123 / 130
◆Stay with me◆本編「大学生編」
最終話「側に」
「……彰、明日のバイト午後からだよね?」
「うん、仁も?」
「ん。じゃあ明日午前はゆっくりしよ。あ、買い物は行く?」
「うん」
「早めに行って、のんびりしよ」
「ん」
頷いて、そのまま、仁に抱き締められたまま、目を伏せていたら、ふと思い出した。
「あ、そうだ。塾のバイトどうするか決めてほしいって、真鍋先生から電話来たよ」
「……うん」
腕の中から、髪を撫でられたまま、仁を見上げる。
「どうするか決めた?」
「んー……。カフェ減らして、塾のバイト行こうかと思うんだけど」
「ほんとに?」
「……それでいい?」
「うん。ていうか……それでいいって何で聞くの?」
不思議に思って聞いたら、少し黙った後。
「……それだと、彰にずっと張り付くことになるから」
何だか苦笑いを含んだ声でそんな風に言う、仁の言葉に笑ってしまう。
ゆっくり、仁を見上げた。
「ていうか……それをだめだって、オレが言うと思う?」
仁は答えずに、オレの顔を、ただじっと見つめている。
「もう一生、張り付いててくれていいよ?」
「……ん」
やっと嬉しそうに微笑んだ仁が、ゆっくり顔を近づけて、キスしてくる。
「……そういうこと言っちゃうと……オレ、ほんとに張り付くよ」
笑み交じりの言葉に、何だか可笑しくなって。
「……よく考えたら、張り付くって表現、おかしいけど」
クスクス笑いながら、仁を見上げて、オレはその頬に手を触れさせた。
「オレ……もうずっと、仁と一緒に居るつもりだから」
「――――」
不意に、腕が回ってきて、ぎゅうと抱き締められる。
「……大好きだよ、彰……」
噛みしめるみたいに囁く声に、瞳を伏せる。
仁の背中に腕を回して、そっと抱き付いてから。
「……学校は一緒に居れないから、塾のバイトで一緒に居れるのは嬉しいし……少し違う仁も見れるし。講義とかが嫌じゃなければ、続けてくれたら嬉しい……」
「……ん、分かった。続ける。明日電話しとくから、彰からもよろしく言っといて?」
「うん。……次はマイク持って、講義もさせられると思うけど。平気?」
「つか、オレ、元生徒会長だよ? ……何百人の前で喋ってたからね。全然平気」
「あ、そっか。そうなんだよね。……オレ、それ見てないんだよね」
何気なくそう言ったら。
「まあ元々、卒業してたから見れないけどさ。……家にも居なかったもんね?」
「……ごめんって」
ちょっと恨めし気に言われて、仁を見上げて思わず謝ったら。
仁は、瞳を優しく緩ませた。
「……ちょっと言ってみただけ。謝んないで」
「ん……」
ごめんね、と、ちゅ、と頬にキスされる。
「……生徒会長の仁、カッコよかっただろうなー……モテたでしょ」
「んー? ああ…… まあ。すげーモテたけど」
「……ちょっとは謙遜したら」
言うと、仁は可笑しそうに笑う。
「まあ、和己からも、仁がすごいモテてるって報告きてたけど」
「何の報告だよ。いらないなー……」
クスクス笑いながら、仁はオレを抱き締めた。
「誰にモテたって関係ないし。オレ、今ここに居るんだから、そういうことだよ」
「わー……なんかすごいセリフだな」
言いながら、仁を見上げると。
「だってそうだもん」
と、なんだかちょっと可愛い言い方で、笑う。
「……ずっと彰のことしか、考えてなかったよ。忘れようとしてた時期もあったけど、結局、忘れようとしてるってことはその時点で既に考えてるってことなんだよなって……なんかそんなことを思ってた」
「――――」
オレは、じっと仁を見つめていたけれど。
何とも言えない気持ちになって。
ゆっくりゆっくり、仁に、キスした。
「……もう忘れようとしなくていいから。オレもしないから」
オレがそう言うと、仁がすごく嬉しそうに頷く。
「……ていうか、もうオレは、彰と一緒に何しようかなーどこ行こうかなーとか、それしか考えてないけどね」
嬉しそうに言う仁に、そうなんだ、と笑いながら。
「うん。もうずっと一緒にいようね……」
そう言うと。
「そんなの当たり前」
と言った仁に、抱き締められる。
「……もう、絶対離さないし、側にいる」
仁が、まるで誓いの言葉みたいに、はっきりと告げてくれる。
幸せな感覚でいっぱいで。
仁に、キスされて、瞳を閉じた。
◇ ◇ ◇ ◇
週末。
――――今、オレと仁は、実家の門の前。
「……めちゃくちゃ、ドキドキ、する」
「うん」
「やっぱり、ちょっと待って」
「……うん」
ぷ、と仁が笑いながらオレを見つめる。
「何で仁は平気なの……」
「オレはもう、修羅場乗り越えてるし。和己には父さんから話してくれて、分かってくれてるみたいだし……てなったら、オレがするのは、幸せな事後報告みたいなもんだから」
仁はクスクス笑いながら、そんな風に言う。
オレ達は……というか、オレは、実家のチャイムを鳴らせず、立ち止まっている。
もう五分位は、経ったかな……。
ここに来る前も、駅前の喫茶店で、一時間位の時間を潰して、覚悟してきたのだけれど。
「いいよ、待ってるから」
仁はクスクス笑いながら、門の先の家を見上げてる。
……覚悟は散々してきた。
仁とそうなった時点で、覚悟はした。
……そしたらもう仁が父さんと母さんに伝え済みと聞いて、驚いたけど。
よく考えたら、もう、許可をもらってくれていた訳で、オレはかなり楽だと思うのに、家に入る勇気がなかなか出ない。
「……仁、ごめん」
「いいよ。分かるし。オレも、言うって決めてから、実際言うまでは、結構日数かかった」
「……覚悟してない訳じゃないんだけど」
「それも分かってる。謝んなくて大丈夫だよ、彰」
優しい言葉に、胸の奥が、きゅ、と疼く。
オレは、拳を握り締めた。
「――――ん。行く」
「え。もう? いいの?」
逆に驚かれた。
「覚悟、できた」
「……そっか」
めちゃくちゃ嬉しそうに笑う仁に、キスしたい衝動に駆られるけど。
……そんなこと、言ってる場合じゃない。
こんなにドキドキして実家のチャイムに触れることなんか、もう今後二度とないだろうなと思いながら、ボタンを押した。
インターホンに出てこない。家に居る筈なのに。……そう思った瞬間。
不意に、玄関のドアが開いたので、そっちに視線を向けた。
父さんと母さんと、和己も見える。
めちゃくちゃ、笑顔の三人を見たら。
泣きそうになってしまった。
「まだ泣くの早いよ、彰」
オレを振り返った仁が、オレのことを、愛おしそうに。
本当にそうとしか見えない位、愛おしそうに、見つめてくる。
「……嬉しいだけ」
オレが言うと、ますます優しく緩む、仁の瞳。
愛しさでいっぱいになりながら。
オレは、家に向かって、歩き出した。
-Fin-
◇ ◇ ◇ ◇
ここまでお読み頂きありがとうございました。
良かったら感想などお聞かせいただけたら嬉しいです♡
いつか番外編も書きたいなと思っています(*´艸`*)✨
2024/11/10 少しだけ番外編。
今のところエブリスタがまだ三人称の書き方のままで残ってるのですが、そこで書いてた続きを、一人称に直して加筆して載せますね(´∀`*)。
あなたにおすすめの小説
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。