【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「仁の告白」




 どうしよう。何を言おう。むしろ、何も言うべきではないのか。
 どうしたら。

 その時。仁が、急に、言った。

「……彰、オレの事、好き?」

 あまりにまっすぐ、聞かれて。
 何も答えられなくて。
 じっと、見つめ返す。

「……高校ん時も。今も……オレの事、好き?」

 そんなの、なんて答えれば……。
 視線を逸らして、俯いて、マグカップをぼんやりと目に映す。

 仁は、ふー、と息をついた。

「……そこでさ。……嫌いだって、言わないからさ。オレが、期待しちゃうんだよ」
「……」

「高校ん時も……嫌いな奴に、普通はあんなにキスさせないだろ?」
「……」
「……ここで一緒に暮らし始めても。……オレを好きって思ってるような顔、普通にするしさ」
「……」
「……だからオレが……期待しちゃうんじゃん……」

 ずき、と胸が痛い。

「……もっと……嫌な顔してくれたら、諦められるかも、しれないのにさ」

 ああ。なんか。……オレがバカなんだけど。
 ……なんかオレ。
 ずっとひどい事、してる気がする。

 好きって返せないくせに。
 ……嫌いとも言わずに。

 ……好きだってバレるような顔だけ見せてたんだとしたら……。
 ………………ほんと、オレがバカで。ごめん。

 黙ってると、仁が息をついた。

「彰。オレ、全部話すから、黙って聞いてて。良い?」
「……ん」

 頷くと。仁は、どこから話そうかな、と呟いた。

 こないだ、あんなに怖い顔して。あんなに怒って。……あんなに必死な顔で、触れてきた時とは、別人みたい。……顔、穏やか。

 ほんと。こうしてると。
 ……良い男に、なってるな……。

 ……なんて、思っていると。

 仁が、ああ、もう最初からでいいや。と、肩を竦めた。

「……まずこれは言っとかないと。……オレ、こっちに来た時、彰に嘘ついた。高校ん時のは思い込みと勘違いで、好きなんかじゃなかったって。そこだけ、大嘘だから。まあ……もうバレてるとは思うけど。ごめんね。そこは、もう忘れて?」
「……」
 一応、小さく頷いたら、仁がまた続ける。

「……高校ん時。……無理矢理キスして迫ったのは、悪かったと思ってる。でも、オレ、キスを拒否られなかったから……彰も、オレの事を好きなんだと思ってて。最後に拒否られたのは、男同士で、兄弟で……家の中であんなの、彰は耐えられなかったんだと思って……家出てったのも、絶対オレのせいだと思ってた」

 そこは、仁のせいじゃなくて……オレがただ、逃げただけ……なんだけど。
 キスを拒否できない理由を、考えたら……。
 ……出しちゃいけない結論になってしまいそうで、怖くて。
逃げただけ、なんだけど。

 そう思うけど。黙って聞いててと言われたのを思い出して、口を噤んでいると。
 少し考えてから、仁が続ける。

「……だから、オレ、もうこれ以上苦しめちゃだめだと思って、最初は本当に諦めようとした。 自分にできる事は全部、没頭して頑張った。彰に連絡とるのは、オレが完全に忘れられた時にしようって思ってた」

 連絡、取ろうと思ってくれてたんだ、という、それだけで嬉しいかも……。
 ……オレは……連絡なんて一生できないんじゃないかと、思ってたから。

「彰は出て行っちゃったし、完全に離れれば、その内忘れられると思っててさ。女の子にはモテたから……色んなタイプの女の子と付き合って、好きになるように努力もしたし……って、ここまでが、オレの高校生まで。……なんか、聞きたい事ある?」

 急に聞かれて。少し考えて、首を振る。

「そんでさ。大学をどこにしようって決める時に、頑張れば彰の大学にも入れるって成績だった訳。……で、結局、女の子にも夢中にもなれなかったし…彰に会いたくてしょうがなくなって。もう一回全部どうするか考えてさ」
「……」
「彰の大学ならオレがなりたいものになるのにも都合良いし。もし、彰に受け入れられなくても、そっちで頑張ればいいし。……だからとりあえず、もう一度だけ、彰の側で頑張ってみる事にした。ここまで、全部納得いく?」
「……うん……」
「……オレすごい頑張ったんだからね。 勉強もさ。剣道も、生徒会長も。……女の子だけ全然長続きしないから、よく友達に、そこイジられてたけど……」

 はー、とため息。

「しょーがないじゃんね。オレ、ずっと、結局彰の事、考えてたし」

 ……オレの事なんかもう忘れて、楽しく過ごしてる。 
 それでいいと思ったし、そうであってほしいと思ったのに。

 どうして今、こんな風に言われると。

 ……オレがずっと、仁の事。 忘れられずにいたその間。
 ……同じように、考えてくれてたんだって思うと。

 ……こんなに、胸が、ざわめくのか。

 ……でも。
オレは諦めて逃げて。
 仁を、思い出したくなくて、他の人たちと、付き合ってた。

 ……すごく胸が痛い。


  
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