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第二章
第22話 先輩の方が可愛い。
「――ありがとうございます。手伝ってくれるの、ほんとに嬉しいです」
「だって楽しそうだし。オレのカメラが役に立つなら、オレも嬉しい」
「お礼ができるくらい売れたらいいんですけどね」
オレが言うと、結愛は、ふふ、と笑った。
「一回のイベントじゃ無理かもしれないけど……でも一緒に出来るってそれだけで嬉しいです。あっそうだ、あとで、手芸部の人達にも連絡……」
「分かってるよ」
「どれくらいの人が手伝ってくれるかでさ、何個作れるかが決まるよねぇ……いっぱい作れたら……でもどうだろ、そういうイベントって、いっぱい手作り品あるだろうからなあ……」
「そうだね。難しいかもね」
「でもさ、写真で。売り場が目立つように出来たらいいよね。オレ、勉強しとくから」
「先輩ー!!」
結愛がキラキラした瞳で先輩を見上げている。
「先輩に何か、お礼できるだけ売れたらいいね、お兄」
「そうだね」
先輩は、ふ、とオレ達を見て、首をよこに振る。
「お礼なんかいらないよ。楽しそうだから手伝うんだし」
そういう訳にもいかないんだけど……。
でも、先輩、お金とか受け取らなそうだなあ、と心の中でため息をこぼす。
「お兄に出来ることがあったら、なんでもいいつけてくださいねっ!」
「はは。了解」
「でもやっぱり、なにかお礼できるように頑張ろうね、お兄!」
そう言いながら結愛は、ノートを取り出した。
「やること、考えないと……まず、人を集めるのは、お兄ね。それで、私がやるのは、SNSと手作りサイトの文章考えるのと……もし手芸部の人達が手伝ってくれるとしたら、どこで作業するか考えないと……各自家でやってもらうにしても……」
「そうだね、一回は集まって、やり方とか教えたいし、型紙とか布とかも配りたいよね」
「この部屋じゃ、入れて四、五人だよねぇ……」
「場所かぁ……市民館みたいなとこ借りれるかなあ。でもお金かかるかなぁ……ちょっと調べてみようっと」
ほんと結愛、頼もしすぎる。
思えば小学生とかの頃から、近所のお祭りの子供部門をしきってたっけ……。くじとか駄菓子とか。ああいうのって、習ってできるもんじゃないんだよなぁ、多分。
やろうとする気持ちというのか。天性って感じ。
一通り書いて、顔を上げた結愛に、先輩がふ、と笑いかける。
「結愛ちゃん、オレは何すればいい?」
「先輩は……ぬいの写真を撮ってほしいのが一番ですけど……」
「じゃあ、とりあえず、ぬいの写真――あと、売り場を目立つようにするのと……手作りサイトのヘッダーとか、撮ってみようかな。なんかネット検索したけど、出来そうなことはあるみたい。あとは、ワークショップのマニュアルみたいなの写真も撮れるし」
「お願いします!! そうだ、マニュアル作んないとだ。まず何をやるか考えないとだけど」
「マニュアルははオレが作るよ」
「お兄は、ただひたすら、ぬいを頑張って!」
ぴしゃりと言われて俺は苦笑する。その隣で、先輩が「オレが作る?」と笑った。
「なんとなく、作れそうな気がするし。詳しいことは宮瀬に聞けば、全然できそう」
検索結果を見ながら、ふふ、と笑ってる。
「先輩にそんなに任せていいんですか?」
「いいよ。別にそこまで負担じゃない気がする」
簡単なことのように言って、笑ってる先輩に、結愛はもう、両手を合わせて、お祈りでもしてるかのような。
「先輩って、どうしてそんなに天使……」
「拝まないで……」
クスクス笑ってる先輩。
オレが作ってる新しいぬいたちに触れて、先輩が机に並べていく。
ぽんぽんと五体並べて、その頭をつんつん、となでてる姿。
「かーわいいよね、ほんと」
ふふ、と目を細めて笑う先輩に、喉が詰まる。
可愛いのはぬいじゃなくて、先輩の方だって……。
思わずそんな思いが浮かんで、飲み込む。可愛すぎて、ちょっとため息をこぼしそうになるけど、ここでため息は可笑しいので、なんとか堪える。
「セットで売るのはどう? 一体ずつより目について可愛いと思う。少し高くても、セットで欲しいって思う人いるんじゃないかなあ……オレもセットで写真撮ってみたい。すごく可愛い」
「いいですね」
「ね」
「袋に入れて可愛いリボンとかつけて……」
楽しそうにノートに書いていた結愛が、時計を見て「あ、やば」と呟いた。
「明日は普通に学校なので、帰らないと……」
「ああ。駅まで送る、結愛」
「大丈夫だよ」
「暗い道あるから」
「……はーい」
結愛は、出していたノートとか諸々、鞄に詰め込んでる。
「あっそうだ、お土産持って帰ってほしいんだった」
オレは、玄関に置いたままのボストンバッグから、結愛と家族に買ったものを取り出す。先輩にかったお土産はまだ入ったまま。
買った後は、先輩と二人になれる時が無いまま解散だったのと。
なんか、一緒に行った人におみやげ買うって、変かな、という気持ちがあって、ちょっと出せずにいる。
「オレも結愛ちゃん、送ろうかな」
「えっ」
「せっかくだから」
「いいんですか? わーい、ありがとうございます」
先輩も立ち上がって、スマホをポケットに入れている。
……オレだったら、こういうの、絶対申し訳ないと思って、お断りしちゃうのだが、結愛は、嬉しそうに喜んでいる。こういう風にしたら、楽しくなっていくんだろうか、人付き合いも。
「あ、宮瀬、バック、後でまた取りに寄ってもいい?」
「いいですけど……駅まで面倒じゃないですか?」
「全然。いこ~」
三人で揃って、オレの部屋を出て、夜道を歩きだした。
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