66 / 130
◆Stay with me◆本編「大学生編」
「楽しい空間」
しおりを挟む
【side 彰にもどります】
……あれ? なんか、仁、普通……?
「ごめん、遅くなって。食べててくれて良かったのに」
剣道から帰ってきて、シャワーを浴びて出てきた仁は、普通に笑顔でそう言った。
「もっと遅くなるなら先に食べようかと思った、けど……」
「ありがと。食べよ。準備手伝う」
「……うん」
……なんか。今日の塾のバイト中も、全然目を合わせてくれないし。余計な事話さないし、な感じだったのに。
「――――仁?」
「ん?」
「……」
なんて言おう。
そう思って一瞬言葉に詰まっていたら、皿を出してた仁が、一度置いて、オレを見つめた。
「ごめん、彰」
「……」
「―――……態度悪かった、オレ」
「――――」
「やな思いしたよね。ごめん」
「いや…… ていうか…… オレが、何かしたんじゃないの?」
「してないよ」
「でも……」
「……酔っ払いすぎてて……ちょっとむかついたけど」
――――。
それを言われたら、何も言えない、のだけど。
「……ほんとに、それ?」
「そうだよ」
本当なのか分からないけど、仁は、まっすぐ、オレを見つめてくる。
「こんな態度良くないと思って。……反省してるから、許して」
少し困ったように笑う、仁。
「……オレこそ、……なんかごめん」
オレがそう言うと、仁は、じっとオレを見つめてから、首を横に振った。
「彰は謝んなくていいよ。ほんとごめんね」
言って、仁がまた皿を持って、テーブル置きに行った。
「この話、これで終わりでいい?」
「――――オレは、いいけど……」
仁、ほんとにそれで、ここ二日間ずっとあんなだったの?
そりゃ迷惑かけたかもしれないけど……。
「仁、いいの?……ほんとにそれだけ?」
「……彰、飲みすぎ禁止な?」
「――――ん、分かった」
――――ほんとにそれだけだったかよく分からないけど。
もう、それ以上は言わないんだろうと思って、そこで諦めた。
ご飯を一緒に食べ始めると、仁が今日の道場の話をし始めた。
「今日少し早く行ったから、小学生の子達が居てさ。すげえ可愛かったよ」
「そうなんだ。こないだの子、居た?」
「居た居た。 めっちゃ懐かれた」
そっか、と笑う。
「可愛かったよね、あの子」
「うん。可愛い。一生懸命で。結構筋良いと思う」
「そうなんだ」
普通の、笑顔。
楽しそうな、優しい、喋り方。
いつも通りの仁。
ほっとする。仁の視線が、普通に絡むのが、嬉しいと、感じる。
でも――――心の端で気になる。
酔っ払いすぎたからって…… あんな怒るかな?
……玄関からベッドに運んだ位で、仁がそんなに怒ると思えないのに。
でも、何をしたか、分からない。
――――オレあの日……酔っぱらって帰ってきて、寝ちゃっただけ、らしいし。で、起きて会った時には、もう、仁は、変だったし。
……何も、する暇ないと思うのだけど。
でも仁の態度は、それだけなんて、思えないのに。
納得いかないけど。
仁は、もう何も話さないと決めたみたいだし。
これで――――いいのかな……。
聞きたい事も聞けず。
言いたい事も言わずに。
このまま――――。
楽しい空間だけ守っていければ、いいのかな……。
「彰、オレ明後日はランチからバイト入るからさ。……来る?」
そう聞かれて。
こないだ約束もしてたし、行く、と頷いた。すると仁は、嬉しそうに笑う。
「まだ料理は作ってないけど。ホールに居るから、コーヒーはオレが淹れて持ってく」
笑顔で言う仁に、うん、と笑い返す。
「……仁、あのさ」
「ん?」
「……昨日から変だったのって…… オレが酔っぱらってたから?」
「……そうだよ?」
また話を戻したオレに、静かに笑ったまま、仁は頷いた。
「酔っぱらって……何か、した?」
「何かって?」
「……暴れたとか、なんか……いやな事、言ったとか」
「……してないよ。ごめん、ほんとに大した事じゃなかったんだ。もう気にしないで、彰」
「――――分かった」
笑顔で言われると。もう、頷くしかできない。
本当なのかも、よく分からない。
ただ頷いて。
たぶん敢えて、楽しそうに話してる仁と、同じように笑顔で話して。
その日は、食べ終わってからもお互い部屋には戻らず、寝るまでずっと、一緒に、過ごした。
……あれ? なんか、仁、普通……?
