かがあって。
 その何かが、消えずにずっと、ある……ような気はする……けど。


「あん時逃げたのがまずかったんじゃねえの……? 逃げっぱなしにできる奴ならそれでもよかったのに、お前はそれが出来ないんだからさ……」
「――――」

「ならもう、考えて、自分の中でちゃんと結論を出して、この先どうすべきかもう一度考えた方がいいんじゃねえのか?」
「――――」

「仁は今のままなら、ほっといて平気。あいつはちゃんと考えてるから……だから、とりあえず、お前はお前をどーにかしろ」
「………あのさ、寛人……」
「ん?」

「……オレ、セフレとかは、やめるから」
「ん?」

「ちょうど、やめようと、思ってたとこで……寛人にも言おうと思ってたんだけど……」
「ああ。 それは良かった」

「……オレ自身より前に、はっきり気づくの、やめてくんない?」

「つか、お前が気づくのが遅いってだけだけどな……オレは前から、お前みたいな奴は、そういうのはやめとけって言ってたけど」
「……うん。言われてた……」

 亮也の事はやっぱり言う気になんないけど……。 
 ――――いや、でも隠さない方がいいのかな…… 何か怖いし……。

「寛人あのさ……」
「ん?」
「セフレ、なんだけど……」
「ん」

 うう。さすがにちょっと怖いけど。

 でも仁の件の時、男同士に偏見はないって、言ってたし、それがなくてもきっと、寛人は、そういうの無さそうだから。

 ……言っておこう。
 後でバレる方が嫌だ。

「一人だけ、あの……」
「ん?」
「――――おとこ……で」

 うう、言っちゃった。もう取り返せない。
 次の寛人の一言が怖くて固まっていると。二秒後。

「……ああ。それ、今このタイミングでやっと言うのか」

 …………思っていた内の、どれでもない言葉。
 というか。

「………は?」

 やっと言うんだって。
 ――――何その言い方。

「昔、お前に電話かけた時さ、夜中なのに男の声がして。まあ、そんなの別に友達と泊まることだって普通にあることなのに、お前の慌てっぷりが相当やばかったから……そうなのかなとは思ってたんだよな」
「……………………」

「別にそれは大した事じゃねえっつーか。 男女関係なく、お前はやめとけっては思ってたけど。どうせその内病むだろうから」

 けろっとして、そんなこと、言ってる寛人。

「寛人、待って。 オレ、話についてけない」

「……隠せてるって思ってるのがなー。……甘いんだよと思いながら。 まあ、別にそこは、こだわって聞くほどの事じゃねえから、突っ込まなかったけど」

「…………っ……」

 もう、オレ、ちょっと今無理かも……。

 
「……寛人、ちょっと、五分待って」
「あ?――――ん、分かった」

 ものすごい苦笑いを浮かべながら、スマホを出して、時間を確認してる。
 オレは、脚に肘をついて、頭を抱え込む。


 ――――その電話、覚えてる。

 結構前……ていうか、たぶん、亮也とそうなってすぐの頃。

 初めてあいつんち行って……行為に慣れなくて、ベットの上で動けずにいたら、亮也が、電話鳴ってるってオレのスマホを持ってきてくれて……かけてきてたのが、寛人で。
 もう電話に出てるのに、亮也が、「彰、大丈夫? 電話出れる?」とか言うから、寛人の電話で怪しい事言わないで、と思って、ひたすら焦った。
 後から考えれば、別に、夜中に男友達の声がしたって、普通は怪しんだりしないし、オレが慌ててた方が怪しかったって、思ったけど。

 でも、寛人がそれに関して何も言わなかったし、ずーっと触れても来なかったし。……バレてないと思ってた。のに。

 ――――じゃあ、完全に最初の頃から、バレてたってことじゃん……。

 うー……。
 オレもう、寛人に隠し事しない……。

 後からバレて、こんな恥ずかしい思いするなら……。
 

「――――五分経つけど?」
「……っ……もう?」

「もう。経ったけど?」

 クスクス笑われて、ため息。


「……隠してて……ごめん……」
「つーか、別にオレに全部を話せとか思ってねーから、謝んなくていいけど」

 ははっ、と笑って、寛人がオレに視線を投げる。

「寛人、ほんとに平気なんだね…… 男……とか」
「――――平気……つーか…… まあ、オレはそっちに興味はねーけど、否定する気はないっつーか。別に悪い事してる訳じゃないし」
「……」

「でもお前、男のセフレとか…… そこだけは、仁にはバレんなよ」
「……まあ……兄貴がそんなの嫌だよね……。うん、バレないようにする。……ていうか、終わりにしようと思ってるんだけど……まだこれから話すんだけど……」

「ふーん……」

 寛人は、ふ、と息をついて、何秒か置いてから。

「――――お前こそ、男ってのは良いんだなって、そこは不思議だった」

 すごく、ゆっくり、言葉を紡いでくる。
  
「仁のことは結局ダメだったから、男がダメなんだと思ってた」
「――――ん……」

「弟だからダメだったのか?」

「……分かんないけど…… 仁との事があったから、あいつに誘われても驚かなかった……のかも……」

「――――なんかお前、そこらへん歪んでるなー……」

 言われてる意味が良く分からなくて、寛人を見上げる。


「二年引き延ばしてきたこと、ちゃんと考えな。ちゃんと向き合わないから、ずっとモヤついてんだろ?」
「――――ん」

「……煮詰まったら、話聞くから―――― そんな悩まず、明るく考えろよ」
「……無茶言ってるけど」

「お前、暗く考えると煮詰まるから、敢えて明るく考えろよ」
「……頑張る」


 言うと、寛人はまた苦笑い。

 今日の寛人は、ずーっと苦笑いしてるな。
 なんて、ぼんやりと思う。


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