【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「久しぶりの」

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 ――――出ようかな……この家。
 

 塾のバイトは、何なら毎日入っても良いし、一日にもっと多い授業数入っても良いと、前から言われている。今、社員達がやってる授業にオレが入れば、他の事ができるから助かる、とのことらしい。 もっと多く入れば、一人で暮らす家なら家賃も払える。

 仁が来た時、オレと仁が別に暮らしても良いって、父さんが言ってくれてたらしいし。最初だけ、少し助けてもらえば、すぐにでもどうにかなりそうだし。すごく安いとこなら、今のままでも、払えなくはないかも。

 とりあえず、出る準備だけは、しておこう。
 いつでも、仁が嫌なら、すぐ、出れるように。

 ……仁に嫌悪されてるのかと、思ってしまうと。
 ……ほんとに――――痛すぎる、な……。

 頬の涙を、手の甲で拭った瞬間、だった。

 がちゃ、と鍵の開く音がするとほぼ同時に、玄関のドアが、急に開いた。

 あまりに急だったので、驚いて、動けなかった。
 急いで中に入ってきた仁も、そこにオレが居るとは当然思っていなかった訳で。入ってすぐ鍵をかけて、こちらを向いて靴を脱ごうとしたところでオレに気付いて、驚いて動きを止めた。

 ――――あ、オレ、泣いてるし。
 とっさに俯く。

 落ち着け。玄関は、電気をつけなければ、暗いから。
 たぶん、大丈夫。見えてない。

「……わ……すれ物……?」
「……あ――――うん…… スマホ……」

 久しぶりに、仁の声、聞いた。
 咄嗟に、答えてくれたみたい。

「充電のところ?」
 歩き出しながら聞くと、仁の、うん、という声。

 リビングに入ってから、涙を拭いて。
 充電器から仁のスマホを外して、玄関に戻った。

「……はい」

 そっと差し出したスマホを、仁が受け取る。
 まだ目は赤いかもしれないから、顔はあげずに。

 今は顔をあわせたくないって言われてるから。
 俯いてても、変じゃないだろうと、思いながら。

「――――いってらっしゃい、仁」
「――――うん」

 俯いた視線の先で、
 仁が、スマホをぎゅ、と、握り締めたのが、分かる。


 ――――会いたくなかった、かな。
 ……こんなとこに、居なきゃよかった。

 今更後悔しても、遅いけど。

 ……仁が出てってすぐに、玄関に来てるとか……。
 何をしてたと、思うんだろう。

 どう思われてるんだろ。

 あ、でも――――いってらっしゃい、て、言えて、
 ……それは、良かったかも。
 
 ……ていうか、何してんだろ、仁。
 何で、出て行かないのかな。


 早く行って、くれないかな。
 ……なんかもう。 


 同じ空間に、居るのが、きつい。


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