【+月ノ夜+】本編完結 ~大好きな親友に、恋愛感情がある、と言われたら*

星井 悠里

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【+月ノ夜+】旅行編

+月ノ夜+旅行編【好きな人】

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 ゲレンデから一番近いレストランで昼の休憩を終えて、滑り直しに外に出て、唖然として立ち止まる。

 ついさっきまで青かった空が、どんよりとした灰色になっていて、強い風が吹きつけていた。

「……吹雪きそうやなぁ……」
「えええ~」

 涼介の声に、愛美が不満そうな声を出す。

「やっと慣れてきたのに~」
「しょーがねぇよ。撤収しよ。天気よくなればまた滑りに来ればいいしさ」

 結局15時をまわっても、雪はやむ気配を見せなかった。風と雪のせいで、窓の外は真っ白。

 とりあえずホテルに戻って、男女で部屋に別れた。
 ウェアーを脱ぎ、部屋の真ん中にあるテーブルを囲んで、皆で話し始める。


「なあ、皆好きな奴とか居んの?」

 大地の楽しげな口調に、皆プッと笑う。

「お前絶対ぇ居るだろ」
「あ、分かる?」
「聞いてくれって顔してんじゃんか」

 笑って言う祐司と隆に、大地も 頭を掻きながら笑った。

「まあ、オレの詳しい事は後でという事で…… んで? 皆は居るのか?」
「彼女居るもん、オレ」

 祐司のその声に、大地は、ああ、と頷いた。

「あ、そっか。バイト先の子だったっけ?」
「そ」

「隆は?」
「今はいねーなぁ、好きな子も居ない」

 隆がそう答える。大地はつぎは……とばかりに、何となく黙って聞いていた涼介とオレの方に体を向けた。

「お前らは?」

 大地の問いに、涼介は苦笑いする。

「……大丈夫やて、あの2人の中には居いひんから」

 その涼介の言葉に、大地は、「げっ」という顔を見せ、引きつった。

「……ばれてんの?」
「どっちかなーと思って見てたんやけど……」

「えー、そうなのか?大地」
「だからそんなに真剣なのかぁ」

 皆がおかしそうに笑っているのを見て、大地はため息をつきながら涼介を見る。

「お前マジで鋭いよなぁ……」
「せやかて、そもそもメンバー決める時、あそこ呼びたがったのお前やし」

 クスクス笑う涼介に、大地はにじにじと詰め寄った。

「涼介は? 居ないのか、好きな奴」
「オレ? ……んーー」

 何となく皆口を噤んで、涼介の言葉を待っている。すると、涼介はクスクス笑って。

「居るよ。めっちゃ好きな奴」
「――――……」

 その言葉に、オレが一瞬呆けて、涼介を見つめる。

 そ、それって、 オレの事 を、まさかここで言ってるの、かな。
 って、オレの事じゃなくても、それはそれで困るけど……

 うろたえていたオレは、次の瞬間の涼介のセリフに完全に硬直した。

「な、瑞希? オレ、めーっちゃ好きな奴、居るよな?」
「……っ」

 まっすぐに見つめて、にっこり笑う涼介を一発ぶん殴ってやりたくなる。

 ~~~~そんなの、ここで、うまく答えられるか……!


「えー、そうなの? 瑞希知ってるのか、涼介の好きな奴」

「誰誰誰~?」
 詰め寄ってくる皆に、オレは耐えきれなくなって、ガタンと立ち上がった。

「……涼介に聞いて」

 その場を逃げるようにすたすたと歩き出し、部屋の端の窓際に立つ。障子を開けると、一面が真っ白。


 うわー、すっげえキレイ。


「え~~、誰なんだよ、涼介?」
「オレら知ってる奴?」

「さぁな~? どうやろな~? なー、瑞希?」

 窓から外を見ていたオレは、また涼介にそう話を振られて、今度は小さく息をついた。

「……オレに聞くなって言ってんだろ、馬鹿」

 涼介がプッと笑っている。皆は「教えろよ~」と騒いでいた。

