【+月ノ夜+】本編完結 ~大好きな親友に、恋愛感情がある、と言われたら*

星井 悠里

文字の大きさ
6 / 18
【+月ノ夜+】本編

+月ノ夜本編+【キス】

しおりを挟む



「……涼介?」

「――――……お前、な?」
「ん?」

「……ほんまに試せて、言うてるん?」

「うん。……オレ、このままだとほんと想像つかねえし……実際してみて、すっげえ無理だったら、とりあえず逃げるからな。許せよな」


 逃げるとか、ひどいこと、言ってるだろうか。
 言いながら心配になったけれど、涼介は、そこには特別何の反応もなく。

 ただ、オレを見つめ続けていた。


「………ほんまに、するん?」

 しばらく後。涼介がぽつ、と呟いた。

「うん。そのかわり、オレがやっぱりありえないと思ったら……諦めろよ? それにお前だって試してみたくねえ? 実際したら嫌ってなるかもしんねえしさ。……してみてから考えても、良くねえ?」

 オレが言い終えて、涼介の答えを待っていると。

 その後、ずーーっと黙っていた涼介が、深く深く息をついて、前髪を掻き上げた。

「……オレ、本気でキスするで」
「……ん」

「悪いけど、オレからは絶対やめへんで。それに、オレは別に試す必要ないねんで?」
「……でもさ」

「オレの方は、試す必要ないんやて」

 反論しようとしていたオレを遮って。
 涼介は、なんだか少し強い口調で言った。

「瑞希が試したいんやろ、オレは試さなくても分かってる」
「……」

「試すなら、本気でするけどええんやな?」
「……うん。別に。 キスくらい、そんな大した事じゃ、ねえし……」

「――――…… ほんまに、本気でキスするで?」
「だから……良いって言ってんじゃんか」

 頷くと、涼介はオレにゆっくりと近づく。

 そっと頬に涼介が触れる。
 見上げた、涼介の真剣な眼差しに、一瞬ちょっと怯んで。

「……な、なんか…… すげえ恥ずかしいかも」
「……」

「…… 目、つむったほうが、いい、よな?」
「――――……どっちでも、ええよ」

「……」

 とりあえず。 近づくまで目を見開いてるのも、やっぱりおかしい。
 それに、恥ずかしすぎて、とてもそんな、涼介の顔を直視なんか、していられる訳がない。

 そうっと目を閉じて、数秒。
 涼介がちょっとだけ、息をついたのが、分かった。

「――――……お前、最悪やな」
「え……」

 ぽつん、と呟かれて。
 目を開けようとした瞬間。もう直前に迫ってきていた涼介に、咄嗟にまた目を閉じた。

「……ぅん……ッ……」

 その腕の中に抱え込まれるように肩を抱かれて、上向かされて。

 唇が重なったと思ったら、息を付くまもなく、ディープキス。
 舌が、歯列を割って、入り込んでくる。絡め取られて、刺激される。


「んん……ぅ……っ……」


 息も。出来ない。


 こんなキスを、されるとは思っていなかった。
 ただ、触れるくらいのキスだけを勝手に想像していた。


 少し藻掻くけれど、すっかり抱き込まれてしまっていて、身動きも満足にとれない。

 動かそうとした手は掴まれて、ぴくりとも、動かせない。


「……ん、う……っ……」


 奪われるキス、なんか。
 ――――……当たり前だけど、初めてで。


 受けるキス、も。
 ――――…… 初めてで。

 キスって、こんなものだっただろうか。

 動けない。

 手首を掴んでいた涼介の手は、いつの間にか離れていた。
 気付いたけれど、動けなかった。


「……りょうすけ……っ……ちょ、ま……っ」


 息が、上がる。
 頭が、朦朧として、何も考えられない。

「――――……っンぅ……っ」


 また、深く重なる、唇。

 頭は、真っ白で。
 何とかしないとと思うのに、何もできない。


「……ッ……ん……」


 嫌、じゃなかった。
 むしろ、気持ち、良くて、頭が真っ白で。


 いつの間にやら。

 すっかり、すっぽりと抱き込まれたオレは、深い深いキスに、ただ、応えるしか出来なかった。


 絡む舌がぴちゃ、と音を立てて。
 キス、してるんだなぁ……と、納得して。


「――――……ふ……」


 唇が離れても。 動けなくて。
 頬がする、と撫でられて――――……体が勝手に、びく、と震えた。



「……ッ……?」


 ふわ、と涼介の髪の毛が顔に触れて。次の瞬間。
 首筋に唇が押し当てられて――――……そのまま、少し噛まれた。


「……っ ……っぁ……」

 瞬間、ぞくりとした感覚が背筋を駆け抜けて。

 本当にもう、どうしようかと思った瞬間。



「――――……ッッ……!」


 涼介が、がばっと顔を上げた気配。
 恐る恐る、やっとの事で目を開くと。

「ッあかんわ、ほんま……」

 オレから離れ、額に握ったこぶしを押し当てて、ぶつぶつ言ってる。


「……りょ……うすけ……?」

 おそるおそる話しかけると、涼介はキッとオレを睨んだ。


「……っアホか、お前!!」
「え」


「……もっとちゃんと抵抗しろや!! 危なく勢いに任せてまうとこやんか!」

 あかんあかん、とまたブツブツ呟きながら、涼介は立ち上がった。


「もお今日は帰るわ。……ほんま……嫌やってんなら、オレの事殴ってでも、どかせや……」



 大きなため息。
 テーブルに置いてあったスマホを持ち、ポケットに突っ込んでいる。

「……涼介、帰る、のか?」
「……このまま居ったら、今日はあかん。 帰る」

「あ、……うん、分かった……」

 どうしたらいいか分からず。頷いたオレに、涼介は背中を向けたまま。


「明日、朝迎え来るけど……ええん?」

 そう、聞いてきた。

「……うん」

 頷くと。
 涼介は、ふ、と振り返った。

「……おやすみ、瑞希」
「……うん」

 小さく、頷く事しかできないオレに。

 涼介は何とも言えない顔をしつつ。 玄関に向かって歩き出して。

 靴を履く音。玄関が、開く音。「鍵、かけろや」という、涼介の声。
 それから、扉が閉まって。



 ――――……静寂。


「っ……ッ」


 鍵かけなきゃ、と思いながらも。
 ――――……立てない。


「………ッッ……」


 どどどどどどどどどど、どうしよう。
 男独特の、反応をしてる、自分。


「~~~……ッ……」


 ――――………すっげえ…… 反応、してるし。

