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第一章
2.「妹の嘆き」1/2*リュシオン
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ほんの少し前まで、戦いばかりの毎日だった。
オレの国、レクトールは、隣国のフランツと争い、国境の付近で争いを繰り返していた。一進一退が続き、被害はお互い増すばかり。
業を煮やした国王が、王子を将として立て、騎士団とともに国境へと向かうことを命じた。結果、フランツの軍隊も総動員で、大きな戦いとなった。
オレは、王子を一番近くで守る第一騎士団の副長でその責務を果たしてきた。半年以上にも渡る長い戦いの末、フランツから停戦が申し込まれ、調停式を執り行った。
結果的にこちらの勝利なので、大分有利に停戦条約を締結できて、万々歳で、帰ってきた。
国境まで行っていたので、帰ってくるのにも大分時間がかかったが、一昨日、城に到着し、昨夜は城で凱旋の宴を開いていた。久しぶりに心置きなく酒を飲み、昼頃にやっと起きた所に、妹のアリシアがやってきた。
開口一番、言うことには。
「お兄様、私、やっぱり、結婚できません」
突然のセリフに、言葉を失って、アリシアをじっと見つめた。
しばらく後。痴話げんかか何かだろうかと、首を傾げる。
「……理由は? 申し込まれて、お前も望んだ婚約だったろ?」
そう言うと、アリシアは俯いた。
なかなか口を開きそうにない。
「とりあえず、座って、落ち着け」
窓際の椅子にアリシアを座らせる。
隣室に居る執事のカミュに、なにか温かい飲み物を用意するように伝えてから、正面に腰かけた。
「婚約して三ヶ月位経つか? もとからの同級生だったろ?」
「はい……お付き合いして半年です。婚約して三か月。その前はずっと、学校で同級生でした」
こちらの領地と、婚約相手の領地は隣り合っていて、学校がちょうど、中間あたりにある。ずっと、同級生だったと聞いていた。
「良く知った上で、婚約したんだろう?」
「……はい」
頷いたアリシアが、ぎゅ、とドレスを握り締めた。
「……何が不満なんだ?」
「……先日なんですが……その……」
「ん?」
黙ってしまったアリシアに、首を傾げると。
「その……お兄様なら……経験が、豊富だと……思うのですが……」
「?」
「……初めて……その……」
「あぁ……分かった。……それが?」
妹とこんな類の話をするのは、当然だが初めてなので、なんとなく早く済ませたくて、先を促してから、ふと気付いた。
「――――……初めて? 半年付き合って、婚約もしていたのにか?」
「……はい。その……はい……」
俯いてるアリシアを、瞬き多めで、ついつい呆れながら、見つめてしまう。
「……機会がなかったのか?」
「……いえ…………でも、触れては、下さらなくて……」
「――――……」
何と言ったらいいか、言葉に困っていると。
「それで……私からその……」
「――――……」
……何を聞かされているんだ、オレは。
――――……妹が、手を出してこない男に、自分からアプローチをした話を。何でこんな二日酔いの昼に……。
「……まあ、分かった。それで?」
この話が婚約破棄にどう関係あるんだ?
手を出すのが遅い、と、そういう話か?
そう思ったその時。妹は泣き出した。
オレの国、レクトールは、隣国のフランツと争い、国境の付近で争いを繰り返していた。一進一退が続き、被害はお互い増すばかり。
業を煮やした国王が、王子を将として立て、騎士団とともに国境へと向かうことを命じた。結果、フランツの軍隊も総動員で、大きな戦いとなった。
オレは、王子を一番近くで守る第一騎士団の副長でその責務を果たしてきた。半年以上にも渡る長い戦いの末、フランツから停戦が申し込まれ、調停式を執り行った。
結果的にこちらの勝利なので、大分有利に停戦条約を締結できて、万々歳で、帰ってきた。
国境まで行っていたので、帰ってくるのにも大分時間がかかったが、一昨日、城に到着し、昨夜は城で凱旋の宴を開いていた。久しぶりに心置きなく酒を飲み、昼頃にやっと起きた所に、妹のアリシアがやってきた。
開口一番、言うことには。
「お兄様、私、やっぱり、結婚できません」
突然のセリフに、言葉を失って、アリシアをじっと見つめた。
しばらく後。痴話げんかか何かだろうかと、首を傾げる。
「……理由は? 申し込まれて、お前も望んだ婚約だったろ?」
そう言うと、アリシアは俯いた。
なかなか口を開きそうにない。
「とりあえず、座って、落ち着け」
窓際の椅子にアリシアを座らせる。
隣室に居る執事のカミュに、なにか温かい飲み物を用意するように伝えてから、正面に腰かけた。
「婚約して三ヶ月位経つか? もとからの同級生だったろ?」
「はい……お付き合いして半年です。婚約して三か月。その前はずっと、学校で同級生でした」
こちらの領地と、婚約相手の領地は隣り合っていて、学校がちょうど、中間あたりにある。ずっと、同級生だったと聞いていた。
「良く知った上で、婚約したんだろう?」
「……はい」
頷いたアリシアが、ぎゅ、とドレスを握り締めた。
「……何が不満なんだ?」
「……先日なんですが……その……」
「ん?」
黙ってしまったアリシアに、首を傾げると。
「その……お兄様なら……経験が、豊富だと……思うのですが……」
「?」
「……初めて……その……」
「あぁ……分かった。……それが?」
妹とこんな類の話をするのは、当然だが初めてなので、なんとなく早く済ませたくて、先を促してから、ふと気付いた。
「――――……初めて? 半年付き合って、婚約もしていたのにか?」
「……はい。その……はい……」
俯いてるアリシアを、瞬き多めで、ついつい呆れながら、見つめてしまう。
「……機会がなかったのか?」
「……いえ…………でも、触れては、下さらなくて……」
「――――……」
何と言ったらいいか、言葉に困っていると。
「それで……私からその……」
「――――……」
……何を聞かされているんだ、オレは。
――――……妹が、手を出してこない男に、自分からアプローチをした話を。何でこんな二日酔いの昼に……。
「……まあ、分かった。それで?」
この話が婚約破棄にどう関係あるんだ?
手を出すのが遅い、と、そういう話か?
そう思ったその時。妹は泣き出した。
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