【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「決意」

  
【side 彰】


 翌朝。久しぶりによく眠れた気がして、すっきりと目が覚めた。
 父さんは寝てたし、仁もまだ寝てるのか部屋に居るので、一人で朝食を作り始める。

 塾が終わったら――――きっと今日は、道場に行く日だよな。
 道場から帰ってきたら…… 仁と、話す、のかな。

 ――――何をどう、話すんだろう?
 正直、父さんが、幸せなら良いって言ってくれた事はほんとに嬉しかったけど。
 それをそのまま、あてはめて考える訳にはいかない気がするし。

 幸せならいいって言ってくれたからって、だからって。
 ……なんなんだろう。

 オレは……仁と――――どうしたいんだろう。
 仁は、オレと、何を話すつもりなんだろ……。

「彰、おはよ」
「あ。仁――――おはよ」

 先に洗面所に行ってたみたいで、タオルで顔を拭きながら、仁は近づいてきた。水を一口飲んでから、オレの隣に立つ。

「……コーヒーの匂いで起きた。いい匂い」
「そっか」

 仁の、そんな言葉に、自然と笑みがこぼれる。

「――――彰、首、見せて?」
「?」

 仁の手が触れて、シャツが少し開かれた

「――――っ……」
「――――赤いね。……痛い?」

 もう痛くはないから、首を振る。

「……ごめんね」

 じっと見つめられて。
 また、首を振る。

「……大丈夫、だから」

 ドキドキ、する。
 理由なんか、分からない。
 でも、心臓、ドキドキ、する。

「……仁、父さん、起こしてきて?」
「……ん。分かった」

 仁が、ゆっくり歩いて、姿を消す。

 ふぅ、と息をつく。
 ――――少し、触れられるだけで。 こんなにドキドキするって。何でだろう。

 ……離れている間、ずっと、仁のことを思い出してはいたけど。
 やっぱり、時がたつにつれて、激しい感情ではなくなっていた。
 辛かったけど、どこか遠くて。新しい感情はわかなかったから、とにかく全部遠くて。

 再会して。
 最初は、気を張って頑張っていたけど――――。
 色々、ガードしてたものが、少しずつ崩れている気がする。

「父さん、今着替えてくるって」
「うん。コーヒー運んでくれる?」
「ん。パンも焼くね」
「うん」

 卵とウインナーを焼いて、皿にのせて用意していると、父さんがネクタイを締めながら現れた。

「おはよ。わるいね、遅くて」
「全然。新しいタオル出してね」
「ん」

 父さんが顔を洗いに行ってる間に、二人で食事の用意を終えた。

「彰、オレ、今日道場、休もうと思ったんだけどさ」
「……うん?」

「……教えてあげる約束しちゃった子がいてさ。やっぱり行ってくる。小学生の時間が終わったら、今日は切り上げて帰ってくるから」
「――――うん……わかった」

 何をそんなに話そうと、してるのかな。
 ……オレは……何をどこまで考えれば、いいんだろう。

 とにかく、頷いたところで、父さんが戻ってきた。
三人で一緒に食べて、用意をして、家を出る。

「父さん、今日はもう家に帰るの?」
「ん。明日はまたいつもの職場だから」
「そっか。――――今度来る時は、事前に連絡してよ?」
「そーだよ。居なかったら困るだろ」

 息子二人に言われ、苦笑いの父さん。
 駅に上がるエスカレーターの前で、三人で足を止めた。

「塾のバイト、二人とも頑張って。同じところで一緒にバイトしてるなんて聞いてなかったからびっくりしたけど」
「……まあ、オレは、まだ彰のサポートしてるだけだから」
「でも今日で春期講習も終わるから。そしたら、その内、仁も授業するようになるのかも……」
「ん。まあ……頑張るよ」

 そう言って笑う仁に、父さんは笑い返す。

「二人とも頑張って」

 最後にそう言った父さんに、ん、とそれぞれ頷いた。

「父さんも会議頑張って」

 オレがそう言うと、父さんは笑顔で頷いて歩き出す。エスカレーターで上がっていき、最後に手を振るのを見送り、何となく、仁と顔を見合わせた。

「なんか……嵐みたいだったね」

 仁がそんな風に言って、クスクス笑う。

「――――そだね。まあ……なんか父さんらしいけどね」

 二人で、ふ、と笑って、塾に向けて、歩き出した。

 仁との会話は…… 何も無ければ、普通の時は、優しくて、穏やか。
 こんな感じで、ずっといければいいのに、と願うけど。

 でも。やっぱり、それは表面だけ……な気がする。

 少なくとも、オレは――――色んな気持ちを全部隠したまま、接してる。
 心の中は。今夜話すって事が、気になってしょうがない。

 ――――授業。
 最後の春期講習。 抜けないようにしないと。

 とにかく―――― どう考えても。
 もうきっと、なるようにしか、ならない。

 嘘だけは――――つかないように、しよ。

 迷ってることも、悩んでることも……。
 考えられなくて、逃げた、ことも。

 全部。ほんとの気持ちで。話さないと。
 結果、どうなるにしても。

 嘘、ついたままだと。
 ――――きっと、前には、進めないから。

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