「嫌いな君に、恋をした僕」

星井 悠里

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1.大嫌いだ

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 僕は、あいつが大嫌いだ。

 自分には無いものを持ってる人間に憧れるか嫌悪するかは紙一重。
 僕は、大嫌い、一択みたいだ。

 ここは、平和な国ソルロス。穏やかな気候、自然も豊かだ。
 民意に沿った王家の統治。何年も前に終わった戦争の影響はもうほとんどない。自由に貿易をしたり、商売をして皆暮らしている。

 そんな中、割と身分の高い者が集まるこの学園は、国の中でも名門として有名で、十八歳から二十歳までの学生が寮生活をしている。ここでは、勉強や基本の魔法、剣技だけでなく、礼儀作法、リーダーシップや品格などを身につける教育が行われている。様々な教科があり、定期的にテストがあって、順位がそのつど貼りだされる。

 ――僕には、同学年に、どうしても勝てない奴がいる。

 カイン・ロッシュは、上級貴族の息子。
 彫刻みたいって皆が言う、整った顔に、プラチナブランドの髪は、それだけでも人の目を引き付ける。濃い青の瞳も、近くで見るとムカつく位綺麗、だし――皆が惚れる外見、声、人望。
 成績もずっとトップで、運動もできるし、剣技もすごい。魔法の授業でも気難しい先生にまで褒められてる。

 もう、大嫌い。見るだけでムカムカする。――嫉妬、なのも分かってる。でも嫌い。

 僕は、運動は苦手だから、やる前から勝てないの、分かってる。
 剣技も、無理。頑張っても、無理なものは無理。

 魔法も、僕は魔力が低すぎて無理。

 人望なんて、ただ歩くだけで人に声を掛けられまくる、あんな奴に勝てる奴は居ない。

 勉強なら、努力すればどうにかならないだろうかと、遊ぶこともなくひたすら勉強してるのに、僕は二位。どうしても勝てない。
 何で勝てないんだろう。

 記憶力とか理解力とか、そういうのは悪くないと思うし。こんなに、時間をかけて、勉強してるのに。どうして、勝てないんだろう。


 
 皆があいつに憧れる。 容姿や家柄などに自信のある奴は、交際を申し込んでる。同学年だけじゃなくて、後輩も先輩も。もう入学以来、何人振ったんだか。
 皆にモテて当然だと思ってるんだろうな。誰にも本気にならないのに、バカみたいだ、皆。
 もうほんとにほんとに、大嫌い。

 
「なあ、シュリ」

 廊下ですれ違いざま。大嫌いな大嫌いなカインは、僕の肩に手を置いて、「今日、部屋に行くから」と囁いてきた。

 振り返った時はもう、学園のモテる優秀グループの奴らに囲まれて、離れていく後ろ姿が見えるだけ。

 囁かれた側の耳に、手で、そっと触れる。

 囁かれた声がなんだか余韻みたいに、耳に残ってる。
 大大大嫌いだ、と。ごし、と耳を擦った。

 
 

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