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◆Stay with me◆本編「大学生編」
「ドキドキ」
しおりを挟む仁が背後で、ふ、と笑った。
「……? 何?」
「――――前も、さ」
「ん?」
「前も、彰、ドキドキしてたよね」
「……前って、ずっと前?」
「オレ、あの時言ったじゃん。 彰がドキドキしてるの知ってるって」
「――――」
「覚えてない?」
……覚えてる。
二年前も、ドキドキしてた。意味も分からないのに。
それを、仁本人に突っ込まれたんだから、覚えてない訳、ない。
「……覚えてるよ」
「ふーん……」
仁が、くす、と笑ってる。
「……あの時、オレの事、好きだった?」
「…………」
「いつから、オレの事、好きだった?」
仁が、すごくゆっくりした話し方で、そう、聞いてくる。
は、と息を付いて。
背を向けていられなくなって、仁の腕の中で、向きを変えた。……けど。
「ち、かすぎ……」
振り返ったら、思っていたよりも近すぎて思わず少し引く。
「何だよ、それ」
ぷ、と笑った仁に、後頭部を押さえられた。
「何で近いとダメなんだよ。つか、話すためにこっち向いてくれたんでしょ?」
「…………」
電気はついてないけど、月明かりで、仁の顔はちゃんと見える。
もう。ただでさえ、ドキドキしてるのに。
……どうしてたら、普通に居られるのか、もう分かんないし。
「それで? ……いつから?」
「……今、思うとって話だからね……?」
「ん」
「……仁が好き、て言った時……かなあ……それまでも、大好きだったけど……弟としてだと思ってたし」
「――――」
「……オレ、彼女居たのにさ。仁にキスされてから、あの子とできなくなっちゃって……それで、別れたし」
「そうなの?……え、何で出来なくなったの?」
「……キスしようとすると、仁の顔が浮かぶから。そしたら、他に好きな子出来たのかって、言われて……うまくいかなくなった、かな……」
「――――」
仁は、じっとオレを見つめたまま、黙っていた。
「……仁も言ってたけど、何でキス、本気で拒めなかったかって考えると……」
「――――」
「んー……でもやっぱり、いつからっていうのはほんとに分かんないよ。仁がこっちに来るまで、そんなことは思ってなかったし。でも、あの時も、ドキドキはしてたから……好き、だったのかもしれないかな……って今は、思う……こんな答えで、いい?」
言って、仁を見上げると。
「うん。……良い」
ふわ、と笑った仁に、むぎゅ、と抱き締められる。
仁の肩の辺りに顔がすっぽりはまってしまう感じで。
「オレは、多分、会った時から。……まあ会った時のことは覚えてないけど。彰と離れたくないって泣いたって聞いてるし」
「それはさすがに、違うんじゃ……」
クスクス笑って言う仁に、ふ、と笑ってしまう。
「…そういう対象になったのは中学。でも大好きすぎたのは、ずっとだから」
むぎゅー、と抱き締められる。
「……良かった。彰がオレのことを好きになってくれて」
「――――」
「もうほんとどうしよう。嬉しくてやばい……。明日からずーっと抱き締めてるかも……」
「――――」
……何なんだろう。こんなにすごく嬉しそうな笑顔で言われちゃうと、なんて返したらいいか分からない。。
もう、ドキドキ通り過ぎて、痛いんだけど……。
「このままで、寝ていい?」
「……後ろからって言わなかったっけ……」
「……だって、可愛いし」
……可愛いのは、仁だけど。
……言わないけど。
「……目つむってれば、寝れるよ」
ちゅ、と額にキスされる。
「おやすみ、彰」
「……ん……おやすみ」
おやすみと、言ってからも、しばらくはドキドキしすぎでなかなか眠れなかったけど。
触れ合ったままで、黙ったまま過ごしている間に、うとうとしてきた。
昨日まで眠れてなかったのもあって。
……さっきまでも、めちゃくちゃ、疲れたし。
いつのまにか、仁に抱き締められたままで。
眠りに、落ちていた。
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