時を食べる

江嶋美優

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帰り道〜おばあちゃんの家で

昔の記憶

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はぁ、、、今日も怒られた。社会に生きていくことがこんなに辛いだなんて、書類に期限、上司や職場の理不尽な上司との関係、仕事の責任、普通の大人が当たり前にしていることがこんなに大変だった事に気づかされている。
ぼくは沖田嶺二、今年22歳。俗にいう社会という壁に打ち砕かれている。最近の日課は帰り道にある公園のベンチに座り、癒しを求め目の前にいる猫を眺め猫に生まれたかったとくだらない考えを膨らませながらそのまま重たい足で家に帰る。
腕にとりあえずついているの針は23時を過ぎていて家に帰ってもお風呂、夜ご飯、仕事の整理をして、就寝。寝てしまったことですら罪悪感に駆られてしまう。ただ流れるように時間が過ぎていくばかりの毎日で生きるために仕事をしているのか、仕事のために生きているのかもわからなくなってきた。
こうして心も体も疲れている時に無性に大好きなおばあちゃんに会いたくなる。おばあちゃんの家はモノのたまり場で体に電気を流して治療する機械、棚の中からはバッグや家具、階段の通りも、とりあえずあらゆるものが置いてある。家の中がまるでアドベンチャーワールドでどこから何が出てくるか分からない、わくわくが止まらず、何度遊びに行っても飽きない。おばあちゃんは健康志向でヨーグルトに小魚、りんごなどなんでも混ぜて食べていて、階段から転げ落ち、猫と会話もできる。優しい中にどこか変わっているおばあちゃんとおばあちゃんの家が僕は大好きだ。
僕はいつものようにおばあちゃんの家に行って遊んでいると本棚の隙間から光る物体を見つけた。それは丸い形でちょうど手のひらに収まる大きさ、中では小さな機械達がせわしなく動いていた。何時間眺めていただろう僕はその物体の虜になってしまっていた。
おばあちゃんがいつの間にか隣にいて僕にこう言った。「それは時間を操れる時計なんだ。一日に時間は限られているだろう?皆が平等に与えられた時間をこの時計がれば自由に動かすことが出来るんだ。時間以外にも。」僕は何を言っているのかわからなかった。時間を操れるなんて言われてもピンと来ていない僕に対しておばあちゃんはただ微笑んでいるだけだった。一つだけ子どもの僕に分かったのは動いている気配があるのに時計の針がなかったこと。それでもおばあちゃんはまるで針が見えているかのようにその時計を見つめていた。



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