【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

文字の大きさ
49 / 130
◆Stay with me◆本編「大学生編」

「考えたくない」




 仁が考えてる間。
 頬杖をついて盤を見てる仁を、何となく眺める。

 ふふ。真剣な顔。
 手を抜くとバレるから、抜かないけど。

 ……勝たせてあげたくなってしまう。


「――――」

 仁が石を置いて、こっちに顔を上げるので、オレもまた考える。

 仁、強くなった気がする。
 やってたのかな、オレとやらなくなってからも。


「――――」

 
 今、仁と居ると――――楽しい。
 ……また元どおりになれて、ほんとに、良かった。


 このまま、ずっと、こんな風に居れたらいい、よな……。
 

 と、そこで、ふ、と止まった。


 ……ずっと……。
 ……ずっと、って…… いつまで、だろ?


 ……何を、考えるんだっけ、オレは。


 ――――仁に迫られてたあの頃のこと……。

 ……何でオレが、その手を振りほどけなかったか、てこと。
 全部考えることを拒否して―――― 逃げた、理由。

 そして、二年以上も、
 まともな恋愛もしないで、適当にしてきた意味……だっけ……??

 ……そんなの――――分かんないな……。
 今更過ぎて、分かんない。

「……彰?」
「……え?」

「彰の番だよ?」
「あ。うん」

 あ、今、どこに置いたか見てなかった。
 ぼーっとしてた。

「……ここ、置いた」

 仁が、ぽん、と指で指してる。

「あ、いいのに。言わなくて。見てなかったのが悪いんだし」

 言ったら、仁は、ぷ、と笑った。

「昔、オレがぼーとしてた時、よく教えてくれたじゃん」
「――――そうだっけ?」

「そーだよ」

 クスクス笑いながら、仁が「早くやって」と言う。

 あんまりそんな記憶、ない。
 ……覚えてない事も、きっといっぱいあるんだろうな……。

 黒石を置いてから、また考えてる仁を眺める。

 ほんと。
 真剣。

 ――――昔、向かい合ってた時は、まだ子供っぽくて。
 真剣だけど、楽しそうな表情で、盤を見てて。
 負けると毎回すごく悔しそうで。
 
 もう―――― 子供っぽいとこは、無いな。
 なんかもう、全然、違う。

 静かに、石を置いて。ひっくり返して。

 結局、少しの差で、オレが勝った。


「ちぇー。また負けた」
「仁、強くなった気がする。 オセロやってた?」
「ネット対戦はしてた。受験の息抜きで。オレ、強くなってる?」
「うん、なってる。気抜いたら負けそ」

「また今度やろ」
「……もう一回って言わないんだ?」

「ん。今はいいや」

「――――じゃまた時間ある時、やろ」
「ん」

 仁が手早く石を重ねて、片づけてく。

「仁、コーヒー、もっかい淹れようか? 冷めちゃったし」
「……じゃあ、カフェオレがいいな」
「分かった」

 オセロの片付けは任せて、コーヒーを淹れに立ち上がる。
 仁は自分の部屋に、オセロを置きにいった。


 静かになった部屋に、お湯を沸かす音だけ。

 やっぱり、昔の事をほじくり返して考えるのはやめたい。
 どうせ、思い出して考えたって、もう、関係ないし。もう、忘れたい。

 忘れて―――― これから、どう、過ごせばいいか。
 考えればいいんじゃないのかな。

 さっき別れたばっかりなのに、今寛人と話したい。
 すでに考えるの嫌になってきたって伝えたら、何て言うだろ……。


「――――彰?」
「……え?」

 部屋から戻ってきた仁が、椅子に座りながら、呼びかけてきた。


「眉間にしわ……すごいけど。何か難しいこと考えてる?」

 そう言われて、手で眉間に触れて少し擦ってると、仁が、クスクス笑った。


「――――オレこないだも言ったけどさ」
「……?」

「彰に頼られるようになりたい。……つか、少しは頼れよ」

「――――だから。 ……ちょっと生意気、仁」

 そう返すと、仁はむ、として。
 じっとオレを、見つめて。

「オレふざけてないし。本気で言ってるから」
「――――ん……ありがと」


 今度は茶化さず頷いて。
 まっすぐな、視線を、受け止める。




 だから――――。
 なんで……。

 なんとなく、どこか―――― 痛い、のか……。
 
 
 それが何なのか、全く分からない。




 ――――前は考えもしなかった。

 仁に、そんな風に言われるなんて。
 オレが、仁に頼るとか。

 だって、仁は弟で、可愛くて、守りたいって、オレが、思ってたから。

 少しは頼ってって言われるけど……。
 すでに結構、頼ってる気がする。

 仕事もかなり頼ってしまってる。仁と働いてると、スムーズで楽すぎる。
 料理とか、家事とかも、むしろ仁のが率先してやってて、自然と任せてしまってる部分も多い。

 そういうのだけじゃなくて。

 なんか、自分の中で、完全に欠けてた仁が、
 急に、すべて埋められてく、みたいな。



 なんか――――調子が狂うから、 
 ――――こんなに、ざわざわ、する、のかな。


 
 この複雑な、よく分からない気持ちを――――。
 ちゃんと考えるのって……。

 ……やっぱり……なんか、気が進まない。



 仲良くなれて良かった、で。
 済ませて、おきたい。
 





感想 60

あなたにおすすめの小説

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

クズ彼氏にサヨナラして一途な攻めに告白される話

雨宮里玖
BL
密かに好きだった一条と成り行きで恋人同士になった真下。恋人になったはいいが、一条の態度は冷ややかで、真下は耐えきれずにこのことを塔矢に相談する。真下の事を一途に想っていた塔矢は一条に腹を立て、復讐を開始する——。 塔矢(21)攻。大学生&俳優業。一途に真下が好き。 真下(21)受。大学生。一条と恋人同士になるが早くも後悔。 一条廉(21)大学生。モテる。イケメン。真下のクズ彼氏。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。