【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

星井 悠里

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◆番外編◆

「色っぽすぎな?」

 仁と別れて塾に来て、諸々授業の準備をしていると――なんだか頭の中は、反省タイムになってしまった。
 ……ひたすらイチャつきながら、半日、過ごしてしまった気がする。 

 誰にも見られてないからいいかなあとは思うのだけれど、あまりに好きすぎて。
 なんだか冷静になって思い起こすと、すごく恥ずかしい気がして、オレはため息をついた。


「……色っぽすぎなため息ですね?」
 不意に、さゆり先生に言われた。

「え?」
 色っぽすぎ??
 オレが言葉を失っていると、さゆり先生はクスクス笑った。

「ね、彰先生」
「……はい?」

「直球で聞きますけど……恋人、出来ましたよね?」
「……どうしてですか?」

 内心ドキドキが止まらないのだけれど、顔はポーカーフェイスに努めながら、理由を知りたくて、聞いてみると。

「だって、なんかすごくウキウキしてるし。ニコニコしてるし。かと思えば、今みたいな、なんか色っぽいため息、ついてるので、そうかなあと」

 ……怖い。すごい鋭い。
 というか……さゆり先生が鋭いのか、オレが、駄々洩れすぎているのか、どっちなんだろう。

「少し前までは、悩んでるっぽかったので、ご飯お誘いするのもやめてたんですけど」
「――」

 それもバレてたんだ……。どうりで。最近声がかからないなと思ってた。
 オレが内心恐々としながら、さゆり先生を見つめていると、クスクスと笑い出した。

「バレバレですよ? 彰先生、案外分かりやすいんだなーって思って」

 クスクス笑われて、ますますドキドキが高まる。
 まさか、相手までは、分からないと思うのだけど……大丈夫だよね?

 心の中でオレが言った瞬間。

「相手はどんな人ですか?」

 そう言われて、バレてはいないみたいだとホッとする。

 するけど、聞かれてる内に顔に出てバレそうで怖い……。

 そんな風に思っていると、「彰先生」と真鍋先生に呼ばれた。
 もっと話してたかったのにーという雰囲気のさゆり先生に、行ってきますねと告げつつ、心底助かったと思いながら、真鍋先生のもとに早足でたどり着いた。

「彰先生、仁先生なんですけど。臨時じゃない形で、手紙に載せさせて貰いたいので、次来るときに、200文字くらいで挨拶文を書いてきてほしいと伝えてもらえますか?」
「あ、分かりました。次のシフトから、もう一つのバイトの方を曜日固定にして減らしてもらうみたいです」
「了解しました」

 ホッとした感じの口調に、オレが少し首を傾げると。

「学校が少し落ち着くまで休みますって連絡が来た時はね、もうこのままやめちゃうのか、と思ったんですよね」

 ――春期講習が終わって、仁としばらく顔もあわせないで過ごしてた時だな……。

「こないだ電話で話した時は、もう全然声が違ったので。良かったです。すごく人気があったので続けてほしかったんですけど、講義とか苦手な人も居ますからねぇ」

 真鍋先生の笑顔に、この人も鋭いなと思いながら、オレはにっこり笑い返した。

「講義が大丈夫ならって話した時、何百人の前で喋ってたと思ってんの? て言われました」
「人前で話してたんですか?」
「高校で生徒会長やってたんです。かなりのマンモス校だったので」
「あぁ、なるほど。それは心強いですね」

 ふ、と笑って頷きながら、真鍋先生は封筒を渡してくる。

「簡単なサポートのアルバイトじゃない、本契約の書類です。書いてもらって下さい」
「分かりました」

 受け取って、席に戻る。
 
 ……これを仁に渡して、提出したら。
 ここでもずっと一緒に居られるんだな、なんて思って。

 ……なんだか口元が綻びそうになる。

 辞めちゃうと思った、という真鍋先生の感覚は、あの時では合ってたんだろうけど……良かった。
 あそこから、関係、戻せて。

 ……ほんとに、仁が全部、頑張ってくれたからだけど。

 仁と少し前までここで働いていた時は、楽しかったけど、切ない気持ちの方が強かった。


 今度戻ってきたらきっと、楽しい気持ちの方が強いんだろうなと思うと。すごく嬉しい。
 スマホを手に取って、仁に送る。


『サポートとしてじゃなくて、講師としての契約書、貰ったよ。持って帰るね』


 そう入れて、最後にニコニコなマークを入れると、ふ、と顔がほころんだ。




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