【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

文字の大きさ
46 / 130
◆Stay with me◆本編「大学生編」

「仁との話」* 寛人side 3/3

しおりを挟む



「オレ、昔から、仁は何のつもりなんだろうって、思ってたんだよ」
「え?」

「中学で生徒会を彰とやるようになった頃からかな。お前の視線が突き刺さってくるから――――お前は彰をどんな目で見てるんだろって」
「……そんな、オレもまだ認めてない頃に、バレてたの?」

 ほんと、こわいな。と、仁が呟く。

「……そしたら二年前、彰がもう見るからにおかしくて、聞いたらそういう話だった。まあカマかけて、仁か? て聞いたから、認めたんだけどな」
「――――あんたは、あの頃反対してた?」

「……反対はしてねえよ。彰が良いなら、そうなっても良いんじゃねーのかと思ってた。今も別にお互いが良いなら、どんな関係でも、オレは別に良い」

「――――変な人」

 仁が、ぷ、と笑った。

「オレ、この話、他人にしたの、初めて」
「――――まあ、なかなか言えないよな……血が繋がってなくても、兄貴だし」

 仁は少しだけ頷いて。
 少し黙った後、また口を開いた。

「オレから彰に言う事はないから、多分彰が困る事は、ないと思うんだけど……」
「……ああ」

「――――もしオレの事で、彰が困ってて、辛そうで、片桐さんに相談したりして……」
「――――」

「オレが、彰の側に居ない方が良いって、判断したら……」
「したら?」

「……とりあえず、教えてもらえますか?」

「――――オレが判断したら諦めるのか?」
「……それですぐ諦めるかは分からないけど――――あんたがそう思う位、彰が困るなら、離れるっていう選択肢も、考えるから」

「――――彰が困るような、何かって何?」

「……バレないようにするつもりだけど……オレが想ってるのが、バレないとも限らないし。言わなくても、バレる事だって……ないようにしたいけど、分かんないし。 ――――それで彰が苦しむなら、離れるのも仕方ないとは思うから」

「――――分かった」

「オレの携帯番号、教えといていいですか?」
「ん。オレのも、登録しといて」

 番号を交換してから、スマホを伏せると、仁は、急にオレの顔を見て、ニヤッと笑った。


「オレ、片桐さんのこと、嫌いだったんだけど――――」
「あ?」

「理由は、完全に嫉妬で」
「――――」

「今日、嫌いじゃなくなりました」

 悪戯っぽく笑って、仁がそう言う。
 さっきまでの、決意を秘めまくりの表情じゃなくて。

 年相応の、無邪気な、笑顔。

 ああ、きっと――――。
 こういうとこを、彰は、仁が可愛いって、言ってたんだろうなと。
 ふと、思った。

 彰を、好きでさえなければ、きっとこんな顔でいつも、笑ってたんだろうにな。と、少し、可哀想にも思えるけれど。

 ――――好きでどうしようもないのは、仁自身なんだから、それも、仕方ないのか……とも思った。


「――――お前も、どーしても辛くなったら、連絡しろよ」
「――――」

 まっすぐオレを見て、にっこり笑って、無言で頷く。


「オレが払うから今日はいいから――――オレ少し、彰と話してから帰るから、仁は先に帰ってな」
「……はい。ごちそうさまです――――彰をよろしく……て言うのも変だけど。あ。夕食オレが買ってくって伝えてください」


「おう。……またな」
「――――それじゃ」


 最後に、にこ、と笑って。仁が店を出ていった。



◇ ◇ ◇ ◇



 電車の窓ガラスに、最後の仁の後ろ姿が浮かんで見えた気がして。
 息を、ついた。


 もしかしたらと、思ってたこともあったけれど。
 でも、ほとんどが、想像以上で。

 あの仁に、
 考えることを拒否して、ずっと避けてきた彰が、
 どう向かい合うのか……。

 ……正直、まったく読めない。

 余計な事を言ったら、さらに悩みそうだし。
 でも言わなくても悩みそうだ。

 ……よっぽどの事がないと、仁から告白する事は、無さそうだな……。


 それで、彰が、好きだと認めるなんて。

 ……ありえんのか、そんなこと??


 ――――あんなの聞いちまうと、仁を応援してやりたくなってしまうけど。なんだかそれも違う気がするし。


 とりあえず。 彰が病む前に一回会おう。
 それまでにオレも少し、考えとくか……。って何をだ。


 オレが考えてもな……。
 前髪を掻き上げて、そのまま、クシャクシャと頭を掻いて。



 ため息を、ついた。






しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

《完結》僕が天使になるまで

MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。 それは翔太の未来を守るため――。 料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。 遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。 涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。

片思いしてた先輩が産業スパイだったので襲ってみた

雲丹はち
BL
ワンコ系後輩、大上くんはずっと尊敬していた先輩が実は産業スパイと分かって、オフィスで襲ってしまう。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談?本気?二人の結末は? 美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。 ※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

処理中です...