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第2話
「んなこと言っても、約束してんのに行かなかったら……」
そこまで言って、翼はふと口をつぐんで、少しの間、黙った。
「……あー……ちょっと待って。つか。これ面白いかも……」
「え? 何?」
何が面白いんだよ。
もうほんと。双子って言ったって、性格は全然違う。
翼は、いつも自由だ。
ほんの少ししか生まれ時間が違わないのに、なんとなく兄として生きてきたオレは、大分まじめで、翼みたいに自由には居られない。
こんな時に、面白いとか言えてしまう、心の余裕みたいなのが、ほんと羨ましい。
「……ワクワクしてきた。どーにか動くかも……なあ、翔?」
「なに?」
翼の言うこと、意味が分からない。ワクワクって……。
「なあ、翔。オレの顔で涼真んとこ行ってよ」
「……お前、涼真と何の約束なの? こんな時に行かなきゃいけないような用事なの?」
「行けば分かる」
「ゲームするとかなら、もう、また別の日にしてもらえよ、頭痛いとか、言えばいいじゃん」
「無理。大事な用事なの」
言い切られて、一旦口ごもり、オレは首を傾げる。
「……でも、オレ、しばらく涼真と会ってねえもん。分かんない話されても、無理だよ。大事な用なら、なおさら、違う日にした方がいいよ」
「話するっつーか……大丈夫。行って、全部涼真に任せればいいから」
「任せる?」
「そう。涼真の言う通りにしてればいいから」
「何を?」
「だから、行けば分かるから。お願い、行ってきてよ、兄貴」
……兄貴。
いつもは翔って呼ぶくせに、こんな時に限って、そんな風に呼んでくる。
ずるいなー、もう。
そして、オレは、ずるいの分かってるのに、翼を、無下に出来ない。
「つかもう……どうなっても知らないからな」
「んー。うん。まあ。多分平気」
もーなにが平気なんだよ。さっぱり分かんない。
「……とりあえず行って、話してくればいい? 分かんない話になったら、頭痛いって言って、戻っていい?」
「ん。まあ。任せる」
「じゃあいいよ。一回行ってくる。そのかわり、翼、この事態がどうにかなるまでは、家にいてよ?」
「ん。分かったって」
頷いてる翼に、ため息をつきながら、オレは玄関に向かう。靴を履いてるオレに、翼が、やけに静かな声で「翔」と呼んだ。
「ん?」
靴を履き終えて振り返ると、じっと見つめられる。
「オレと涼真の関係、絶対壊さないでよ?」
「……??」
「分かった?」
「……どういう意味?」
「涼真の言う事聞いてれば、楽しく用事も終わるから」
「……全然分かんないんだけど」
――――昔は、オレと涼真の方が仲良しだったのに。
中学の途中から、涼真がオレから距離を置くようになった。そして、高校が離れて、全然遊ばなくなった。
オレは、彼女が出来て、そっちと会うのに忙しくなった。
そしたら、ここ二カ月位からかな。
ふと気付いたら翼が、涼真の所に通うようになっていた。急に仲良くなったみたいで。なんか疎外感。
涼真と昔はよく一緒に居たのになと、切ない気もするけれど。
成長って、そういうことだと納得するしかなかった。
いつまでも隣同士だからって、仲良く居られるとは限らないし。そもそも、涼真が、オレと距離を置いたんだし。
「なあ、翔、聞いてる?」
「……あ、うん。聞いてるよ」
「今、翔が入ってるのはオレの体だから! そこ忘れんなよ? オレに何があっても、翔には関係ないんだからさ」
「……全然、意味わかんない」
ほんと意味が分からない。
分からないオレがいけないのか?
「まあまあ、いいから。翔、行ってきて」
「もう、ほんとに話あわなくてバレそうだったら、帰ってくるからな」
「だから。オレと涼真の、築いてきた関係、壊さないでよ。いい?」
「…………」
何だよそれ。
築いてきた関係って。
……お前ばっかり、涼真と仲良しみたいな。
…………なんかムカつくけど。
「あ、翔、スマホ貸して」
「ん」
「暗証番号は? 前のまま?」
「うん」
翼は何を考えてるのか、オレのスマホから、自分のスマホに電話をかけた。自分で電話を受けて、その繋がった状態で、玄関の棚に置いてあった小さな鞄にオレのスマホをしまった。
「なに、このままつなげとくの?」
「そう。入ったら、涼真の机にこの鞄、置いて」
「盗聴みたいで、いやなんだけど」
「――――オレが本来する会話を、オレが聞くだけじゃん。それに今度涼真と会う時、話が合わないと、嫌だし」
「ああ……そういうことか……」
「だから、盗聴ではないでしょ?」
「……まあ、そうか。……非常事態だもんね。分かった。じゃあこのまま繋いどく」
「ん。翔」
「うん?」
「何があっても、オレは、全部納得済み」
「……は?」
「オレ涼真、大好きだからな。絶対、大事にしてきて」
「――――」
何それ。大好きって。
――――大事にって。
……オレの方が。仲良かったのに。
――――いつから、そんなに、仲良くなった訳。
ああ、なんか
むかつくな。
翼に対して、こんな事思うの、珍しい。
――――オレはため息をこらえながら、翼と繋がったままのスマホが入った鞄を手に、隣の涼真の家に向かった。
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