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◆Stay with me◆本編「大学生編」
「痛み」
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【彰サイドに戻ります】
◇ ◇ ◇ ◇
寛人と別れて、ゆっくり歩いて帰る。
はっきりとした理由もないのだけれど、何故かものすごく重い気持ちで、鍵を開けて、ドアを開いた。
「ただいま……」
仁の靴、ちゃんとある。
とりあえず、良かった。
「おかえり、彰」
仁が迎えに来てくれる。
特に変わりのない、普通の笑顔の仁、だった。また、良かった、と何となく思う。
「夕飯の買い物してくれた? 寛人が言ってた」
「うん。してきたよ」
「何か買い忘れたものとか無い?あるなら今買ってくるけど」
「無いよ、大丈夫」
その言葉に頷いて、靴を脱いで上がる。
仁はふ、と視線を落としてから、オレを見つめてきた。
「彰、ごめん。さっき……席外してもらって」
「……ほんとだよ」
むー、と睨むと、仁は少し苦笑いを浮かべた。
「ちょっと……悩み相談、してもらいたくなってさ」
「……うん。それは聞いた。 中身は聞いてないけど」
言うと、仁は小さく頷いて、それから、にこ、と笑った。
「今日初めて、彰があの人と仲良い理由が分かったかも」
「なにそれ」
くす、と笑ってしまう。
「――――まあ、寛人は相談相手としてはすごく良いと思う。気づかないこと、教えてくれたりもするし」
「……ん。話せてよかったよ……な、彰、コーヒー淹れてくれない? 入れようかと思ったんだけど……彰が淹れたほうが美味しいから」
「うん。いいよ。待ってて」
洗面台で手を洗ってから、リビングに向かう。
仁は、いつも通り。
オレも、いつも通り。
オレ達、今、仲は良いと、思う。
というか、昔からずっと仲よかった。
友達んちを見てると、なんなら、喧嘩がコミュニケーションみたいな兄弟も珍しくなくて。オレと仁は、仲良すぎな位だなー、と思ってた。
喧嘩もあんまりした記憶がない。
オレは仁が可愛くて。
仁は、兄ちゃん兄ちゃんってついてきて。
思春期になっても、生意気になったり反抗的になったり、なんて事もなくて。ずっと勉強も教えてたし、高校受験の時なんて、毎晩のように勉強につきあってた。
ずっと、ほんとに、仲良かったと、思う。
「彰」と呼ばれた日から、全部、変わってしまったけれど。
――――久しぶりに会ったら、もう、あの事は、勘違いだったと、無かった事にされて。
……あれを無かった事にするのなら。
仁とオレの関係は、ずっと、仲が良くて優しいまま、だった。
そんな事を考えながら、コーヒーを淹れて。
テーブルに居た仁の前に、カップを置く。
「ありがと」
「ん」
仁の前に座って、コーヒーを一口飲んで、息をつく。
「やっぱり美味しい」
いつものように、そう言う仁に、ふ、と微笑む。
「……彰さ、明日の夕方、暇?」
「うん」
「剣道の道場さ。 真鍋先生がよさそうなとこ教えてくれて、さっき電話してみたんだ。明日、見学に行きたいんだけど」
「ん。一緒にいく?」
「うん。 帰り、そのまま夕飯食べよ?」
「いいよ」
まっすぐな視線に、頷く。
「明後日からカフェだからさ。明日道場は行っちゃいたくて」
「カフェのバイトは夕方からなの?」
「うん。とりあえずは、塾の無い日に少しずつ入る感じ。学校が始まって、授業が終わる時間が分かったら、それに合わせて曜日で入ることになってる」
「そっか……そういえば、何でカフェなの?」
「んー……彰が好きそうな、店だよ。 コーヒーうまくてさ」
「――――」
「こっから近いからさ。 オレが慣れたら、飲みに来てよ」
「うん。わかった」
頷くと、嬉しそうに笑う。
可愛かった頃の、笑顔が重なる。
「……オレさ、春休みが終わったら、塾のバイトどうしたらいいと思う?」
「どうしたらって?」
「真鍋先生からは、大学生活落ち着くまでは入れる日だけでもいいから、彰のサポート続けてって。その後も続けられるなら続けてもらいたいって、今日言われたんだけど……」
「あ、そうなんだ……」
「そう、剣道の話を聞いてた時に、言われた」
「――――そか。 仁はどうしたいの?」
「んー…… 彰は? どう思う?」
「オレ……?」
「……オレに、居てほしい?」
「――――」
そんな言葉に、なんだか言葉が出なくて、仁をまっすぐに、見つめた。
そのまま。
言葉が出ないまま、数秒。
「――――オレは仁と働くの……やりやすいから……」
「――――」
「居てほしいけど……でも、仁がやりたいかどうかだし……」
やっと、そう言葉を紡いだオレに、仁は、ふ、と笑った。
「――――続けることにする」
「え? ぁ、決め……たの??」
「うん。彰が居てほしいって言ってくれるなら、居るに決まってるじゃん」
まっすぐな言葉が、嬉しい。
