【貴方とおしゃべりアニマル】

江嶋美優

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【貴方とおしゃべりアニマル】

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 この世界は日々進化をしている。一昔前には普通の宅配が進化してuber eatsなど注文したらすぐ届けてくれる宅配サービスが当たり前、お店に行かなくても自宅で人気のレストランの料理が頂けるなど便利な世界に変えていった。しかし今2080年お金さえあれば欲しいものは五分あればすぐ手に入る。5-buyという新しい宅配サービスがある。今までの宅配の仕方はバイクや車が定番だが今は送る側と届く側のロッカーがあり、送る側がロッカーに注文されたものを入れると地下の通路を移動して相手側のロッカーに届き五分もたたずに欲しいものが手に入る。注文できる物は食べ物をはじめポケットに入れて持ち運びのできる椅子、どこにでも取り付けられる蛇口など宅配サービスから商品まであらゆる分野が便利なものへと進化を続けている。
自己紹介を忘れていたが僕は花沢海斗、独身の29歳だ。そろそろ周りも結婚する人が増えていてつい最近も親友が結婚した。僕は今まで彼女ができたことがなく女性との関りもほとんどない。このままずっと一人で死んでいくのかと考えたらなんとも虚しい人生だ。5-buy の宅配サービスはよく利用する。しかし5-buy宅配サービスにもできないものがある犬や猫などペットなら出来るのだが、人間はできない。人権があるので当たり前な話だが独り身でさみしい僕には物が出てくるよりも結婚相手が出てきてくれたほうが有難い。
無理な話は置いといてぼくはついに決心した。結婚相手はあきらめたが一人はやはり寂しいので【貴方とおしゃべりアニマル】という商品を注文することにした。この貴方とおしゃべりアニマルは生年月日を入れていくつかの簡単な質問に答えたら注文した人にピッタリの動物を送ってくれるという商品で地球上に何千といる動物の中でどの動物が来るかわからない。可愛いうさぎから危険なワニまで色んなパターンがある。一番の特徴は赤ちゃんの状態で送られてくるので育成ゲームならぬガチで育成だ。動物たちの食事は5-buy宅配でその動物にあったものを送ってくれる。僕がこの【貴方とおしゃべりアニマル】を購入しようと思ったのは妹に勧められたからでもある。ペットが欲しいと昔から言っていて妹はこの商品を購入していた。何が来るかわからない動物の中で妹のもとに来たのはナマケモノだった。僕が見たころにはそのナマケモノもだいぶん成長していてかなり妹に懐いていた。動物たちのごはんもなくなったら連絡をしたら届くシステムらしく妹が言うに新しい家族ができて幸せらしい。それなら僕のこの寂しい独り身も少しはましになるだろうかと考えたのだ。
ちょうど今日ぼくの新しい家族がやってくる日。動物は選べないがライオンが来ても大きくなったら命の危険がないとは言い切れないかと言って猫や犬などではつまらないので希望はモモンガがいい。
可愛いさがあり、もし懐いたら肩に乗せて一緒にお買い物でも行きたいなと想像を膨らませていた。携帯の画面が光ったどうやら僕のロッカーに新しい家族が来たようだ。早く迎えに行こう。動物が入っているだけあっていつもとは違う特別な箱に入っている。悪戦苦闘しながら新しい家族を怖がらせないようにゆっくり箱を開けたら握りこぶしくらいの灰色の塊が眠っていたのだ。説明書を読むとどうやらコアラらしい。コアラ、、、、何が来るかはわからなかったので仕方がないのだがコアラか。さっきまで可愛いモモンガや危険だがライオンなどの期待をしていたせいか、どこか満足のいかない気持ちにかられた。しかし何が来るのかが分からないのを承知の上で自分が決めて購入したわけだし第一命を預かっていることに違いはない、しっかり育てなくてはいけない。とりあえず寝ているコアラの赤ちゃんを起こさないように静かに説明書と携帯でコアラについて調べた。どうやらコアラは一日に20時間寝ているらしい、僕が仕事に行っている間に寝ていてくれて帰ってきた時だけ起きてくれている可能性は何%なんだろう。