 窓の外はもう真っ暗。雪は小降りになっていた。このまま弱まれば、ナイターにも行けそうな雰囲気だったが、あまり気乗りがしなかったオレはただぼんやりと、絶えず舞う真っ白な雪を眺めていた。窓から下を覗くと、ちょうどホテルの入り口とは反対の裏庭のような場所。

 誰の足跡もついていない、キレイな白。


「……♪」

 いい事、思いついた。
 唐突に思い付いて、オレは障子をパタンと閉めた。

「♪♪」

 ハンガーに掛けてあったコートに袖を通して、スマホをポケットに入れているオレに、まだ先程の話題で詰め寄られていた涼介が気付いた。

「瑞希?どした?」
「ん、ちょっと 外行ってくる。飯までまだ40分くらいあるだろ?」
「は? 何しに?」
「すげー外綺麗だからさ、この裏の庭に足跡つけてくる♪」

 くいくいと親指で今覗いていた窓を指さす。涼介はプッと笑って、面白そうにオレを見た。

「足跡ー?」
「子供か お前はーー?」

 大地達の言葉に、オレは「何とでも言え」と、べーっと舌を見せながら、手袋を手にはめる。

「綺麗だから写真も撮りたいし。 んじゃな~♪」

「あ、瑞希、お前は?」

 大地に呼び止められて、くるりと振り返る。

「ん?何が?」
「お前は好きな奴居んの?」

「え、オレ? ……んーー……」

 オレは少し考えてから、その後涼介にちらっと視線を流した。

「涼介が知ってっから。涼介に聞いて♪ んじゃな~♪」

「あ、ちょい待ち、瑞希、オレも行――――……」


「お前はちょっと待てっ」

 立ち上がりかけた涼介は大地にむんずと掴まれて、もう一度座らされた。
 その姿をクスクス笑って見ながら、オレは涼介に向けて、「ばいばい」と唇で言い、手を小さく振り、部屋から出ていった。


「ちょ……瑞希、待てやっ」

 知るかー。
 どーにでも好きなよーに答えやがれー。

 どう答えていいか分からない質問を涼介に押し付けて、ルンルンと楽しげに歩いていたのだけれど。

 オレは不意に、ぴったりと足を止めた。

 ……とんでもねー事、言ってねーよな……ま、まさかな……。

 引きつった苦笑いを何とか押さえつつ、オレは正面玄関まで下りて行ってブーツを履く。

 表に出て、まず、その一面の真っ白な世界に目を奪われた。静かなその世界を、ゆっくりと、裏側へと歩いていく。

 スマホで写真を撮ってみると、とにかく真っ白。
 雪、すげー……。


「……すげー……静か……」

 きっと今も東京では、こんな風景とは全く違った、いつも通りの世界があって。人は騒がしい人込み中で、忙しそうに歩いてるはず。

 完全に、普段の世界とは違う、別世界。


「……これだけでも、来て良かったなー……」


 オレは思わず呟いていた。


 真っ白な世界。
 降ってくる雪に、余計な音はかき消されているかのように、静かで。

 雪が降り積もっていく、ものすごく微かな音が、聞こえてくるような気がする。

 裏に回って、先程上から見下ろしていた場所にたどり着く。
 誰もこちら側には回らないからか、足跡一つついていない。


 ゆっくりゆっくり歩きながら、自分の足跡を付けていく。
 何だか、自分がここに居る事の証のように思えて、オレは微笑んだ。

 真ん中まで歩いていって、そこからまっすぐ空を見上げる。


「――――……きれーだなぁ……」


 幻想的。
 寒いけれど、 心の中は、穏やかで、ポカポカ暖かくて。

――――……それが、誰のおかげか、良く分かっている自分が、くすぐったくて、オレは一度目を伏せた。

 そして再び瞳を開け、空から降り落ちてくる、雪をただぼんやりと見上げていた時。



「……めーちゃ寒いのに、何してんねん」

 
 優しい声に振り返ると、そこには涼介が笑いながら立っていた。








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