……のだけれど。
――――なんか、どこかが痛い……気がするのが、何でなのか。
よく分からない。
◇ ◇ ◇ ◇
寛人と別れて、ゆっくり歩いて帰る。
はっきりとした理由もないのだけれど、何故かものすごく重い気持ちで、鍵を開けて、ドアを開いた。
「ただいま……」
仁の靴、ちゃんとある。
とりあえず、良かった。
「おかえり、彰」
仁が迎えに来てくれる。
特に変わりのない、普通の笑顔の仁、だった。また、良かった、と何となく思う。
「夕飯の買い物してくれた? 寛人が言ってた」
「うん。してきたよ」
「何か買い忘れたものとか無い?あるなら今買ってくるけど」
「無いよ、大丈夫」
その言葉に頷いて、靴を脱いで上がる。
仁はふ、と視線を落としてから、オレを見つめてきた。
「彰、ごめん。さっき……席外してもらって」
「……ほんとだよ」
むー、と睨むと、仁は少し苦笑いを浮かべた。
「ちょっと……悩み相談、してもらいたくなってさ」
「……うん。それは聞いた。 中身は聞いてないけど」
言うと、仁は小さく頷いて、それから、にこ、と笑った。
「今日初めて、彰があの人と仲良い理由が分かったかも」
「なにそれ」
くす、と笑ってしまう。
「――――まあ、寛人は相談相手としてはすごく良いと思う。気づかないこと、教えてくれたりもするし」
「……ん。話せてよかったよ……な、彰、コーヒー淹れてくれない? 入れようかと思ったんだけど……彰が淹れたほうが美味しいから」
「うん。いいよ。待ってて」
洗面台で手を洗ってから、リビングに向かう。
仁は、いつも通り。
オレも、いつも通り。
オレ達、今、仲は良いと、思う。
というか、昔からずっと仲よかった。
友達んちを見てると、なんなら、喧嘩がコミュニケーションみたいな兄弟も珍しくなくて。オレと仁は、仲良すぎな位だなー、と思ってた。
喧嘩もあんまりした記憶がない。
オレは仁が可愛くて。
仁は、兄ちゃん兄ちゃんってついてきて。
思春期になっても、生意気になったり反抗的になったり、なんて事もなくて。ずっと勉強も教えてたし、高校受験の時なんて、毎晩のように勉強につきあってた。
ずっと、ほんとに、仲良かったと、思う。
「彰」と呼ばれた日から、全部、変わってしまったけれど。
――――久しぶりに会ったら、もう、あの事は、勘違いだったと、無かった事にされて。
……あれを無かった事にするのなら。
仁とオレの関係は、ずっと、仲が良くて優しいまま、だった。
そんな事を考えながら、コーヒーを淹れて。
テーブルに居た仁の前に、カップを置く。
「ありがと」
「ん」
仁の前に座って、コーヒーを一口飲んで、息をつく。
「やっぱり美味しい」
いつものように、そう言う仁に、ふ、と微笑む。
「……彰さ、明日の夕方、暇?」
「うん」
「剣道の道場さ。 真鍋先生がよさそうなとこ教えてくれて、さっき電話してみたんだ。明日、見学に行きたいんだけど」
「ん。一緒にいく?」
「うん。 帰り、そのまま夕飯食べよ?」
「いいよ」
まっすぐな視線に、頷く。
「明後日からカフェだからさ。明日道場は行っちゃいたくて」
「カフェのバイトは夕方からなの?」
「うん。とりあえずは、塾の無い日に少しずつ入る感じ。学校が始まって、授業が終わる時間が分かったら、それに合わせて曜日で入ることになってる」
「そっか……そういえば、何でカフェなの?」
「んー……彰が好きそうな、店だよ。 コーヒーうまくてさ」
「――――」
「こっから近いからさ。 オレが慣れたら、飲みに来てよ」
「うん。わかった」
頷くと、嬉しそうに笑う。
可愛かった頃の、笑顔が重なる。
「……オレさ、春休みが終わったら、塾のバイトどうしたらいいと思う?」
「どうしたらって?」
「真鍋先生からは、大学生活落ち着くまでは入れる日だけでもいいから、彰のサポート続けてって。その後も続けられるなら続けてもらいたいって、今日言われたんだけど……」
「あ、そうなんだ……」
「そう、剣道の話を聞いてた時に、言われた」
「――――そか。 仁はどうしたいの?」
「んー…… 彰は? どう思う?」
「オレ……?」
「……オレに、居てほしい?」
「――――」
そんな言葉に、なんだか言葉が出なくて、仁をまっすぐに、見つめた。
そのまま。
言葉が出ないまま、数秒。
「――――オレは仁と働くの……やりやすいから……」
「――――」
「居てほしいけど……でも、仁がやりたいかどうかだし……」
やっと、そう言葉を紡いだオレに、仁は、ふ、と笑った。
「――――続けることにする」
「え? ぁ、決め……たの??」
「うん。彰が居てほしいって言ってくれるなら、居るに決まってるじゃん」
まっすぐな言葉が、嬉しい。
……のだけれど。
――――なんか、どこかが痛い……気がするのが、何でなのか。
よく分からない。
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