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◆Stay with me◆本編「大学生編」
「寛人に報告」
仁と、付き合っていくと決めたあの日。
翌日から大学が始まって、一気に忙しくなった。
毎日、学校とバイトと、それに仁は剣道も行って。
何だか慌ただしく過ごした、その週末の金曜日。
寛人と待ち合わせの店で、スマホを見てると、仁からメッセージ。
『混んでて、今休憩。あと一時間半であがるから、待っててね』
「うん。頑張って」
入れると、OKスタンプが送られてくる。
「彰」
寛人の声が背後からした。
あ、寛人、と笑顔で振り返ると。
「なんか、お前に会うの、ほんの数日ぶりだけど」
寛人は、くす、と笑った。
「吹っ切れた顔、してんな」
「え。……そう、かな?」
「してる。こっちに出て来てから、初めて見るかも」
言いながら、寛人がオレ目の前に座った。
「飲み物、何頼む? ビール?」
「ああ」
店員さんにビールを注文をして、メニューを寛人に渡す。
「寛人の好きに頼んで。――――仁、一時間半くらいでバイト終わるって」
「その前に色々聞いとくか」
クスクス笑う寛人に、苦笑いが浮かぶ。
ビールが運ばれてきて、寛人が料理を数点頼んだ。店員さんが居なくなると。二人でビールを持って。
「はい。じゃあ……恋が実った事に。カンパイ」
「……恥ずかしいんだけど」
オレはそう言いながら、かち、とグラスを合わせた。
「まだオレ、付き合う事になった、しか聞いてねえんだけど」
「だって、電話とか、文字じゃ伝えきれないし」
「……まあとりあえず話してみな? どーやって、まとまったの、お前ら」
そう言われて、んーと、考えてから。
「……オレさ」
「ん」
「最後の最後まで、やっぱり、無理だと思ったんだ。それで、好きだけど無理、て言ったんだ」
「お、最後まで無理って言ったか」
「うん。……でも、そしたら、仁が……」
「ん」
「……オレが、初めてちゃんと好きって言ったって」
「……あいつ、相当ポジティブだな」
くっと、寛人が笑う。
「……兄弟に戻るって、五分以内に言えないなら、もう、仁の側、離れることを諦めろって言われて」
「ん、それで?」
「……そしたらオレ、戻るって、言えなくて」
「――――」
「……兄弟に、戻りたくないって言っちゃって」
「ふうん……」
寛人は面白そうに、瞳を細めて、オレを見つめてくる。
「五分て制限されて、やっと認めたんだな」
「うん。こんなに長いこと考えてきたのに……オレ、結局、あの五分で決めたんだよね……ちょっとバカみたいだよね」
「今まで長い事考えても、結局答えが出なかったって事は、そういうことだって自分で分かったんだろ。考えてきたことは、無駄じゃない」
「――――」
「それに、はっきり無理って仁に言えない時点で、それで本気で何とも思ってないなら、ヤバいからなーお前。もともと好きだから、あんなに迷ってたんだろうし」
「……」
「あとはお前がそれを認めるか認めないかってとこだったけど……良かったな、認められて」
「……うん」
頷くと、寛人はクスクス笑う。ビールを一口飲むと、少し顔を寄せてきた。
「ん? 何?」
「……もう、仁と寝た?」
「………ッ」
かあっと赤くなったオレに、寛人は「あーもう良い」と笑った。
「もう分かったから」
「…………っ」
「まあ。もうあれから何日か経つし、仁が何もしない訳ねえよな。愚問だった」
「…………っ」
「いつしたの?」
「……っっっ…………あの、日」
「ああ。もう、初日?」
「――――っ」
「もしかして、認めてすぐ?」
「――――」
もう俯いたまま、頷くしかできない。
「……まあ、そうだろうな。何年我慢してたんだっつー話だもんな、あいつにとったら」
「……………っ」
「何年だ? そういう欲が出るのが中学前後として……六年越し位か。うわ、やばそうだな……」
……確かに、仁、相当、ヤバい感じで迫ってくるけど……。
そんなのヤバいとか、寛人に、言えないし。
そっか、六年分だから、あんなにヤバいのか……?
寛人の言葉で、少し納得してしまいそうになる。
毎日毎日キスされて、抱き締められて、触れられて。
……もう、熱すぎて、断る事は、叶わない。
「――――でも、よく、吹っ切ったな」
「……え?」
「お前があいつに全部許すとか、ほぼ絶対ぇ無理だと思ってた」
「……そう、だよね……なんでだろ……」
少し笑ってしまう。
何でか良く分からない。
絶対無理だって、最後の時まで、思ってたから。
「……そこで笑えるんだな」
寛人がそう言って、笑う。
「なんかほんと、吹っ切ったんだな?」
「どうだろ。……絶対大丈夫とは、言えないんだけど……」
「弟だから、っていうのは、今はもう悩んでねえの?」
「たまに……少し、思うんだけど……」
「思うんだけど?」
「……もう……最後まで受け入れちゃったから、さ。……ここから誤魔化したって無駄だなって思うから、前みたいには、悩んでない」
そう言ったら、寛人は、ふ、と笑った。
「なるほどな。それでもう初日に最後まで突っ切ったのかなー仁」
「……それは、知らないけど……」
突っ切ったとか、なんかやめて……
苦笑しながら寛人を見上げると。面白そうな顔で、クスクス笑う。
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