75 / 130
◆Stay with me◆本編「大学生編」
「弟は無理」
しおりを挟む「なあなあ、彰」
「……ん?」
「もし弟に、もう一度告白されたら、どーすんの? 追い出すの?」
「だから、されないって」
「されたらどーすんのって話。全然、可能性ないの?」
「――――だから、無理だって」
……どんなに、考えたって。
――――無理、という言葉しか出てこない。
「なんかさ。もし、弟が彰の事まだ好きだったらさ」
「……」
「すげえ、かわいそうだよな」
「――――」
ズキ、と痛くて。
亮也を見つめ返した。
「だって―――― すげえ好きだったのに、弟だからとかいって逃げられて、二年間一人で耐えて…… で、勘違いだって誤魔化してでも、お前と居たくて、好きなのを隠してるんだって思ったらさ。すげえ可哀想」
何だか心、抉られるような気がするけど――――。
違う、その、「好きなら」という前提が、違うんだから、
だから、可哀想なんて、当てはまらない。
――――亮也の言ってるのは、「好きなら」という話だ。
「――――だから……仁は、オレの事、好きなんかじゃ……」
「ほんとに、心からそう思ってるのか?」
「――――」
うん。思ってる。
だって、仁は、そういう風に、オレを見たりはしてない。と思う。
むしろ―――― 昔を思い出してるのは、オレの方で。
二年かけて思い出さないようにして、薄らいできた記憶を簡単に呼び起こされて、なんでだか、毎日苦しいのは、オレだけで。
――――仁に、キスされたり、抱き締められてた時の事。
ふとした拍子に、思い出してしまうけど……。
だけど。今のオレの前に居る仁は。
あれを勘違いだったって言って謝って、無かった事にして、兄弟としていようとしてる、仁だから。
そのくせに、たまに。
ただの弟ならしないような……何とも言えない顔、したり。
よく、分からない事で、怒ってたり……。
オレも、大事にされ過ぎて、勘違いしそうになったりして。
あんな風なキスしてたのに、
全然平気な顔で、オレの前に居るなよ。とは、思ってしまうけど……。
「――――彰?」
「え?……あ。なんだっけ?」
「だから――……弟が、彰の事、ほんとに好きじゃないと思ってんの?」
「……うん。少なくとも、あの頃みたいな好きは……無いと思う」
「――――聞いてみたら?」
「え?」
「確認させてって。あの頃みたいな好きは、無いのかって」
「――――って……そんな、蒸し返すような事……」
眉を寄せてそう、返すと。
「好きじゃないなら、蒸し返したって問題ねえよ。今は違うって言われるだけだろ。――――もし、今も好きなら……ごまかして先延ばししたって、どうせいつか爆発すると思うよ。そんなに好きな奴と一緒に居て、我慢なんかし続けられる訳ねえじゃん」
「――――」
「好きなら好きで、彰も――――今度こそちゃんと考えたら?」
「――――」
「……オレがもし弟ならさあ」
「――――」
「弟だっていう理由なんかで断られても、全然納得いかないと思うけど」
「――――つーか……それ以上に無理な理由ないって位……無理な理由だと思うんだけど……」
そう言ったら、亮也は、はー、とため息をついて、大げさに首を振った。
「バカだなー彰。嫌いだって言われてんなら、諦めるしかないけど、弟だから無理なんて言われて、諦められるれ訳ないじゃん。自分はとっくに兄弟乗り越えて、好きだって言ってんのに」
「――――」
「男が無理だ、嫌いだ、なら諦めるけど……」
「――――」
「好きだけど弟だから無理なんて断られても、それこそ、無理。しかも血繋がってねえなら、なおさら」
「――――亮也……」
「うん?」
「……ほんとお前の言葉って。 たまに、痛すぎて無理……」
言ったら、ぷ、と笑われる。
「図星だから痛いの?」
「……図星っていうか。考えた事、無かった事、今言われた」
「いや、だって――――オレなら、そう思うけどって事ね。振られて諦めなきゃって時に、そんな理由で諦めつくのかなーって」
「……でもオレ、そんな事も言ってないよ。 無理って言っただけで。好きだけど弟だから無理なんて、言ってないし」
「――――だって、お前、キスさせてたんだろ。好かれてんのかなって思うと思うんだけど」
……また、そこか。
結局、キスを振りほどけなかった理由に、行きつくのか。
そこをはっきりせずに、オレが逃げたのが、そもそもいけなかったんだと、またしても突きつけられたみたいだ。
51
あなたにおすすめの小説
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
僕の恋人は、超イケメン!!
刃
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる