89 / 113
第三章
第37話 朝日の中の撮影会
しおりを挟む顔を洗って、着替えて、ちょっとすっきり。ローテーブルを窓際に少し寄せた。
朝の独特な静けさの中。窓から差し込む、淡い淡い、オレンジの光。オレンジというか、金色にも見えるような。
「……先輩が朝の光がいいって言ったの、分かる気がします」
「ん。でしょ。なんかね、綺麗なんだよ、空気が」
言いながら先輩は、カメラの設定を弄ってる。
綺麗な指先。
……カメラを撮ってる先輩を、撮りたいくらい。……あ、撮ったな、一枚。
あれまだ、先輩に言えてないな。
「宮瀬、そこに座って」
「はい」
「で、この布の上に手を置いて、このぬい、触ってて」
「はい」
「もうちょっと、手、開いて? ぬいも少し頭が見えるように……なんかふわって、可愛がってあげる感じで……」
「はい……ってこうですか」
「うん。そんな感じ。なんか、こう、作ってる時の感覚で触ってて」
「はい」
先輩は真剣。オレは、もう、言われるがままに動く。
先輩は――カメラと、オレの手元しか見てないので。オレは、先輩を見てしまう。多分今は、絶対バレなそう。
――真剣。綺麗。
写真、好きなんだなって、分かる。
これから――また写真、楽しんで撮れるようになったらいいなぁ……。
今回のイベントの成功が、それにつながるような気がする。
俄然、やる気になってくる。
自分のために、ただ頑張るっていうのは、オレはちょっと向いてない。
たぶん、そういうのだと、モチベが上がらない。
先輩のためとか。
頑張ってくれる結愛や、手芸部の皆のため。
今回は、ワークショップに来てくれる子が、ぬいをつくるのを好きになってくれたらいいな、とか。
皆が頑張って作ってくれてるぬいを、大事に可愛がってくれたら。それで癒されてくれたらいいなーとか。
なんか、そういうのが。
今回すごく、たくさんあるから。
珍しいくらい、やる気にはなっている。
「宮瀬、もうちょっと、テーブルごとこっちに来て」
「はい」
「そこの綺麗に光が当たってるとこに、手を置いて?」
「ここですか?」
差し出した手の上に、柔らかな光がふわりと重なった。
あ、これか。その中でぬいに触れていると、先輩が、柔らかく微笑んだ。
「そうそう。肌がさ。透明感出て、すごく綺麗――」
先輩の声は、むしろ淡々としているのだけれど。
カメラに触れてる先輩の視線からは、熱を感じるような。
……手に当たる光を褒めてるだけなのは分かっているんだけど。
まっすぐな瞳が、すごく綺麗で。その瞳に映っているというだけで。
胸の奥が、ドキドキ、する。
カシャ、と何回か、シャッター音。
「ありがと。宮瀬はもういいよー、お疲れ」
そう言われて、ほっと肩から力が抜けると、先輩がクスクス笑う。
「緊張した?」
「はい」
「ふふ。そしたら、今度は、ぬいたち、並べて?」
「あ、はい」
「適当に離したりくっつけたり。可愛いグッズ、並べてみたり。そこは、宮瀬が可愛いと思う風においてくれたらいいよ~」
「は、はい……??」
それはあんまりやったことないな……。
先輩の声かけも聞きながら、あれこれ並べては、撮ってもらう。
しばらく、ぬいたちを並べて、撮影会。
可愛いぬいたちが、まるでモデルみたいに。なんか撮られて喜んでるような気すらしてくる。
ちょっとワクワクした。
「オッケー。もういいよ。また後で、今度は違う光で撮ろ。先、なんか食べよう」
モニターを見ていた先輩は、ニコニコで顔を上げたから。
きっと、うまく撮れたんだろうなと。
嬉しかった。
1,063
あなたにおすすめの小説
隣に住む先輩の愛が重いです。
陽七 葵
BL
主人公である桐原 智(きりはら さとし)十八歳は、平凡でありながらも大学生活を謳歌しようと意気込んでいた。
しかし、入学して間もなく、智が住んでいるアパートの部屋が雨漏りで水浸しに……。修繕工事に約一ヶ月。その間は、部屋を使えないときた。
途方に暮れていた智に声をかけてきたのは、隣に住む大学の先輩。三笠 琥太郎(みかさ こたろう)二十歳だ。容姿端麗な琥太郎は、大学ではアイドル的存在。特技は料理。それはもう抜群に美味い。しかし、そんな琥太郎には欠点が!
まさかの片付け苦手男子だった。誘われた部屋の中はゴミ屋敷。部屋を提供する代わりに片付けを頼まれる。智は嫌々ながらも、貧乏大学生には他に選択肢はない。致し方なく了承することになった。
しかし、琥太郎の真の目的は“片付け”ではなかった。
そんなことも知らない智は、琥太郎の言動や行動に翻弄される日々を過ごすことに——。
隣人から始まる恋物語。どうぞ宜しくお願いします!!
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
【完結】かわいい彼氏
* ゆるゆ
BL
いっしょに幼稚園に通っていた5歳のころからずっと、だいすきだけど、言えなくて。高校生になったら、またひとつ秘密ができた。それは──
ご感想がうれしくて、すぐ承認してしまい(笑)ネタバレ配慮できないので、ご覧になるときはお気をつけください! 驚きとかが消滅します(笑)
遥斗と涼真の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから飛べます!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
本気になった幼なじみがメロすぎます!
文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。
俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。
いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。
「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」
その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。
「忘れないでよ、今日のこと」
「唯くんは俺の隣しかだめだから」
「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」
俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。
俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。
「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」
そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……!
【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)
【完結】君とカラフル〜推しとクラスメイトになったと思ったらスキンシップ過多でドキドキします〜
星寝むぎ
BL
お気に入りやハートなど、本当にありがとうございます! ひとつひとつが心から嬉しいです( ; ; )
✩友人たちからドライと言われる攻め(でも受けにはべったり) × 顔がコンプレックスで前髪で隠す受け✩
スカウトをきっかけに、KEYという芸名でモデルをしている高校生の望月希色。華やかな仕事だが実は顔がコンプレックス。学校では前髪で顔を隠し、仕事のこともバレることなく過ごしている。
そんな希色の癒しはコーヒーショップに行くこと。そこで働く男性店員に憧れを抱き、密かに推している。
高二になった春。新しい教室に行くと、隣の席になんと推し店員がやってきた。客だとは明かせないまま彼と友達になり――
【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜
星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; )
――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ――
“隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け”
音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。
イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる