【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「寛人と仁」

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 それから、しばらくして、仁がやってきた。

「ごめん、店が混んでて抜けれなくて。遅くなっちゃった」
「お疲れ」

 オレが見上げると、仁はふ、と笑って頷いて、オレの隣に腰かけた。

「片桐さん、こんばんは」
「ああ。……つか……よかったな?」
「……はい。……色々すみませんでした」
「ほんと。二人そろって、色々な?」

 寛人の言葉に、仁と顔を見合わせてしまう。

「ありがとうございました」
 仁が苦笑しながら、寛人に言う。

「うまくいくといいなと思ってたけど……無理かなとも思ってたから。こんな日が来るとはな? 執念だなあ?」

 クスクス笑う寛人に、仁は、そうですね、と笑ってる。

「お前が来る前に、散々ノロケは聞いたから。大体は分かった」
「ノロケ? 何話したの?」

 ちら、と視線を向けられて。 さあ……?と誤魔化してると。
 ふ、と仁が笑う。

「今日はまだそんなに飲んでないんだね、彰」
「うん」

「いいよ、今日は、連れて帰ってあげられるし、飲んでも」
「もう、そんなに酔っぱらいたいって気分じゃないし」

 仁の言葉に、そう答えると。
 寛人がぷ、と笑った。

「だよなあ? 一番の悩み事、消えたんだもんな」

 寛人のセリフに、仁が、え、とオレに目を向けてくる。

「彰が酔っぱらってたの、オレとのことが原因なの?」
「原因って言ったらなんか言葉が悪いていうか……」

「こないだ彰が酔っぱらったのは、あれだもんな? キスされたり抱き締められてたことを思い出して、そんなの考えたくないのに、とか」
「う、わ、 何言ってんの、寛人っ」

 わーわー、と仁の耳を塞ぐ。

 クックッと笑う寛人と。
 耳を塞いでるオレの手を取って、ぷ、と笑ってる仁と。

 オレは真っ赤になって、がっくり、テーブルに突っ伏した。

「そうなんだ。 ていうか、そん時それを言ってくれてたら、二週間もつらい日々送らなくて済んだのにな」

 ふー、と仁がため息をついてる。

「……言える訳ないじゃん。……仁は完全に、弟の顔、してたし」
「……必死でしてたんだけどね、それ」

 クスクス笑ってる仁。


「やっぱり素直に生きないと、だめですよね」
「そーだな」

 仁と寛人が、うんうん言い合ってるのを横目に、はあ、とため息。

「……仲いいね、2人」

 と、ちょっと嫌味で言ったのに。

「結構気が合うんだよなぁ? 仁」
「そう、オレ、もともと彰のことで嫉妬してただけだし」

 なんか二人が仲良いと、敵わない気がして、ちょっとやだな……。
 そんな風に思いながら見ていると、仁はお茶、寛人はビールで、二人で乾杯してる。

「ん、彰」
 クスクス笑いながら、仁がオレにグラスを向ける。

「……お疲れ、仁」
「うん」

 かち、とグラスを合わせると。仁がオレを見て、目を細める。

 なんか。
 ……好きなんだけど。……仁。

 優しい瞳が。
 めいっぱい、好きって、言ってくれてるみたいで。

 すっごく照れる。


「……なんかお前らがいちゃいちゃしてるとこ、こうして見る日が来るとは、ほんとに思ってなかったわ」

 寛人に笑み交じりで、しみじみ言われて。考えてることを見透かされたみたいで、恥ずかしくなる。


「っ……いちゃいちゃ、なんてしてないし」
「そーだよ。こんなのいちゃいちゃに入んないよね、彰?」

「ああ、家ではもっと、いちゃいちゃしてるってことか」

 はは、と笑う寛人に、うん、とか答えてる仁。

「……二人置いて、帰っていい? オレ」

 二人共、ぱ、とオレを見て、面白そうに笑う。

「そういやこっちで仁と初めて会った時、そんな事したよな」
「ですね。彰に出てってもらって……今考えると、相当変ですね」

 ……今考えなくたって、相当変だけどね。
 心の中で言いながら、ほんと楽しそうに話してる二人を見て。


 ま、いっか。
 仁、すごく楽しそうだし。


 結局、そう思って。
 ふ、と笑ってしまう。



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