【愛じゃねえの?】~社会人*嫌いだったはずの先輩に恋する理由。攻めの後輩視点

星井 悠里

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◇次のため

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 2人で、ある神社の庭を歩く。

「ここ穴場なんですかね。人、居ないですね」
「そーだね、静かで良いとこ……」

 砂利を踏んだ感じが心地よくて、下を見ながら歩いていたのだけれど。
 先輩がオレを見て、クスクス笑っている事に気付いた。

「何ですか?」
「楽しそうに歩いてるから。ちょっと笑っちゃった」

「……だって楽しいんですよ。先輩とこうしてるの」
「――――……はは」

 素直に言ったら、驚いた顔をして。それから、くす、と笑う。


「ん。楽しーよな……」

 そう言った後。オレを見て、先輩がふ、と微笑んだ。


「スーツ着てる三上がさ、オレに笑ってるのが――――……なんか不思議」
「それ言ったら、オレの方がもっと、不思議ですけどね」

 即座に言い返すと、先輩はまた、ぷぷっと笑った。


「勢いすご」
「つか――――……どう考えたって、オレの方が不思議ですよね」

「まあ……そうだよね……」

 少しの間無言で、砂利を踏む音の中、ゆっくりと歩く。


「なあ、三上」
「はい」


「……志樹に――――……話す?」


 何を、とか、言うまでも無く。
 密かにずっと考えていた事だったから、思わず固まる。


「……兄貴に会った瞬間にバレそうな気がしますけど……」

 そう言うと、先輩は、確かに、と苦笑い。

「何か悟られるのはそうだと思うけど――――……詳しくはさ、言わない限りバレないじゃん?」
「まあ、そうですね」

「……聞かれたらどうしようか?」
「――――……」


「なんか、聞かれそうな気がするんだよね。ほんと、すぐバレそうで」


 思い切り苦笑いで、オレを見上げてくる。


「帰りまでに考えといて?」

 そう言われて、頷く。


 確かに、何かはバレそう。
 ――――……でも。隠して、白を切ることもできなくはない。

 そこは、オレ達がこれからどうするか、な気がするなー。
 

 このままこの関係、続けていいなら。
 兄貴に隠し続けるのは無理だと思うけど。

 ……今回限りで、元に戻るなら、敢えて兄貴に話す事は無いと思う。


 ――――……だから。
 それ次第、だな。
 
 

 結局またそこに戻った思考にため息を軽くついていると。


「痛て……」

 先輩が急にそう言った。
 思わず漏れた、と言う感じ。

「……ん? 痛いって言いました?」
「いや……なんでもない」

「言いましたよね、痛いって。 休みますか?」

 聞くと、先輩は首を振る。


「ごめん、砂利がさー歩きづらくて……気にしないで」
「どこが痛いんですか?」

 心配して聞いてるのに。
 先輩はぷるぷる首を振って、教えてくれない。


「先輩?」
「――――……だから、大丈夫。一瞬痛くて、咄嗟に声が出ちゃっただけだってば」

 すごく嫌そう。
 なんだろ、と首を傾げてる。


「……ああもう……」
「?」

「……股関節が、なんか痛いんだよ。筋肉痛みたいな」
「股関節?」

 何で? と思った瞬間。
 ……ああ、昨日――――……めっちゃ脚、開かせすぎた?

 …………て、そういうこと?
 と、先輩を見ると。

 オレの視線に、先輩は一気に赤くなった。


「もう追及すんなよっ」

 ぷ、と笑って。

「ストレッチしてくださいね」

 そう言うと。他人事だと思って……と、先輩がブツブツ怒ってる。

「…今からストレッチしたって、なおんねーし」

 そんな風に言いながら、先輩はむー、と、オレを見上げる。


「……それとも。次のためにストレッチしとけってこと?」
「――――……」


 なんか、むっとしたまま言うので。
 心の中はよく分からない。
 どんなつもりで、聞いてるんだか。


「……次のためって言ったら、してくれますか?」

 オレが、試すようにそう聞いたら。


「――――……うん。いいよ?」


 ムッとしてた顔を解いて、ぷ、と笑って、先輩は頷いた。

 あーもう。
 ……何でこの人は。こんな感じなんだろ。


 ――――……恥ずかしがるくせに。
 たまに、ぽろっと簡単に受け入れたり。

 ちゃんと考えて答えてほしいんだけどな。ほんとに。
 考えてんのかな、ほんと。それ、どーいう意味か。



 クスクス笑ってる先輩を、じっとりと、見下ろしてしまう。

 





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