【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「バカ彰」* 寛人side


 

 仁からの着信。

 ……なんな訳。
 オレは、思わず、深くため息をついた。



◇ ◇ ◇ ◇


 金曜に彰と飲みに行った。土曜に彰から電話がかかってきて、めちゃくちゃ謝られて、大丈夫だと伝えた。また今度な、と電話を切った。
 で。今日は日曜。日中、また彰から電話がかかってきた。

「……ん?……仁が怒ってる?」
『多分』
「……何でそう思うんだ?」
『……だって、全然ちゃんと目あわせてくれないし、笑わないし。 なあ、寛人、オレ、なんか暴れてたりして、仁に迷惑かけてた??』
「んー……いや? とりあえず仁に、お前を部屋までは運ばせたけど、勝手に服脱いですぐ寝ちゃったって言ってたし……」
『……じゃあなんで、あんなに怒ってるんだろ。聞いても何にも言ってくれないしさ。全然話してくれない訳じゃないんだけど、笑わないしさ、声低いしさ』

「――――仁に聞いてみた方がいいのか?」
『……ん? 連絡先、知ってるの?』

「こないだ悩み相談の後、聞いた」

『あ、そうなんだ。……んー……でも…… オレが聞いても、怒ってないしか言わないし……』

「今仁は?」
『道場に行った』

「聞いた方がいいか?」
『いや…… オレが、寛人に告げ口したみたいになるから、聞かないで。ただ、暴れたりしてなかったかなーと、思って、聞いてみただけ」

 彰は、大丈夫、何とかする、と言って、電話を切った。

 んー……どうすっか。
 なんて、思っていたら。その数分後。

 仁からの着信。

 ……なんな訳。
 オレは、深くため息をついた。


「もしもし仁?」
『……あ、どうも……こんにちわ』

「……どした?」
『……んー……あの……』

「お前、彰に、怒ってんの?」
『――――何ですか、それ』

「彰が、自分が暴れたりしてたのかとか、気にしてたからさ。……って、彰が言ってたのお前には言わなくて良いって言われてたんだけど…… はー。 何でこんな事言わなきゃいけない訳……」

 はー、とため息。

「……んで、お前は怒ってんの、怒ってねえの?」
『……怒ってはないですけど…… 楽しく話したい気分でもない、てとこです』

「……彰が何かしたの?」
『……してないですけど……』

 すこし仁が、声のトーンを下げる。

『あの日、水、飲ませたんですよ』
「……ああ。もしかして、口移しで飲ませちまったとか?」

 思いついたことを口にして聞いたら、少し無言の後、不機嫌そうな声が聞こえた。

『してねーから。……んなの虚しいし』
「……んで?」

『……寝たままだと飲めないから、肩抱いて起こして、飲んでって言って飲ませたんですよ』
「んで?」

『……飲んではくれたんだけど、口から少し零れたから、唇を拭って…… あの時たぶん彰は……キスされてると、思ったんだと思う。なんか、動作っていうか……』
「んー……で?」

 しばしの無言。
 嫌な予感。


『……りょうや、て言った』


 大きく漏れそうになったため息を、何とか押しとどめる。


 ――――りょうや。
 ……こないだ、聞いた名前、だな…… 。 バカ彰……。


『……女の子の名前なら分かるけど。何でそこで男の名前な訳。つか、ムカつきすぎて、聞けないし。……聞かないけど、でも……なんかムカついて、全然楽しく話す気なんか、全然しないし』
「――――」

 話し始めたら、たまってたのか、まくし立てていく仁。

「……キスされたと思ったかどうかなんて、分かんねえんじゃねえの?」
『……そうだけど』

「つか、寝てたんだろ。 別に深い意味のない寝言じゃねえの」

 ……違うだろうけど。仁の言ってることが、あってるんだろうけど。
 ほんと……バカ彰。

『……ですよね……――――だめだ、オレ』

 はあ、とため息が聞こえる。

「仁?」
『……分かってんのに。 なんかこんな事で――――彰に笑いかけられなくなるなんて』

「――――バカ」

 思わず言ってしまうと、仁が、無言のあと。


『……バカだよ、ほんと――――』

 どこまでも沈んでいきそうな仁に、ため息。

「じゃなくて…… そんな、酔っぱらって寝てる時の彰の寝言なんかに、んな悩むなよ」
『――――』

「酔っ払ってない時の彰をちゃんと見ろよ。……彰が今、お前のこと、気にしてンの分かってんだろ」
『……分かってる』

「……じゃもう、そっちのが大事だろ」
『……はい』

「――――仁」
『……はい?』

「――――彰、中高、彼女居たし、こっち来てからだって、そういう関係、持ってたと思うし。そこらへんにいちいち反応してたら、キリねえぞ」

『……分かってますよ。オレだって、付き合ってたし。 文句なんか言えるはずない。そうちゃんと分かってたんだけど……』

「――――」

 ……まあ。
 男の名前だったから、だったんだろうけど。
 オレは絶対そこには触れねえぞ……。

『……落ち着いたから、もう大丈夫です。すみません』
「――――できたら、優しくしてやって」

『……何それ』

 苦笑いの仁の気配。

「……なんか弱ってる気がするから。 あんなに酔っぱらったのも初」
『……了解です』

「まあ。弟のお前に言うのも変だけどな」

『大丈夫。――――剣道行って、発散したら帰ります』
「おう。 頑張れ」


 落ち着いた声で、すみません、と言って、電話が切れた。



「――――はー……」


 バカ彰、バカ彰。
 寝言とは言え、アホか。


 ――――彰に言ったら、ものすごい焦るだろうから、言わねえけど。言っても仕方ねえし。言って、ぼろ出されても困るし。
 仁からは、それには突っ込まないだろうし。

 
 ほんと、マジでもう――――。
 言ってもしょうがねえけど、バカ彰……。




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