【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「緩い優しさ」


「仁は、向こうのお父さんに似てるんだよ」
「あー……確かに、仁と母さんも、似てないね」 

「うん。まあ……ものすごく、カッコいい人だったんだよ、仁のお父さん」
「ん? 知ってるの? 仁のお父さん」

 ふと、父さんの方を向く。もう目が暗闇に慣れてきて、表情も見て取れる。

「あれ? 話してなかったっけ?」
「? 何?」

「あー話してないかもなぁ……」

 ほんと。のんきな父の声は、落ち着く。
 クスクス笑いながら、また目を閉じる。

「仁のお父さんと、今のお母さんが同じ会社に勤めてて。もとは、父さんの会社の取引先の人達だったんだよ。その会社を訪ねると、今のお母さんが受付に居て、仁のお父さんとは、会議で会ってた」
「――――知らなかった。……仁のお父さんは事故で亡くなったんだよね?」
「そう。ほんとに突然ね。――――うちもその少し前に、母さんが病気で亡くなってたから、それで、お互い大変ですねって話してたら、会社の受付なのに一緒に泣いちゃったりして。慰めあったりしてる内に……かな。 最初はそんな気、全然なかったんだけどね。同じように息子が一人いるっていうのも、共通の話になって……て感じかなー……」

「――――全然知らなかった」

「……正直、仁のお父さんを選んだ人が、自分を選んでくれるとか思わないから。ほんと最初は、何の意識もしてなかったよ」
「なにそれ父さん」

 苦笑い。

「だって、まあ…… 背も高いし足も長いし、スーツ姿、男でも見惚れる位カッコいい人でね。仕事もできるし、欠点が見つからないんだよね。 そんな人と結婚してた人がだよ? しかも母さんも美人だし。でもちょっと抜けてて可愛かったけど」
「――――」

「そんな人が父さんを選ぶとは、思わなかったからなあ……」

「母さんは、何で父さんと結婚決めたんだって?」
「さあ?」
「え、聞いてないの?」

「プロポーズして、考えさせてくださいって言われて――――そこら辺で、仁と彰を会わせて。 その後、結婚してくださいって、母さんから言われたから。もう理由はどうでも良かった、から」
「――――」

 父さんのそーいう所なんだろうなー。
 優しいっていうか。
 何も言わず、包んでくれるっていうか。

 と、勝手に予想しながら。クスクス笑っていると。

「――――彰は、好きな人は、居る?」

 不意に、聞かれた。

「え。……何で突然、オレの話?」
「――――父さんはさ。 前のお母さんの事も、今のお母さんも、大好きだし…… 子供たちも良い子だし。幸せだなーと、思ってるからさ」
「うん? 思ってるから?」

「彰にも、幸せになってほしいから」
「んー……そっか……」

 何だか、父の言葉が、痛い。

 ……幸せ、か。
 ――――幸せ……。

「――――父さん」
「ん?」

「……変な事…… 聞いていい?」
「……どうぞ?」

「――――オレが思う幸せとさ。 父さんや母さんが思う幸せが……全然違ったら……」
「……ん?」

「……オレが……もう、たとえようのないくらい、ひどい相手を連れてって、父さんたちは大反対でさ……でもオレが幸せだからって言ったら……って意味分かんないか」

 ……分かんないな、これじゃ。
 ていうか、そもそも、自分の中でだって答えも何も出てないのに。何が聞きたいんだ。

 そう、思って、止まっていたら。
 父さんが、少し黙って考えてから。

「んー……反対されそうな相手を、彰が連れてきたらって事?」
「――――まあ……そう……かなあ……」

「……彰が心から幸せなら、良いんじゃない? 無理してるとか。幸せだって思い込もうとしてるとか、それなら反対するけど。――――それが彰の本当の幸せなら、反対はしないよ」
「――――」

「人はさ、いつ死んでしまうか分からないし。そう思ったらさ…… 自分が幸せだと思う所に居るのが一番だと思うし」
「――――」

「とりあえず、彰の幸せは、彰のものだから。 彰が心から幸せなら、文句はないよ」
「――――」

 なんか。なんでか。……わかんないけど。
 ――――泣きそう。

「……こんな答えじゃ納得いかない? 極端かな、いつ死ぬか分からないとか」

 苦笑いしてる、父さん。

「彰も、仁も、和己も。皆、幸せだなと思って生きてってくれたら、嬉しいかなー……」

「……うん。――――とりあえず、父さんが幸せなのは分かったから良かったよ」

 ふ、と笑って言うと、父さんもクスクス笑った。

「彰、外見は似てないけど、中身は父さんに似てるからさ」
「……ん?」

「なんかお人好しすぎというか。考えなくていいとこまで考えて、落ち込むとか。分かってても直せるとこじゃないし。……似なくていいとこ、似ちゃったなと思ってるんだよね」
「父さんて、落ち込むの?」

 あんまり見た事ないけど。

「そりゃ息子には見せないけど。特に母さんが亡くなった時とか、彰が居なかったら、立ち直れなかったかも……」
「――――」

「彰が居たから、頑張れたんだよね」
「――――そうなんだ」

「だから、お礼に、彰の幸せは守るからね」
「――――ん……」
「……彰?」

「……今さ、オレさ――――ちょっと……色々考えてて」
「……うん」

「――――泣けてくるから、もうやめて」

 ――――苦笑いでそう言うと。
 父さんがむく、と起き上がってきて。

「寝るまで、背中とんとんしてあげようか?」
「……は? 何言ってんの? 恥ずかしいから無理」

「昔は毎晩してあげたよね」
「いやいや、何才の時の話だってば……」

 しばし、すったもんだ、暴れる。

「――――はー、強情、彰」
「いやいや、絶対父さんがおかしいからねっ」

 オレの抵抗に、渋々布団に戻ると。父さんはクスクス笑い出した。

「……彰はさ。頑張りすぎない事だよ? ほんと。いつも頑張りすぎ。人の事気にしすぎ。たまには、自分に素直になりな?」
「――――うん」

「……こんな風に隣に寝るのも、ゆっくり話すのも、久しぶりだよねー……。もしかして、良いタイミングで来たかなあ?」
「……うん……そうかも。……ありがと」

「ん。おやすみ、彰」
「うん。……おやすみ」

 何一つ、問題が解決したわけじゃないし。
 自分の想いが結論付いたわけでも、仁の事が分かった訳でも、なんでもないんだけれど。

 ――――緩い父の優しさに。
 自然と、心が緩んで。

 最近なかなか眠れなかったのが嘘のように、ふっと、眠りに、落ちていた。


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