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11.視線
しおりを挟む――とりあえず折り返し地点まで行って戻ってくればまた水、飲めるし。がんばろ。
やっぱり戻って飲めば良かったな、と思いながら走るけど。
……なんかちょっとくらくらする。
前方から、カインが居る先頭集団が折り返しで走ってくるのが見えた。あっという間に近寄ってきて、速いスピードで、すれ違う。
うわー。もう戻ってきたんだ。しかもすっごく速い。
……僕もここらで、折り返したい気分……なんて思っていたら。「シュリ?」と呼ばれて、腕を引かれた。すれ違って走っていったはずのカインが何故かそこに居た。
「……?」
振り返ると、カインが一緒に走ってきた人たちは、そのまま先へと走っていく。何人かカインに気づいて、振り返ったけど。
「悪い、先に行ってて」
そうカインが伝えてる。渋々といった表情で、その人達が走り去っていくと、カインは僕の腕を掴んだ。
「え、何……?」
「シュリ、ちょっとこっち来て」
言いながら半ば強引に連れていかれたのは、脇の木陰。
「顔が真っ赤。水を貰ってくるから、ちょっと休んでて」
「何、言って……大、丈夫だし」
「駄目。すぐ来るから、じっとしてて」
「――」
何なんだ、もう――。
ほぼ無理無理、木陰に座らされて、かと思ったら、カインは走り去っていってしまった。
水とってくるって……。
別に僕、今から折り返しまで走って、戻ってきたところにあるお水、飲むからいいのに。
――。
カイン達の先頭のグループに大分遅れて、また色んな人たちが、走り去っていく。
僕に気づいて、ちらっと見ていく人はいるけど、特に止まる訳ではない。
そりゃそうだよな。
……これの結果も、成績の一部になるわけだし。
普通は、立ち止まったり、しない。
――なんか。めちゃくちゃ、光が、眩しいなあ……。世界が、白く見えるような……。
こんな暑い日に、こんなことしなくてもいいのに……って二回目だなぁ……。
何だかやたら瞼が重い。
そう思ったのが、最後だった。
――ん??
どこ。なんか白いな。目を開けてしばらく考える。
部屋じゃないし。
白いし、クリーム色のカーテンでベッドの周りを囲われているし。
静かだし。
あ、でも、なんか、カチャカチャ、という、食器?の音がするような。
あ――保健室、かな。もしかして、僕、意識なくなったとか……?
ゆっくり体を起こしたら、ギシ、とベッドが鳴った。
「シュリくん、目が覚めた?」
そんな声とともに、カーテンが開いた。やっぱり、保健室の先生だった。
「……あの、僕って」
「走ってる間に意識が無くなっちゃったみたい。寝不足だったでしょ? 顔も真っ赤だったし。冷やして、お水をなんとか少しずつ飲ませてやっと熱が引いたけど――隈もすごいし。駄目よ、体調悪い時は、無理して走っちゃ」
「――すみません……あの、僕って、ここまでどうやって帰って来たんですか……?」
「カインくんがおんぶしてきたわよ。ついさっきまでここに居て、ずっと水差しで少しずつお水をあげてくれてたの。お礼言ってね」
「――」
……なんてことだろう。もう。すごい迷惑を掛けてしまった――カイン、ちゃんとゴールできてないのかな。あんなに速かったのに。
「今は、給食の時間で、呼ばれて行ったけど、心配そうだったわよ――あ、そうそう、シュリ君の給食もここに来てるから。食べられそう?」
「あ――はい」
食べないと。倒れるとか、困るし。
立ち上がるとちょっとくらくらするけど、先生が用意してくれた机に座って、なんとか食事を食べた。
おんぶされて、ここまでって……他の人たちも、見ていたのかな。
うう。すごく嫌だな。みっともないし。……カインに、迷惑を掛けてしまった。借りも、作りたくないのに。
半分くらいは食べ終わったところで、授業開始のチャイムが鳴った。
「授業に戻れそう? 担任の先生もさっき来て、無理しなくていいとは言ってたから。もうこのまま寮に戻ってもいいけど」
「――いえ、出ます」
今日の授業は出ないと。――苦手科目だし。
先生にお礼を言って、保健室を出る。ゆっくり教室に向かって歩くけれど、なんだか足が重い。
ああなんか、ほんと……情けないなあ。
こんなの父さんに連絡がいったら、一発で、もう学校なんかいいから、働けって、言われそう。ため息が零れる。
教室に入ると、皆が僕を振り返った。
「――?」
なんかいつもなら、スルーされると思うのに、なんだか、変に視線を感じる。なんだろ……?
入口で足を止めた僕に、先生が気づいて話しかける。
「あぁ、シュリ君、具合はどうだ?」
「大丈夫です。遅れてすみません……」
そう言って、席に座る。
――その間も、なんだか視線を感じる。
何だろ。意識不明とか言っても、走ってて倒れただけだし、そんなに見られることじゃないような気もするのだけれど。
授業が再開すると、視線は感じなくなったので、そのまま、考えるのをやめて、勉強に集中することにした。
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