【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「この世で一番」




「彰、答えて」
「――――」 

「……寝たってなんだよ?」
「――――」

 仁が、出してくる問いに。
 答えられずに、ただ、俯いて、しまう。

 まっすぐな、瞳、見つめ返せる訳もない。

「彰、ちゃんと答えて」

 強い口調の言葉に、咄嗟に仁を見上げる。

 ――――苦しそうに、見える。
 ……胸が痛い。

「――――」

 もう言うしかないんだと、思った。
 ――――だってもう、今から何言ったって。誤魔化せっこない。

「……寝てた、から……仁がこっちに、来るまで……」
「――――あいつと?」

「……何人か、女の子と……――――あと……亮也、とも」

 すごく、うるさく思えて、換気扇を、止めた。
 そしたら。ものすごく張り詰めた静けさが襲ってきた。

「……なに? 何人かって」
「――――」

「こないだ、誰かと別れてたよね?」
「あれは……その内の一人の女の子と――――もうやめようって、言って……」
「――――まだ他にも居るって事?……」

 俯いて、しまう。

 できたらこんなの―――― 仁には言いたくなかったけど……。
 ――――でも、これも……隠したまま、嘘ついてくよりは……。

 もしかしたら……良かったのかもしれない。そう、諦めるしかない気がする。
 
「……それって、恋人じゃないの?」
「――――違う。付き合おうとか……言ってないし」

「――――なんで、そんな事……」
「……っ――――」

 ……今なら、分かる。

 仁を置いてきたのに、誰かと付き合うなんてできなくて。
 ――――でも……和己から、仁がモテて家に女の子連れてくるとか。また別の子と付き合ってるとかの情報が、勝手に入ってくるから。
 
 なんかそういうの聞いてると―――― なんだか、たまらなくなって。
 もう考えたくもなくて、誘われるまま、応えた、というか……。

「……亮也って、奴とは? 寝てたって何。はっきり言って」
「――――」

 俯いて、唇を、噛んで。
 それから、は、と息をついた。

「――――だから……そのまま、の意味……」
「抱いたの? ……抱かれたの?」

「抱かれ――――」

 言い終える前に、二の腕を掴まれて、ぐい、と引き寄せられた。
 勢いが激しすぎて、驚いて顔を上げたら、仁と真正面に、見つめあった。

 ――――怒ってる、のか。
 痛そう、なのか。


「なんで……?」

 吐き出すみたいに、聞かれた。

 なんで―――― なんでって……。

「どうしてそうなったんだよ…… あいつが、好きなの?」

「……亮也、とは……お互い気が向いた時、に……」
「……男に抱かれるなんて――――気がむいたからって、そんな事、平気でできんの?」

「――――っ……」

 痛い。
 ――――もう、体の奥が、痛すぎて。

 涙が、出そう。
 でも――――こんな事で、仁の前で、オレが、泣くわけにいかない。

「……仁だって……」
「――――なに?」

「……仁、だって――――色んな女の子と付き合ったってたんだろ。……それと……同じ、だよ……」

「――――」

 仁が、唇を噛んで。
 ぐっと、眉を寄せた。

 苦しい。
 もう。 息が出来ている気も、しない。

「――――っ……もう……離してよ。……痛い」

 二の腕を掴んでいる仁の手から逃れて、背を向けた瞬間だった。
 後ろから、腕を掴まれて引っ張られて。

 壁に背を押し付けられた。
 そのまま、また二の腕を掴まれて。
 まっすぐ、見下ろされた。

「……同じじゃない、全然……違う、だろ」
「――――っ……」

 痛そうな、顔。仁。

 ――――オレ、何で……そんな顔……させてるんだろう。

 ……この世で、一番、
 笑っていて、欲しいって……思ってるのに。


「女抱くのと、男に抱かれるのが、何で同じなんだよ……!」
「――――っ」

「……ッ……女なら、かまわねえよ。何で、男と……!」

 怒ってる。
 今まで、見た事がない位。

 でも、それよりも、もっと。
 ――――仁が、泣きそうに見えて。


 もう、どうしたら、いいのか、分からなくなる。

 時を、戻せるなら。
 仁の前から逃げた、あの時に戻りたい。

 でも、出来ない。

 仁から逃げたのに、仁が誰かと付き合うのを聞いて。
 体くらいは自由でもいいだろうと、好きにしてた、自分が、バカなんだ。

 一人で居ると、色んなマイナスの気持ちに負けそうで。
 ……意味もないのに、体だけ繋げた。


「……彰……」

 両手首を取られて、壁に、押さえつけられた。
 自然と上向いて、仁を見上げる。

「……じ……」

 名前を呼ぼうとした唇を、仁が塞いだ。


「……っ……!……」


 藻掻いても、離せない。 
 押さえつけられた、手首は、ぴくりとも、動かない。


「――――離し……っ」
「 ……嫌だ」

 何とか離した唇を、またふさがれた。


 久しぶりの―――― キスは。
 心が冷えてく、みたいで。


 耐えてた涙が、急に、溢れた。



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