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第4章「先生としてって言ったけど」
2.どっちも分かる
しおりを挟む「「は? 婚約解消??」」
大学時代の友人の中で、一番仲の良い二人。
夏美と遥香は、ほぼ同じセリフを口にして、固まった。
「実家に行くって言ってたじゃん」
「何で??」
眉を寄せて聞いてくる二人に、私は理由を話した。話すほどに二人の眉間の皺が寄っていく。
簡単に話したところで、二人は大きなため息をついた。
「まあ、浮気かぁ」
「えー。真面目そうだったのにー! つか、男なんて、マジで信じられないね」
そう言うのは夏美。
夏美は、結婚したくない派。それを周りに押し付ける訳ではないし、私の結婚は祝ってくれていたのに。なんだかますますそう思わせてしまった気が……。
「やっぱり私は、男とは遊びたい時に遊んで、でも結婚はしないっていうのがいいな」
「それもう何度目。変わんないねぇ夏美」
遥香は苦笑しながら、夏美を見てそんな風に笑いかける。
「遥香は今も結婚したい派?」
「うーん、三十くらい前にはしたい。良い人見つける」
そこまで言ってから、遥香は私を見つめた。
「なんか災難だったねー」
「災難っていうの?」
笑ってしまうと、遥香はうんうん頷いた。
「その相手の女が近場に居ちゃったことが、災難」
そういう考え方もあるのか。と、思っていると、夏美が苦笑い。
「でもそういう男は、また別の女が来ても、そうなるんじゃない?」
「あーそっかぁ……でも、相手がいなければさ。なんないじゃん?」
「出会い系だってあるし。分かんないよ、それは」
「なるほど。そっか。もうじゃあそういう運命だったって思うしかないのかなあ」
遥香はうーん、と考えて、私を見つめる。
「いつかその浮気相手と結婚するのかな、春樹さん」
「……あー考えたこと、なかった」
「うーん、嫌だね、同じ学校内でさ。結婚なんかされたら、祝福とかできないよね」
「そう、だね……確かに、ちょっと嫌かも……」
想像しながらそう言うと、夏美と遥香は、ちょっとじゃないでしょ、とハモった。
「琴葉が付き合ってんの知ってたのに、それって、相当タチ悪い気がする」
「……そうだよねえ。学年が一緒だから、近くて気まずくて」
はぁ、とため息をつくと、ちょっと困った顔をする二人。
「でもさ。結婚してから浮気されるより、良かったんじゃないかな。そう簡単に別れられないじゃん。琴葉なんてさ、学校だから余計だよね。今はまだ発表してないって言ってたよね?」
「あ、うん。そう。密かに付き合ってて、密かに別れた感じだから、学校的には、良かった」
頷きながらそう言うと夏美にじっと見つめられた。
「ねえねえ、琴葉はもうわりと吹っ切れてる?」
「あ、そうだね。そう見えるかも……でも、先週なんでしょ? 大丈夫?」
遥香も心配そうに私を見つめてくる。
「ぁ、うん…………あの。ね?」
二人に隠してもしょうがないので、琉生のことを説明する。春樹との話より、琉生とのことの方が楽しいみたいで、いっぱい聞かれて、色々応えてる内に、大体のことは話し終えた。
「あはは。なるほどねー。それで、なんとなく琴葉、落ち着いてるんだね」
遥香がニコニコしながら言う。
「春樹さん、ちょっとざまーみろだよね」
「ね。振った女が、翌日すっきりした顔してたら、あれってなるよね。そっちの女もさ、拍子抜けしたんじゃないの?」
「同期の子に、笑顔で挨拶してきなって言われたから……でもやっぱり、まだ二人が並んでるの見ると、辛いのは辛いんだけど」
「まあそれはしょうがないよね……でも、そんなのは、新しい恋があるなら、忘れられるんじゃない?」
遥香が楽しそうに笑って言う。
「新しい恋って……まだ付き合ったりとかしてないよ。好き、とは言ってくれたけど……指導する後輩だし。まだ新社会人の新米の先生だしさ。あと、四つ下なんだってば……」
さっきから合間に挟んでる情報をもう一度まとめて伝えてみると、二人は、うーん、と首を傾げた。
「もう社会人なんだからいい気がするけど……まあ、直の後輩だと、色々考えるか」
「うん。ちょっと考える……」
夏美の言葉にうなずくと、遥香はまた首を傾げた。
「仕事は仕事でちゃんとやって、恋は学校以外ですればいいんじゃない?」
「……出た。遥香。恋愛優先」
「何よー夏美。だってさ、琴葉が一晩の関係持つなんてありえないじゃん? それをできるような人がさ、しかも一途な感じの若い子が、来てくれてるのにーもったいないよー」
「そううまくいかないんじゃない? 琴葉は年を気にしてるし」
夏美の言葉に、遥香はプルプル首を振る。
「四つ位気にしなくていいと思うけど」
目の前で話してる二人の会話を聞いて、私は、ついつい、ふふ、と笑ってしまった。
「なんか……私があっちこっち、色んなこと考えてるのを、二人が言ってくれてるみたいで」
「ああ、どっちも分かるって感じ?」
「うん。同期の子も言うし。幼馴染も色んなこと言ってたし。私も、色々思うから……どっちも分かる」
「まあ。そうだよね。大人になって、色々考えちゃうと進めないよね」
「それはある」
夏美と遥香は、なんだかしみじみ頷いている。
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