「ごめん、遅くなって。食べててくれて良かったのに」
剣道から帰ってきて、シャワーを浴びて出てきた仁は、普通に笑顔でそう言った。
「もっと遅くなるなら先に食べようかと思った、けど……」
「ありがと。食べよ。準備手伝う」
「……うん」
……なんか。今日の塾のバイト中も、全然目を合わせてくれないし。余計な事話さないし、な感じだったのに。
「――――仁?」
「ん?」
「……」
なんて言おう。
そう思って一瞬言葉に詰まっていたら、皿を出してた仁が、一度置いて、オレを見つめた。
「ごめん、彰」
「……」
「―――……態度悪かった、オレ」
「――――」
「やな思いしたよね。ごめん」
「いや…… ていうか…… オレが、何かしたんじゃないの?」
「してないよ」
「でも……」
「……酔っ払いすぎてて……ちょっとむかついたけど」
――――。
それを言われたら、何も言えない、のだけど。
「……ほんとに、それ?」
「そうだよ」
本当なのか分からないけど、仁は、まっすぐ、オレを見つめてくる。
「こんな態度良くないと思って。……反省してるから、許して」
少し困ったように笑う、仁。
「……オレこそ、……なんかごめん」
オレがそう言うと、仁は、じっとオレを見つめてから、首を横に振った。
「彰は謝んなくていいよ。ほんとごめんね」
言って、仁がまた皿を持って、テーブル置きに行った。
「この話、これで終わりでいい?」
「――――オレは、いいけど……」
仁、ほんとにそれで、ここ二日間ずっとあんなだったの?
そりゃ迷惑かけたかもしれないけど……。
「仁、いいの?……ほんとにそれだけ?」
「……彰、飲みすぎ禁止な?」
「――――ん、分かった」
――――ほんとにそれだけだったかよく分からないけど。
もう、それ以上は言わないんだろうと思って、そこで諦めた。
ご飯を一緒に食べ始めると、仁が今日の道場の話をし始めた。
「今日少し早く行ったから、小学生の子達が居てさ。すげえ可愛かったよ」
「そうなんだ。こないだの子、居た?」
「居た居た。 めっちゃ懐かれた」
そっか、と笑う。
「可愛かったよね、あの子」
「うん。可愛い。一生懸命で。結構筋良いと思う」
「そうなんだ」
普通の、笑顔。
楽しそうな、優しい、喋り方。
いつも通りの仁。
ほっとする。仁の視線が、普通に絡むのが、嬉しいと、感じる。
でも――――心の端で気になる。
酔っ払いすぎたからって…… あんな怒るかな?
……玄関からベッドに運んだ位で、仁がそんなに怒ると思えないのに。
でも、何をしたか、分からない。
――――オレあの日……酔っぱらって帰ってきて、寝ちゃっただけ、らしいし。で、起きて会った時には、もう、仁は、変だったし。
……何も、する暇ないと思うのだけど。
でも仁の態度は、それだけなんて、思えないのに。
納得いかないけど。
仁は、もう何も話さないと決めたみたいだし。
これで――――いいのかな……。
聞きたい事も聞けず。
言いたい事も言わずに。
このまま――――。
楽しい空間だけ守っていければ、いいのかな……。
「彰、オレ明後日はランチからバイト入るからさ。……来る?」
そう聞かれて。
こないだ約束もしてたし、行く、と頷いた。すると仁は、嬉しそうに笑う。
「まだ料理は作ってないけど。ホールに居るから、コーヒーはオレが淹れて持ってく」
笑顔で言う仁に、うん、と笑い返す。
「……仁、あのさ」
「ん?」
「……昨日から変だったのって…… オレが酔っぱらってたから?」
「……そうだよ?」
また話を戻したオレに、静かに笑ったまま、仁は頷いた。
「酔っぱらって……何か、した?」
「何かって?」
「……暴れたとか、なんか……いやな事、言ったとか」
「……してないよ。ごめん、ほんとに大した事じゃなかったんだ。もう気にしないで、彰」
「――――分かった」
笑顔で言われると。もう、頷くしかできない。
本当なのかも、よく分からない。
ただ頷いて。
たぶん敢えて、楽しそうに話してる仁と、同じように笑顔で話して。
その日は、食べ終わってからもお互い部屋には戻らず、寝るまでずっと、一緒に、過ごした。
55
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
《完結》僕が天使になるまで
MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。
それは翔太の未来を守るため――。
料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。
遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。
涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる