「王子と恋する物語」-婚約解消されて一夜限りと甘えた彼と、再会しました-✨奨励賞受賞✨

星井 悠里

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第2章「振られた翌日の、悪夢みたいな」

38.マジメ

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 何て言ったら良いんだろ。
 私が困っていたら、マスターが、琉生、と呼んだ。
 
「お客が増えてくるから、着替えてこいよ。じゃないとそのまま働かせるぞ」
 
 笑いながら言うマスターに、「あー。着替えてきます」と答えて。
 琉生が私にニッコリ笑う。
 
「着替えてくるね。見てもらうのが一番早いと思ってこれ着ただけだから」
 
 うん、と、頷く。
 
「あ、あと――ちゃんとオレが作ったお酒。飲んでほしくて。それ飲んで、待ってて?」
「――」
 
 もう一度、頷いたら、ふ、と笑って、琉生は、またさっきのドアに消えて行った。
 
 なんか……琉生って、絶対、すごいモテるだろうなあ。顔だけじゃなくて。なんだか。色々。
 ほんとに落ち着こう。年下の、あんな王子さまみたいな子に、ほいほいのってちゃダメだよ。
 後輩の教師なんだし。指導しなきゃいけないんだし。
 
 ほんと、おちついて私。
 いや、まだ大丈夫。うん。 落ち着いて、る、よね……??
 自分に言い聞かせるみたいに考えて、琉生が作ってくれたお酒を飲む。
 
 おいしいな。
 
 琉生と。
 一体いつどこで会ったんだろう。
 
 私は覚えてないのに。
 忘れられなかったって、何かなあ……?? 
 
「どうぞ。サービスです。夕飯まだですよね?」
 
 目の前に、なんだかとっても美味しそうなピザが置かれた。
 顔を上げると、マスターが、見た事ないような、笑顔。
 
「良いんですか?」
「どうぞ。琉生と食べてください」
 
 クスクス笑うマスターに、ありがとうございます、と言うと。
 
「琉生、見た目あれですけど。……マジメなので」
「――」
「というか、マジメすぎな感じ。あの黒ずくめな感じも、モテるの面倒だからって自分でしてたんですよ。モテて良い気になりたい奴だったら、あんなことしません」
 
 クスクス笑って、マスターが私を見る。
 
「むしろ、店としては琉生目当てのお客が欲しかったので、外せって言ってたんですけどね」
 
 笑って見せるマスターに、私もクスッと笑ってしまった。
 その時ドアが開いて、琉生が戻ってきた。私のところにいるマスターに気づくと、少し眉を寄せた。
 
「……先輩?」
「ピザ、サービスな?」
「ありがとうございます……ていうか、何話してました?」
 
「やましいことあんの?」
「いや……無いですけど」
 
「じゃあいいじゃんか」
「……無いけど、なんか余計なこと言いそうなんで」
 
「心外だなー。言ってないって、余計なことなんて」
 
 ニヤニヤ笑うマスターにまた少し眉を寄せて、それから小さくため息をつきつつ、琉生がカウンターからこちら側に出てきた。
 
 


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