「推しは目の前の先輩です」◆完結◆

星井 悠里

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第三章

第37話 朝日の中の撮影会

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 顔を洗って、着替えて、ちょっとすっきり。ローテーブルを窓際に少し寄せた。
 朝の独特な静けさの中。窓から差し込む、淡い淡い、オレンジの光。オレンジというか、金色にも見えるような。
 
「……先輩が朝の光がいいって言ったの、分かる気がします」
「ん。でしょ。なんかね、綺麗なんだよ、空気が」

 言いながら先輩は、カメラの設定を弄ってる。
 綺麗な指先。
 ……カメラを撮ってる先輩を、撮りたいくらい。……あ、撮ったな、一枚。
 あれまだ、先輩に言えてないな。

「宮瀬、そこに座って」
「はい」

「で、この布の上に手を置いて、このぬい、触ってて」
「はい」
「もうちょっと、手、開いて? ぬいも少し頭が見えるように……なんかふわって、可愛がってあげる感じで……」
「はい……ってこうですか」
「うん。そんな感じ。なんか、こう、作ってる時の感覚で触ってて」
「はい」

 先輩は真剣。オレは、もう、言われるがままに動く。
 先輩は――カメラと、オレの手元しか見てないので。オレは、先輩を見てしまう。多分今は、絶対バレなそう。

 ――真剣。綺麗。
 写真、好きなんだなって、分かる。

 これから――また写真、楽しんで撮れるようになったらいいなぁ……。
 今回のイベントの成功が、それにつながるような気がする。

 俄然、やる気になってくる。


 自分のために、ただ頑張るっていうのは、オレはちょっと向いてない。
 たぶん、そういうのだと、モチベが上がらない。

 先輩のためとか。
 頑張ってくれる結愛や、手芸部の皆のため。
 今回は、ワークショップに来てくれる子が、ぬいをつくるのを好きになってくれたらいいな、とか。
 皆が頑張って作ってくれてるぬいを、大事に可愛がってくれたら。それで癒されてくれたらいいなーとか。

 なんか、そういうのが。

 今回すごく、たくさんあるから。

 珍しいくらい、やる気にはなっている。


「宮瀬、もうちょっと、テーブルごとこっちに来て」
「はい」
「そこの綺麗に光が当たってるとこに、手を置いて?」
「ここですか?」

 差し出した手の上に、柔らかな光がふわりと重なった。
 あ、これか。その中でぬいに触れていると、先輩が、柔らかく微笑んだ。

「そうそう。肌がさ。透明感出て、すごく綺麗――」

 先輩の声は、むしろ淡々としているのだけれど。
 カメラに触れてる先輩の視線からは、熱を感じるような。
 ……手に当たる光を褒めてるだけなのは分かっているんだけど。

 まっすぐな瞳が、すごく綺麗で。その瞳に映っているというだけで。
 胸の奥が、ドキドキ、する。

 カシャ、と何回か、シャッター音。

「ありがと。宮瀬はもういいよー、お疲れ」

 そう言われて、ほっと肩から力が抜けると、先輩がクスクス笑う。

「緊張した?」
「はい」
「ふふ。そしたら、今度は、ぬいたち、並べて?」
「あ、はい」

「適当に離したりくっつけたり。可愛いグッズ、並べてみたり。そこは、宮瀬が可愛いと思う風においてくれたらいいよ~」
「は、はい……??」

 それはあんまりやったことないな……。
 先輩の声かけも聞きながら、あれこれ並べては、撮ってもらう。
 しばらく、ぬいたちを並べて、撮影会。

 可愛いぬいたちが、まるでモデルみたいに。なんか撮られて喜んでるような気すらしてくる。
 ちょっとワクワクした。


「オッケー。もういいよ。また後で、今度は違う光で撮ろ。先、なんか食べよう」


 モニターを見ていた先輩は、ニコニコで顔を上げたから。
 きっと、うまく撮れたんだろうなと。
 嬉しかった。

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