【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「なんか可愛い」

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 亮也と別れて家に帰り、炊飯器をセットしてから、シャワーを浴びる。
 髪を乾かして、カレーを温めていた時に、仁が帰ってきた音がしたので火を止めて玄関に向かう。

「おかえり。おつかれ」
「ただいま。 カレー、すごい良い匂いしてる」

 ふ、と笑う仁に、うん、と頷いて。

「今あっためてたから。シャワー浴びてくる間に用意しとく」
「ありがと。ごめん、スマホ、テーブルおいといてくれる?」
「ん」

 そのまま、仁がバスルームに消えていき、オレはリビングに戻った。
 テーブルに仁のスマホを置いて、カレーの火をつけてかき混ぜる。

 仁の携帯が鳴り始めて、しばらく鳴ってから切れた。
 
 それから少しして、バスルームから仁が出た音が聞こえてきたので、火を止めた。
 ご飯とカレーをよそり、サラダを冷蔵庫から出して、テーブルに並べていく。

「すっげーいい匂い。腹減ったー」

 髪をタオルで拭きながら、仁がリビングに入ってきた。

「ん、食べよっか」
「水、一杯飲みたい」
「あ、入れるよ」

 歩いてこようとした仁を止めて、コップに氷を入れて水を注ぐ。仁に渡すと一気に飲み干した。

「今日すごい忙しくてさ。休憩なしで何も飲まず終わっちゃった」
「え。つか、今日結構長かったのに。 水くらい飲みなよ」
「そうなんだけどさ。なんかずっと客に呼ばれて」
「忙しいんだね。 ていうか、オレ明日、行ってもいーの? ランチとか、余計忙しいんじゃないの?」

「まあ……でも、来てほしいから。大丈夫、彰が居る間は、彰のとこオレが行くから。あんまりうるさくない、良い席あけとくし」
「ん。分かった」

 ふ、と笑って頷くと、仁がスマホのランプに気付いた。

「あれ……着信鳴ってた?」
「あ、そうだ。 うん。しばらく鳴ってたよ」
「んー……」

 仁がスマホを持とうと手を伸ばした瞬間。
 そのタイミングで、着信が鳴った。

「――――もしもし?」

 少しの時間があいて、仁が、ああ、と笑った。

「麻里ちゃんか……うん。さっきも掛けた? ――――ああ、うん……そうだね」

 しばらく、返事をするだけの会話が続いて。
 会話が終わって、スマホを置くと、仁が苦笑い。

「……何の電話かよく分かんなかった」

 言いながら、仁がテーブルに着く。

「いただきます」
 と言って、サラダを食べながら。

「……バイトの連絡グループには入れられたんだけどさ。世間話とかばっかりだから、あんまり返してなくて」
「ふーん……?」

「男子バイト少ないし、かぶって入らないんだよね。だからそんな仲良くもなんないし、あとは女子ばっかだしさ」

 まあカフェって言ってるし。女子のが多いとは思うけど。

「なんでカフェでバイトしたんだっけ?」
「…… だって彰コーヒー、好きだろ」

 その言葉に、ちょっと首を傾げてしまう。

 ……ん? 
 オレが、コーヒー、好きだから??

 ………って言った? 今。
 返せないまま、ただカレーを口に運んでると。

「コーヒーの事とか、カフェの料理とか、色々知るのもいいかなーと思ったからさ」

 付け加えるみたいに、仁がそう言った。

「カレーもメニューにあるんだよ。隠し味があるらしくてさ。いつか教えてくれるって店長が言ってた」
「そうなんだ」
「明日色々メニュ―見てみてよ。食べたいメニュー、覚えるからさ。あ、場所分かる?」
「うん。何時に行けばいい?」

「少しお昼からずらして十三時位がいいかな」
「分かった」

 頷いてから、ふと気付いて。

「仁が接客してるとか、そういえば初めて見るよね」
「あー……そう言われるとちょっと恥ずかしいかも。来てもいいけど、あんま見ないでね」
「……何それ」

 なんか、可愛いな、仁。
 見ないで、だって。

 クスクス笑うと、仁は少し面白くなさそうな顔をして。

「……見てもいーけど、笑うなよな」
「……ん、笑わないよ」

 ついつい笑いながら言うと、仁が、はー、とため息をついてる。

「楽しみかも」
「……コーヒー楽しみにしてきてよ。ほんとうまいから」
「うん、そっちも楽しみだよ」

「そっちも、て…… 」

 仁は苦笑い。
 その顔を見て、またふ、と笑ってしまった。






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