【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「真っ白」

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「……ん……っ」

 仁の右手が、頬から首、鎖骨に触れて、そこから、胸に移って。
 先端に触れられた瞬間、だった。

「あ……っ」

 びくん、と、震えてしまって。

「……っ」

 自分の反応に一瞬で、引いた。
 ……触れられる事に慣れた反応だと、自分で思ってしまったから。

 普通の男は、乳首なんかでこんな反応しないよな。
 ……仁、嫌じゃないかな……。

 盛り上がってた気持ちが、いきなり一気に引いた。絡んでくる舌に応える事もできなくなって、ただ、どうしようかと、瞬きを繰り返していると。

 仁がキスしたまま、瞳を開けて。
 オレの様子が変なのに、気付いたみたいで。

「――――」

 そっと、仁がキスを離した。
 どうしていいか分からず、仁を見上げていると。

 仁が、ふ、と短く息をついた。

「……彰、あのさ」
「………」

 やっぱり。
 ……嫌……かな?

 嫌なドキドキで、仁を見上げていると。
 仁はオレの手を引き、うなじに手を当てて、ゆっくりと体を起こさせた。
 
「ごめん。先にこれ言っとかないとだめだった」
「……」

 改まって言って、仁が、まっすぐ見つめてくる。
 何を言われるのか……めちゃくちゃドキドキしてしまう。

「離れてる間さ、オレも彰も、他の人としただろ……?」

 その言葉に、静かに、少しだけ頷いた。

「オレこないだ……男と女じゃ違うって言っちゃったけど……誰にも触らせたくなかったっていう、ただの嫉妬と我儘で」
「――――」
「オレも、彰を忘れようとして、違う人と付き合ってたし」
「――――」

「……男に抱かれるのは全然違うとか……責めて、ごめん、な……?」

 ……何て答えたらいいのか分からない。

 女の子を抱いてたのと、仁以外の男に抱かれてたの。
……どっちを仁に隠したいと、思ったかといったら……。圧倒的に、抱かれていた方だから。
 それを考えれば、やっぱり、男が男に抱かれるっていうのは全然違うっていう言葉の意味は、分かりすぎる位に分かってしまう。

「今こうしてるってことと、これからの方が大事だろ? 今更どうしようもないことに拘るのはやめる。だから、彰もそうして」
「――――」

 ……ほんとに、忘れられる、のかな。
 ほんとは、すごく……嫌なんじゃないのかな……。

「これからはもうずっと、オレは彰のだし。彰はオレのだし」
「――――」

 まっすぐな瞳で、仁が、オレの瞳を覗き込む。

「……女も男も……彰の気持ちイイ記憶全部、オレとの記憶に変えさせるから」

 ほんとは絶対嫌なんだろうと、思うんだけど……。
 でも、そんな風に言ってくれる仁に。

 何だか。
 ……泣いてしまいそうに、なって。


「……なんで、そんなに、自信あるんだよ……?」

 思わずそんな風に少しふざけて言って、涙を誤魔化したら。
 仁が、む、としてオレを見ると。ぐい、と顎を掴んできた。

「彰の事すげえ愛してるから。それは絶対誰にも負けないと思うし」
「……っ」

 まっすぐ見つめてくる瞳に、ドキン、と胸が弾む。
 ていうか。もうずっと、ドキドキしてるのに。

 これ以上、ドキドキさせないでほしいんだけど……。

「……彰もずっとオレの事好きだったなら」
「――――」

「オレとすんのが、絶対、一番気持ちいいに決まってるじゃん」

 舌が深く絡んできて、長くキス、される。
 ゆっくり、離されて。

「だからもう何も考えないで、気持ちイイならそう言って。いちいち気にしないでよ。オレが、全部気持ちよくするんだから」
「――――」

 なんかもう――――。
 こんなにこんなに、苦しいほど愛しいと思うのに。
 こんなに長い間離れて……どうして、普通に生きていられたんだろ。

 そんな風に思ってしまう。

「――――」

 再び、ゆっくりと、ベッドに倒された。
 上に押し乗ってくる仁に、また囲われて。まっすぐに見つめられる。

 ……あ――――普通に、じゃないか。
 なんか、ずっと、冷めてて。ずっと、心に仁がいるのを押し殺して。

 ……そうだ、今まで、全然……普通じゃなかった。
 

「……仁――――一回だけ……謝る」
「ん……?」
「全部、ごめんね……仁」

 そう言うと、仁が、ふ、と優しく笑む。

「いーよ。オレも、彰のとこに来る勇気がなかったから……ずっと離れてて、ごめん」

 そんな言葉に、何も言えずに、ぶるぶると、首を振る。

 そんなの、仁のせいじゃない。
 あんな風に逃げたオレのとこに、仁が、来れる訳ない。

 今になって、来てくれたのだって、どれだけ、勇気が、要ったか。

「……仁……」

 仁の肩に触れて、そのまま首に、抱き付くと。
 また唇が重なった。

 ……もう、何も考えなくていいんだと、思って。
 真っ白に――――なっていく。


 ただ、仁の事が好き、という想いだけが。
 心の中全部を支配してる、気がする。


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