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◆Stay with me◆本編「大学生編」
「ヤキモチ?」
しおりを挟むどうしたらいいのか悩みながら少し時間を置いて、まさか自分の部屋に逃げる訳にもいかなくてリビングに向かった。
「……?」
仁が居ない。
……でも、紅茶はもう入って、カウンターの上に置かれてる。
部屋に行った気配はしなかったけど……。
「――――?」
流しの方に歩いていって。
そこで、うずくまってる仁を発見した。
……え? 何?
――――具合悪い?
「仁、どうしたの?」
隣に膝をついて、ぽんぽんと肩を叩いてみる。
「――――」
少しだけ顔を上げて、オレを見て。
しゃがんでうずくまってた仁は、後ろに尻を落として座ると、また膝を抱えてしまった。
「どうしたの……?」
しばらく返答無し。どうしようかと思っていたら、仁が、静かに口にしたのは、ただ一言。
「……ごめん……ちょっと……自己嫌悪で」
「え?」
何が?
「……さっき、ごめん」
「……?」
さっきって、なに? どれ?
返事をしないオレを、少しだけ顔を横に向けて。チラ見して。
全然分かってないと悟ったのか、はあ、とため息をついた。
「……キスマーク」
「あ」
それか……。
「……オレほんと……何してんだろ――――」
またうずくまってしまった。
「……仁……いい、よ。別に。亮也だってふざけてやったんだし……そんな気にしなくて」
そんなに落ち込まれると、なんか、居た堪れないというか。
そんなに、別に、たいしたことじゃ――――。
……たいしたことじゃなくも無いんだけど。オレ的には。
まだ異様に、首だけジンジンするし。
でも、たいしたことじゃないと、思い込む為にも。
「別に、たいしたことじゃないから――――」
言った瞬間。
腕を、掴まれた。
「――――ヤキモチ、妬いた」
「……え?」
「……ヤキモチ妬いたから、した。ふざけ返した訳じゃ、ない」
「――――え……」
仁が、もう、どうしたらいいのか分からない、というような。
何だか、甘えてる時、みたいな。
昔みたいな、顔をして。
ふてくされたみたいに、そう言った。
「――――」
こっちに来てからの仁は――――なんか……。
すごく、大人になっちゃったみたいで……優しいけど、表面だけみたいな……。
―――― どこか、本気じゃないみたいな……。
昔の可愛かったとことか、見えなくて。たまに少しだけ見えた気がしても、すぐ大人っぽい笑顔で、隠されるみたいな……。
思い切り、ふてくされた顔を見た瞬間。
――――久しぶりに、ちゃんと、仁に会ったみたいな。そんな、気がした。
なんか……仁、だ。
……仁が――――ヤキモチ……?
思った瞬間。
なぜだか、急に、顔が、熱くなった。
「――――は……?」
驚いたみたいに、仁が顔をあげた。
……つか、何コレ。
咄嗟に。口を覆って、立ち上がろうとした手を掴まれて、止められた。
「――――なに、その顔……」
下から、まっすぐに、見つめられる。
「――――っ……なんでも……」
「無い訳ないだろ―――― 何……?」
「……っ……」
オレだって―――― 全然分からないのに。答えられる訳ない。
「彰……?」
すごく、苦しそうな、顔をして。
なんだか、どこか、すごく痛そうで。
こっちまで、胸が、痛くなる。
「――――彰……」
「……っ……」
顔が、ゆっくり、近づいてきて。
――――まるで、キス、される、みたいで。
心臓が、爆発しそうで――――
その、瞬間、だった。
インターホンが、鳴り響いた、のは。
二人とも、大きく、震えて。
ぱ、と、離れた。
いつも、このインターホン、こんなに大きい音だっただろうか。
爆発しそうだった心臓は、離れてもなお、大きく、ドクドクいってる。
もう一度鳴ったところで、動けないオレを残して、仁が、仕方なさそうに立ち上がった。
「はい」
「こんばんわー」
能天気な挨拶。オレも何とか立ち上がって、インターホンの画面を覗くけれど、ちょうど顔が映ってない。
「……どなたですか?」
仁の声が、低くて、不機嫌。
「父さんだけど?」
その一言に。
オレも仁も、一瞬すべて忘れはてて、顔を見合わせた。
「え……父さん?」
「……彰、くるって聞いてた?」
「何も聞いてない……」
「早く開けてくれない?」
そう言われてみれば、確かに声は父のもので。
二人で、玄関に急いだ。
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