 涼介、気付かなかったの、かな……。



 嫌なら抵抗しろ、と言ってた位だから……
 多分、気付いてなかったんだろうな、と思いつつ。


 何とか、落ち着こうと試みる。


 背中を壁につけて、足を投げ出して座り――――……かなりしばらく混乱したまま時が過ぎて。

 ようやく、体が落ち着いてから。


 とりあえず玄関に鍵を掛けて。
 それから、ほてったままの顔を冷まそうと、窓を開けた。




 冷たい風が、部屋に流れ込んできた。


「――――……」


 全然、嫌じゃなかったから、困る……。
 ほんと、まじで、困る。


 ――――……キス位大した事ない、なんて。
 ……明日にでも撤回しよう。 


 大した事無い、触れる位のキスをされると思っていた自分がバカだったのか、いきなりあんなキスしてきたあいつに怒るとこなのか。

 ……でもそういえば、本気でキスすると言った涼介に、頷いたのも確かだ。


「――――……」


 一番、どうしたら良いか、分からなくなってるのは。

 あのままあんな気持ち良さが続くなら、そのままいっても良かった、かも。なんて、思ったこと。

 あいつが、やめなかったら――――……オレは、どっかで、抵抗する事、出来たんだろうか……。


 嫌じゃなさ過ぎて。
 ほんとに、困ってしまう。



『――――…… お前、最悪やな』


 キスの前に呟かれた言葉。

 どういう意味だったのか――――……明日、聞こう。



 ――――…… 半端に、試そうなんて言った事を、言ってたなら。 

 ……謝ろ。




「――――……」 




 見上げた空には、青白い、月が浮かんでいて。
 ――――…… 静かなその光景に。



 オレは、ただただ、落ち着かない心を静めようと。

 ぼんやりと、見入るしか、できなかった。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

病み墜ちした騎士を救う方法

無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。 死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。 死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。 どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……? ※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です

【完結】取り柄は顔が良い事だけです

pino
BL
昔から顔だけは良い夏川伊吹は、高級デートクラブでバイトをするフリーター。25歳で美しい顔だけを頼りに様々な女性と仕事でデートを繰り返して何とか生計を立てている伊吹はたまに同性からもデートを申し込まれていた。お小遣い欲しさにいつも年上だけを相手にしていたけど、たまには若い子と触れ合って、ターゲット層を広げようと20歳の大学生とデートをする事に。 そこで出会った男に気に入られ、高額なプレゼントをされていい気になる伊吹だったが、相手は年下だしまだ学生だしと罪悪感を抱く。 そんな中もう一人の20歳の大学生の男からもデートを申し込まれ、更に同業でただの同僚だと思っていた23歳の男からも言い寄られて? ノンケの伊吹と伊吹を落とそうと奮闘する三人の若者が巻き起こすラブコメディ! BLです。 性的表現有り。 伊吹視点のお話になります。 題名に※が付いてるお話は他の登場人物の視点になります。 表紙は伊吹です。

デコボコな僕ら

天渡清華
BL
スター文具入社2年目の宮本樹は、小柄・顔に自信がない・交際経験なしでコンプレックスだらけ。高身長・イケメン・実家がセレブ(?)でその上優しい同期の大沼清文に内定式で一目惚れしたが、コンプレックスゆえに仲のいい同期以上になれずにいた。 そんな2人がグズグズしながらもくっつくまでのお話です。

BL小説家ですが、ライバル視している私小説家に迫られています

二三@冷酷公爵発売中
BL
BL小説家である私は、小説の稼ぎだけでは食っていけないために、パン屋でバイトをしている。そのバイト先に、ライバル視している私小説家、穂積が新人バイトとしてやってきた。本当は私小説家志望である私は、BL小説家であることを隠し、嫉妬を覚えながら穂積と一緒に働く。そんな私の心中も知らず、穂積は私に好きだのタイプだのと、積極的にアプローチしてくる。ある日、私がBL小説家であることが穂積にばれてしまい…? ※タイトルを変更しました。(旧題 BL小説家と私小説家がパン屋でバイトしたらこうなった)2025.5.21

【短編】抱けない騎士と抱かれたい男娼

cyan
BL
戦地で奮闘する騎士のキースは疲れ果てていた。仲間に連れられて行った戦場の娼館で男娼であるテオに優しい言葉をかけられて好きになってしまったが、テオの特別になりたいと思えば思うほどテオのことを抱けなくなる。 純愛とちょっとのユーモアでほのぼのと読んでほしい。

いい加減観念して結婚してください

彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話 元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。 2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。 作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

サラリーマン二人、酔いどれ同伴

BL
久しぶりの飲み会! 楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。 「……え、やった?」 「やりましたね」 「あれ、俺は受け?攻め?」 「受けでしたね」 絶望する佐万里! しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ! こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。

処理中です...