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第2章
「頑張る」
しおりを挟む「ソラ、何か食わせろよ」
「え。ああ、うん。何が良い?」
「何でも」
ルカに言われて、ポシェットを開ける。
出発前に、ルカに、詰め込み過ぎと笑われながら、いっぱいにしてきたお菓子たち。
「じゃあこれあげる」
ちょっとお腹の足しになりそうな、クッキーもどきなお菓子を手に取ったら、あーんと開いたルカの口に、ぽん、と入れた。
「皆も食べる?」
聞くと、皆食べると言うので、手をお菓子の袋に入れかけて。
は、と気付いた。
食べさせたら、ダメなんだった。
気付いた瞬間、何でオレは、こんな事を気にしなければならないんだろうと、悩みつつ。
「取って?」
袋を皆に差し出して、自分で取ってもらう。
配り終えて、ルカの隣に戻って、岩に座った瞬間。ルカがニヤニヤ笑う。
「食べさせたらどーしてくれようかなーと思ってたのに」
「……っ」
……良かった。食べさせなくて。
隣のルカをジト、と見つめると。ルカは、ぷ、と、笑った。
クッキーもどきを口に入れてみると。
なんとも言えない、ものすっごい甘い味で、すっごくぱさぱさしてる。
……うーん。やっぱりこの世界、食にそこまで、情熱かけてないよなー。
まあ、食べれるし。
これ、カロリーとかは取れそうだし。そっち重視なのかな。
いやーでも、誰かー、
紅茶入れてー。
思った瞬間。
「ソラ、水」
ルカから、水のボトルが渡されて、ちょうどいいのでお菓子を流し込んだ。
いいタイミングで水渡してくれてありがとう。
なんて思ってると。
頬にルカの手がかかって、ぶに、と横に引っ張られた。
「ほんとお前、顔に出るな。あんまりそれ、好きじゃねえんだろ」
「う。……甘すぎて」
言うと、ルカはぷ、と笑いながら、オレの頬を離した。
「お前が作ったら、もっとうまいのか?」
「分かんない。ここの材料でどんな感じで作れるのか。早く作ってみたい」
なんかウズウズする。
「――――……楽しみだな」
くす、と笑って、ルカが言う。
――――……昨日の夜。
ルカが、喜んでくれそうとか思って、ウキウキした自分を思い出して。
マジマジと、ルカを見つめてしまう。
あーなんか。
オレが作った物、美味しいって、喜んでくれたら。
やっぱり、オレ、ちょっと嬉しいかも……。
そんな事を思いながら、結構な高さから見る、この世界の景色を目に映していると。
なんか、ここが夢の中とかは、忘れてしまいそうになる。実際経験してる事だとしか、思えない。
だって、ほんとこの……山? 岩? 崖? のぼり、きっついし……。
「もう行けそうか?」
ルカがオレを見て、そう聞いてくる。
全然行きたくはないけど、頷いて、立ち上がった。
「この分だと、頂上まで登る事になりそうかな。ソラ、頑張れそう?」
キースが苦笑いしながら、オレを見てる。
「うん。頑張る」
出来たら帰りは、リアが魔法で帰ってくれると良いなあとか、密かに思いながら。また登り始めて、少し。
手が、ずる、と滑って。
うわ。落ち……。
思った瞬間。
下に居たルカに、容易く受け止められた。
「ル、カ……」
硬直。
抱き止められてる逞しすぎる腕に、心底ほっとしてしまう。
「……いつか落ちてくると思ってたけど、休憩開けかよ。 気合抜けすぎだ」
そんな風に言われて、ぷ、と笑われる。
「ごめん、あ、りがと……っつか、めっちゃ怖かった。下まで滑り落ちるのかと思った」
「んな訳ねーだろ。風の魔法で止めるし」
「……風の魔法で上まで運んでくれたらいいのに」
「今からデカいのと戦うのに、そんな魔力使ってられねえから」
「……登る体力は使っても良いの?」
「まあ。こっちのが楽」
そうなんだ。
魔力使うって疲れるんだ。
ルカにがっちり掴まれたまま、とりあえずルカが居た足場で話していたけど。
ありがと、登るね、と言って離れようとした瞬間。
ぐ、と掴まれて、顎、上げさせられて。
「――――……っ?」
キスされた。
何すんだ、こんな怖いとこでー!!
もう、絶対動けないし、逃げれない。
すっぽり抱き込まれてるし。
「……ん、んっっ」
今度は、優しくない、一瞬で深い激しい、キス。
ぎゅ、と瞳を閉じて、キスが終わるのを待つ。
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