「王子と恋する物語」-婚約解消されて一夜限りと甘えた彼と、再会しました-✨奨励賞受賞✨

星井 悠里

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第4章「先生としてって言ったけど」

8.変な妄想。

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 ネクタイを色々見ながら、さっきの言葉を考える。

 結婚してればよかった、なんて、琉生が言えるほど、そこまで私と付き合い長くないし。まだ知らないことの方が、断然多いし。
 ――そんな風にも思うんだけど、なんかそういうことを言って励ましてくれてるのが、嬉しいなと思ってしまう。

「琉生、いつも紺とかだよね?」
「ん。最初だし」
「地味にしてた?」
「なんとなくね」

 そっか、と頷きながら。

「こんな感じは?」

 ネイビー基本だけど、斜めの白と緑のストライプ。

「カッコいいね」
「うん。派手なネクタイしてる先生も居るし、大丈夫だよ」
「うん。そう思った」

 ふと、笑い合う。

「じゃあ、それと……明るい色も欲しいなー」

 琉生は、いっつも、泣きたい気分の時に、居てくれる気がする。
 たまたま、なのかもしれないけど。

「この色、似あうかも……」
「そう?」

 琉生にネクタイを合わせると、琉生は、ふわ、と微笑む。
 どき、と胸が弾む。

 こんな風に、時たま、どき、っとしてしまうのは、あの夜のこともあるとは思うけど。

 ……ほんと、素敵な人なんだと思う。

 優しいし。話してて楽しいし。面白いし。
 ほんとに皆に好かれてて。それ、私もすごく分かるし。

 ……私、琉生には頼れるって思ってしまってるかもだし。

 でも。
 四つ年下って、やっぱり躊躇うな。

 皆と何度話しても、めぐりめぐって同じことを思ってしまう。
 琉生はまだ学生が終わったところで、これから働いたり、色々経験してく内に、将来的に価値観とか色んなことが、今とは違ってくるだろうなって思うんだよね。

 多分、聞く音楽や、世代で流行ってるものとか違いそうだし。
 そういうのって……どうなんだろ。
 
「ん?」 目が合うと、楽しそうに微笑む。

 なんかこの人、カッコいい時も可愛い時もあって。
 ――同じ年だったら、迷わなかったかも……。
 
「これ買ってくる。待っててね」
「うん」

 レジに行く琉生を見送りながら、ふ、と息をついた。

 すぐに答えを出さなくてもいいって言われても、やっぱり考えちゃうし。
 こんな風に一緒に居ると……なんか色々考えるし。

 私と琉生って、並んで歩いてて、どう思われるんだろう。
 ……姉弟とかだったらどうしよ。私がもっとキャッキャってして若々しい人なら、良かったのかなー。うーん……。

 学校では明らかに、先輩と後輩、だから……。

 あー。なんか……琉生と私がたとえば万一、お付き合いしてますなんてことになって、誰かにバレたら。

 ぜったい私がたぶらかした、ってなるんだろうな。

 可愛い新人の先生を、指導者の年増の女教師が……。

 
 きゃーーーーー。
 ……きつい。



「……琴葉?」
「えっ」

 とっさに琉生を見上げると。


「何ここ」

 とん、と眉間をつつかれる。

「すごい皺」

 クスクス笑われる。

 琉生は、私が眉根を寄せてるから言ったんだろうけど。


 皺。とかシミとか。はー。
 ……もうお肌はとっくに曲がり角だから。


 ううん。
 やっぱり、よーく考えてから、行動しよう。
 
 
「お待たせ」
「うん」

「なんでしかめっ面だった?」

 クスクス笑いながら琉生が聞いてくる。

「ううん。なんでもない」

 ……い、言えない。考えていたことが、なんか恥ずかしい。


「今何時だろ」

 店の外に出てから、琉生はスマホを取り出して、「十六時かぁ。夕飯、何食べたい?」と聞いてくる。

「んー……なんかまだお腹空いてなくて」
「お好み焼き、ボリュームあったもんね。軽く食べて飲む、とかでもいいけど――あ」

 琉生の持ってるスマホが震えた。

「あ、ごめん。ちょっと待って?」
「うん」

 少し端に寄って、琉生が電話を始めた。

「もしもし? どした?」
 琉生が少しの間、向こうの話を聞いてから、「ああ、夕方からになったの? そっか」と頷いている。

「でも、オレ、今日はちょっと……」
 そう言ってる琉生を少し見上げて、首を傾げて見せた。今日何か用事なのかなと思って。

「サッカー誘われてたのが、夕方からになったんだって。だから来れる?って」
「そうなの? どこで?」
「電車乗って、三十分位」
「いいよ、サッカー行って。私、帰るから」
「え、何で、やだよ」
「……」

 やだって……。
 ……可愛いなもう。

「オレ今日サッカーの道具持ってきてないし。悪いけど」
『シューズ貸すー。人数少ないから来いよー。彼女さんも一緒にー今日二時間で終わるから』

 私との会話が聞こえたみたいで、向こうの人が、そう言って笑う。琉生は、ちょっと困った顔で私を見た。

「とか言ってるけど……」
「琉生、サッカーしたいなら、ほんとにいいよ」
「……琴葉、来てくれるなら行くけど」
「え。邪魔じゃない?」
「屋上のグランドだから。見る席はあるから見ててくれるなら」
「……お腹空いてなかったし、いいけど……」
「ほんとに面倒じゃない?」
「うん」

 琉生が途端に嬉しそうに笑って、電話に「行く。終わったら速攻帰るけど」と、言ってるのを聞いて、なんだか笑ってしまう。




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