もしかしたらこの子の寝ている姿をみて寝ていると思ったらいつの間にか死んでいるなんてことも可能性がないわけではない。コアラの性格も穏やかなのかと思いきや縄張り意識が強いらしく自分の縄張りに他のコアラが入ってこようものなら歯を剥き出しにして噛みつき、引っ掻き、それでも駄目ならば組み付いて蹴り、全力で侵入者を追い出すらしい。食事はユーカリが届くし大丈夫だが、このことの生活に不安しか生まれない。挙句の果てにはコアラはストレスに非常に弱く、人間に抱かれることすら強いストレスになるようだ。ストレスが溜まると最悪、死に至るとも書いてある。
返品を考えたがこの【貴方とおしゃべりアニマル】は命を扱うので基本返品ができない。
つまり僕は一生懸命この新しい家族を育てるしか選択肢にないのだ。とりあえず名前を付けよう、ちょうど休みの日で映画を見ていた。洋画でクリスマスになると必ず放送されている映画の主人公の名前を付けた。この子の名前はケビン。
 何日か経ってケビンもだいぶん大きくなったのでちょっと前に場所をとるがユーカリと一緒にケビンが住みやすいように家における木も購入した。よく食べるし今のところ健康面には問題がなさそうだ。一応赤ちゃんの時から育てているので多少触っても大人しく、寝ている姿も疲れた僕には癒しとなっていて何とかうまくやっていけそうだ。たまに仕事から帰ってきたときに起きてくれていたらなんだか得した気分になれる。いろいろとコアラを買うことに対して不満もあったし問題点もまだ多々あるが、ケビンか元気にいてくれることが今は嬉しい。
ケビンがいる生活にも慣れいつも通り家に帰ってきた。するとケビンが廊下を歩いていて僕の脛にくっついてきたのだ。正直今まで木の上にいたコアラが廊下を歩いていること自体信じがたい、ましてや脛にくっついてきたのだ。僕が調べた中ではコアラは動物園にいる飼育員でさえ懐かない、意思表示はするが脳が小さいため顔を覚えているかも分からない動物で最初は理解が出来なかった。しかし何日もそんなことがあり僕は赤ちゃんの時から育てているからこういうこともありえるのかと気にしないことにしていた。そのケビンの不思議な行動から更に驚くことが起きた。帰ってきて玄関の戸を開けるといつも通りケビンがやってきて甘え始めたかと思うといきなり「寂しかった」と言葉を発したのだ。僕は
一瞬、驚きはしたが疲れていたため聞き間違いだと思いケビンを木にところへ連れて行った。ユーカリの葉の補充をしてテレビを見ているとケビンが膝の上に乗ってきて「ケビン」と自分の名前をしゃべったのだ。僕は驚きを通り過ぎて恐怖に変わり急いで5-buy宅配サービスに連絡したが対応されず電話を切られてしまった。友達に相談しようとしたが信じてもらえるはずもなく、妹もナマケモノを購入していたので連絡したが当然のことしゃべるはずがないと馬鹿にされてしまった。
話をする動物と共に生活か、、、インコとかは話していても理解ができるが、この甘えてくる灰色の物体は話しをした時点で僕の中で可愛いケビンではなく怪物にしか見えなくなってしまった。そもそも僕は独り身が寂しく癒しが欲しくて新しい家族を迎えることにした、こんな理解の追い付かない怪物と生活する恐怖のために【貴方とおしゃべりアニマル】を購入したわけではない。
可哀想だが僕はこの怪物をもらってくれる動物園を探してその動物園に引き取ってもらうことにした。これで前のように独り身の寂しい生活に戻ったのだが後々考えたら、商品名が【貴方とおしゃべりアニマル】だったのは本当のおしゃべりするアニマルを提供する謳い文句で人間が何かしらの薬を使って動物がしゃべれるように開発されているのではないかそれがまだ実験段階でしゃべれる動物としゃべれない動物が発送されているのではないかと考えた。そしてケビンを動物園に引き取ってもらってからケビンは一言もしゃべらなくなった。結局、なぜ僕にコアラが来たかは分からなかったが一つだけ分かることがある。
世界は人間が過ごしやすいように日々進化をしていくがやってはいけないことが分からなくなる日も近い。




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