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第2章「振られた翌日の、悪夢みたいな」
51.ひとつの言葉。
しおりを挟む自分を落ち着かせて、何て返そうか考えている時。
続けて、ぽん、と入ってきたメッセージは。
『でも仕事モードの時はちゃんとします。中川先生。明日もよろしくお願いします』
それを、じっと見つめる。
敬語と、中川先生。……うん、これが普通だよね。そう思うのだけれど。少しよそよそしく感じるとか。いやいや、それでいいんだよ。と思うのに何だか、少し寂しいというか。
だめだー私……頭の中、ぐちゃぐちゃだよ……。
一度、深呼吸。
うん。そうだ。とりあえず、仕事で一緒なんだから、ちゃんとしないと。そうだ。妙に浮かれてる場合じゃないんだから。
清水先生。明日からよろしくお願いします。
そう打ってる途中で、不意に、電話が鳴り始めた。清水先生の名前が表示されている。
え、あれ? 電話? 焦って思わず、出てしまった。
「も……しもし……?」
『琴葉?』
ふわ、と笑う、少し遠慮がちな声。
『ごめん。なんか嬉しくて、でもあんまり浮かれてちゃダメかなと思って、中川先生って入れてみたんだけど……』
「――?」
『なんか自分から離れたみたいな気がして、入れなきゃよかった気がして。……でも、文字で書くより、電話で話した方が早いかなと思って。電話しないって言ったのに、ごめんね』
「……全然。いいよ」
それを、同じように、よそよそしく感じて。
それが当たり前なんだと思いこもうとしながらも、勝手に動揺してた、とは……言えない。
『もう、寝る準備できた?』
「……うん、できたよ」
『じゃあ、ゆっくり休んでね。また、明日』
優しすぎな位、優しい声。
私、昨日のこの時間は、この人と抱き合っていて。今朝は、職場で会って死ぬほど驚いて。一緒に飲みに行ったら、ずっと居た店員さんで。さらに、教育実習の時の生徒で……。
「うん、あの……」
『ん?』
それで……好きとか。
…………言われて。
「昨日も、今日も、びっくりすること、ばっかりで……」
『ああ……うん。そうだよね』
びっくりすることばっかりだったけど。
でも今一人になって思うのは。琉生に言いたいなと浮かんでくるのは、ひとつの言葉だけで。
「でも、色々……ありがとう」
『――』
……あれ?
返事、無い……。
「……聞こえてる?」
『うん。……琴葉』
「うん?」
『オレ、琴葉が、好きだよ』
「――」
『学校では、ちゃんとする。早く一人前になりたいから。でもオレ、琴葉が好きだから』
「…………」
『オレの言ってること、すぐ全部信じるのは無理かもしれないけど……オレ、ほんとに好きだから……好きになってもらえるように、頑張るつもりだから。……まず信じてもらえるように、かな』
「……あの……」
なんて言ったらいいのか分からなくて、それきり言葉が出てこない。
数秒、黙っていたら。
『まだ答えなくていいから。考えてくれなくていいし、悩まなくていいよ。答えもいらない。……普通にこれから過ごしてく中で、オレの気持ち、信じてもらえたら、そこから考えてくれたらいいから』
「……そんなので……いいの?」
『うん。ていうか、それが良い……だって、今答え出してとか言ったら、振られちゃうと思うし』
そんなことを言って、琉生はクスクス笑う。
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