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◆番外編◆
「胸のど真ん中」
しおりを挟む「どんだけ長いこと、彰を好きだったと思ってンの」
ぎゅうううう、と、抱き締められる。
すっぽり腕の中にはまると、もう――幸せすぎて、困る。
「――ん?……って、オレも、大丈夫だけど?」
そう言うと。
「でも彰は、男に迫られたら危険だから、心配」
「――仁じゃなかったら、ちゃんと戦うから平気だよ」
「……戦うんだ。そっか」
クスクス笑う仁の揺れが、体に伝わってくる。
ふ、と笑みが漏れて。オレは、仁の背中に手をまわして、抱きつくと、ちゅ、とキスされた。
ふふ、と笑ってキスを受けて、すぐ離れるかなと思っていたら、どんどん深くなっていく。
「――ん、……ぅ……?」
背中を壁につかされて、上向かされる。
どんどん激しくなるキスに、一度顔を引いた。
「――仁……待って」
「……ん?」
「買ってきたもの、しまいたい」
「……んん」
不満げな顔に笑ってしまう。
「あと……どこまで、する、気?」
「――」
「…………なんか、キスが……めちゃくちゃ本気、なんだけど」
そう言って見上げると、仁は少し黙って、それから、ニヤと笑う。
「いけるとこまでいこうかなと」
「……無理。この後、バイトだからね、オレ」
「まだ少し時間あるし」
抱き締めようと手を伸ばしてくる仁に、無理、と胸に手をつく。
「最後までとか、絶対無理」
「――」
むー、と仁が少し膨らんでる。
……可愛いけど絶対、ダメだ。
心の中で、許してしまいそうな自分と戦いながら、オレは仁を見上げた。
「ダメ」
「――」
後頭部に手が回ってきて、ぐい、と引き寄せられた。
「――っ……ん……」
重なった唇の間から、舌が入ってきて。
舌を絡められて、んん、と声が漏れる。
ダメだってば、と思うのに。
薄く開けた瞳に映る、仁の伏せた瞳に、どき、として。
抵抗は、出来ない。
「――ん、……ふっ……」
舌が上あごをなぞる。ゾクゾクして、息が、どんどん、上がっていく。
「……ん、ぅ……っ……」
涙で、視界が滲んで。思わず、仁の首に手をまわして、ぎゅ、と抱きついてしまう。
「――」
ああ、もう。無理だ。
…………仁が好きすぎる……。
めちゃくちゃキスされてから。
ゆっくりゆっくり、唇が、離れた。
でもまた、重なって、今度は触れるだけ。
「……彰……すげー好き」
触れたまま、囁かれる。
胸のど真ん中が。
痛い。
「――うん……」
頷いて、仁を見つめる。オレの涙に気づいた仁が少し笑いながら、指で涙をふき取る。
「もー……可愛いなあ……」
ちゅ、と瞼にキスされて、それから頬にもキスされる。
「ごめんね。今はキスで、我慢するから……」
「――これで?……」
「ん? 何?」
オレの言葉が聞き取れなかったみたいで、聞き返してくる仁を見上げる。
「……何を我慢したの……?」
そう言いなおすと、仁は、クスクス笑った。
「ベッド連れてくのは、我慢した。偉いでしょ?」
「――」
……もう何言ってるんだろう、と思うのだけれど。
――だめだ、そんな風に嬉しそうに笑われると。
どうしても、可愛い。
「……えらい」
よしよし、と手を伸ばして、仁の頭を撫でると。
え、と仁が固まる。
マジマジ見つめられて。
「うわー。……なんかそれ……」
軽く握った右手を口元に持っていって、少し口ごもり。
「……照れるね」
なんて言って、ほんとに照れてるっぽい仁は。
――駄目だ、なんか、本当に、可愛い。
さっきまで、あんな激しいキス、してきてたくせに、何なんだ、もう。
結局「我慢」してくれたらしい仁と、買い物してきたものを片付けた。
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